瓦屋祐之介禁演落語(かわらやゆうのすけはなしがわらきんえんらくご)

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梗 概

瓦屋祐之介禁演落語(かわらやゆうのすけはなしがわらきんえんらくご)

これはかつて葬られた昔話。

実は、江戸時代にはレコードより先に録音機器が開発されていた。特殊素材を使った焼き物の円盤「噺瓦はなしがわら」である。噺瓦は庶民に広く流行し、回転する絡繰り箱で落語・講談・歌舞伎などを楽しんでいたという。また噺瓦は新たな職業を生み出してもいた。刷られた瓦や自ら録音した瓦を元に新たな噺や音楽を生み出す「音継屋おとつぎや」である。

当時の江戸で異彩を放ったのが、音継屋・瓦屋祐之介。彼は複数の噺瓦を同時に回し、台詞を組み合わせて新しい噺を生み出した。時には録音した民衆の声まで使って、巧みに笑いを取るのだった。

しかし、幕府では水野忠邦が台頭する。天保の改革と称して忠邦は町人文化の規制を行う。贔屓の寄席小屋を閉鎖に追い込まれた祐之介は幕府への攻撃を開始する。忠邦が忠邦を懲らしめる、滑稽な音声の噺瓦を刷り、民家に配ったのである。

これを受けて幕府は噺瓦にも規制を始め、直接的な揶揄を含んだ噺瓦の破砕を行った。だが祐之介の抵抗は続く。無害な噺同士を組み合わせ、文脈によって幕政批判を匂わせる新たな噺を作り出したのだ。こんなことをするのはお前だろう、と幕府は祐之介を問い詰めるが、そちらの考え過ぎでは、と軽くあしらう。

幕府は次の手を打つ。再生方法を統制し、同時再生や改造機器の禁止を唱え、正規の語り順のみを許可した。苦しむ祐之介だが、すぐに機転をきかせる。隠語めいた一節だけを取り出して繰り返す、ループ再生だけで幕政批判となる遊びを広め始めたのだ。他の町人も模倣するようになり、反忠邦の流れが生じていく。

打つ手に困った幕府はいよいよ噺瓦そのものの禁止に走った。祐之介も窮地に立たされ、苦し紛れの策として砕いた瓦を民家に配る(見つかってもこれは一部で全部ではない、というトンチで逃れようとする)が、一部でも持っているなら全部もあるに違いない、と祐之介も捕縛される。

処刑の日。刑場の前に江戸の住人たちが集まる。そこで彼らは禁止された噺の一節を次々に唱え、その連続によって噺が再生されていく。捕縛しようとするが、住人たちが覚えているのは噺ではなく「その一節」のみ。ただ偶然、声が連続して噺になっているだけだ。

人間の再生機器化。破片を配り歩いた祐之介が仕掛けた最後の策だった。祐之介は江戸の町を大きな噺瓦として、破壊できないように記録させたのである。

最大の抵抗を果たした祐之介はそこで刑死した。

かくして祐之介は消え、噺瓦も歴史から姿を消した。形式上は勝利したように見えた忠邦政権も十年持たず倒れ、すべては消えていく。しかし江戸の町に刻まれた噺は今日も再生も続け、現代まで継承されてきた。かすかな手がかりを集め、受け継がれてきた話の断片を繋ぎ合わせて浮かび上がったのが、この噺である。

これはかつて葬られた昔話、嘘のようで本当の話、禁演落語:噺瓦。

文字数:1181

内容に関するアピール

語り手はそのまま落語家を想定しています。この人物の法螺話の可能性も高いですし、本当の話かもしれません。

中盤の落語のサンプリングが大変すぎますが、頑張ります……。

文字数:80

課題提出者一覧