骨になってもあなたを

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梗 概

骨になってもあなたを

苛烈な生活で同年代トップの売り上げを叩き出した女社長がいる。彼女にとって、自分以外の人間はすべてNPCだった。感情も、痛みも、必要ない。数字と結果だけが世界のすべてだった。

ある日、彼女は事故に遭い、失われた脳細胞を人工細胞で補填される。
それから彼女は、物の魂が聞こえるようになる。病院食のプリンが皿ではなく枕に置かれたがり、ハメ殺しの窓が開きたくてたまらないと懇願してくる。

最初、彼女はその声に素直に従った。しかし医者がそれを精神異常をと言い出すと、彼女は決めた。今まで人間の魂を無視してきたように、この知覚も無視する、と。そうして彼女は、以前よりも非情な冷酷さを身につけて、仕事に復帰する。

ある夜、立食パーティーで、彼女は一人の男と出会う。彼は、彼女だけが知覚できるはずの魂と、同じ言葉を口にし、それを周囲に表現することに長けていた。

彼女は彼を囲い込み、衣食住の世話をしながら、互いの脳を分析し合った。やがて彼の脳にも、彼女と同じ箇所に神経細胞の肥大化が見つかった。自分達は、同じ世界を見ている。その実感は、彼女にとって初めて否定できない魂の知覚だった。二人だけの世界を築き上げ、そこで彼らは愛し合った。

しかしある日、二人が同乗する車で事故が起きる。ぐしゃぐしゃになった車内で、声だけが聞こえる。励まし合って意識を保ち続ける彼女。しかし、ようやく救助が始まった時、気づいた。彼は、すでにズタズタに引き裂かれた、死体だった。

それでも彼女には、彼の魂が聞こえていた。

ボロボロになりながらも死体を拾い続ける彼女を、人々は異常者として取り扱った。彼とそばにいたいと思うことはおかしなことなのか。
病床の淵で、彼の片腕を抱いたまま、彼女は決意する。
彼を死なせない。
私を精神異常者にしたこの神経細胞を、他人に埋め込めばいい。そうすれば、死体である彼の魂を、他の人間にも知覚させることができる。

彼女は表向き「死者と話せる技術」として、事業を立ち上げる。しかし蓋を開けると、想定外の人々が押し寄せた。大切な物と話したい人、動物と話したい人、アンドロイドと結婚したい人、そして本当に人間に魂があるのか確かめたい人。いつしか技術は社会に混乱を招いていく。

しかし彼女は、まだ足りなかった。同じ細胞を持つ者だけが、彼を人間と認める。しかし、彼女が本当に求めていたのは、自身を異常者扱いした奴らに、骨になった彼を人間として認めさせることだった。

彼女は議員になった。法律を作るために。

多くの反対を押し切り、ついに成立させる。申請を行うことで、生涯にひとつだけ、魂ある物が人間と同じ権利を得られる法律。通称、九十九法。

そして彼女は一人、骨の前に立つ。

「ようやく、あなたを人として認めさせたよ」

その返事は、彼女の頭の中だけに、響いていた。

文字数:1153

内容に関するアピール

語り手は、九十九法成立から数十年後、その成立経緯を取材した記録をまとめるジャーナリストです。九十九法が施行され多くの人が無制限に物に魂を感じてしまうという社会的な混乱は回避されました。一方で、物に魂を与えることの是非は以前問われている状況です。そこで、九十九法を作った女性が本当は何を考えて法律を作ったのか、そして本当は、一人の女の執着から生まれた、のではないかという問題提起をする構成を考えています。。

今回自分の課題は「一つの設定を考え抜く」です。設定としては、脳細胞を培養して移植できる技術が開発された、という設定から、色々と膨らませてみました。

文字数:275

課題提出者一覧