史書都市リーヴルの読解

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梗 概

史書都市リーヴルの読解

本の形をした史書都市リーヴル――日没になるとそのページは閉じられ、翌朝まで開かれることはない。都市の周りには〈彷徨う巨人〉がたびたび現れる。人間は巨人たちを上位存在として信仰し、彼らに選ばれ、「読まれる」ことが天上の楽園世界に連れていかれる条件だと信じていた。読み書きができる人間はごくわずかしかいない。
 都市機構の保全を担当する若き官吏アンと同い年の〈製本家〉ゾエは、ある日リーヴルの自律記録システムにバグを見つける。リーヴルの紙畳には都市の歴史が〈羽根ペン〉によって刻み込まれていく。しかしその記録スピードが急速に上昇し、起きていない事象を書き始めたのだ。そこにはリーヴルが〈彷徨う巨人〉によって滅ぼされる旨が記されていた。
 システム正常化の糸口をつかむため、ふたりは下界に降りて調査を始める。すると、竜革の装丁に破れている箇所がみつかり、そこから〈本喰い虫〉が侵入していたことが発覚する。〈本喰い虫〉が紙を食い荒らしていることでバグが生じていたのだ。
 素材捕獲部隊と連携を取りながら、代替素材を探すふたり。一頭の竜を捕獲した部隊は、剥ぎ取った革をなめして保全に充てる。間もなくして、小竜が野営地に迷い込む。それは殺した竜の子どもだった。素材捕獲部隊は殺して素材に充てることを提案するが、若くして両親を亡くしているアンは反対。自らの手で引き取ることを宣言し、スピンと名付ける。
 装丁を修復したふたりは、地下機構に潜り込み〈本喰い虫〉の駆除に奔走する。地下は古びた過去の本が積み上げられた薄暗い空間。人間大の〈本喰い虫〉の捕獲は困難を極めるが、スピンの活躍とゾエが開発した本型の罠によってついに駆除に成功する。〈本喰い虫〉によって食われた紙を修復し、ユニコーンの血でコードを書き直すと、ようやく記録システムは正常化した。リーヴルの紙畳の一角には、ふたりの活躍が歴史の一部として書き留められ、アンとゾエは表彰される。アンはまんざらでもないが、ゾエは納得していない表情をしている。
 数日後、夜明け前。アンはゾエに起こされる。何事かと問うアンに、ゾエは今すぐリーヴルを逃げ出さなければならないと言う。ゾエは地下機構で見つけた本を密かに読み漁っており、巨人が「読書」をするとき、都市全体が高度数万フィートまで持ち上げられ、急激な気圧低下と酸素減少により人間が死亡することがわかったという。〈羽根ペン〉の記述はただのバグではなく、未来予知だった。生き延びて下界でいっしょに本をつくろう、とゾエは言う。
 と、日が昇りリーヴルが開き始める。すぐそこには覗き込む巨人の顔。巨人の手がリーヴルを掴み、寝ぼけた住民たちは歓声を上げる。アンとゾエは小柄なスピンの背にしがみつき、リーブルから飛び降りる。ふたりは地上に逃れながら、朝陽に照らされたリーヴルが巨人に持ち上げられていくのを見上げた。

文字数:1186

内容に関するアピール

語り手について:後年の冒険家が廃墟となった都市リーヴル(散り散りになった紙片しか残っていない)を発見し、そこに書かれた記録をもとに語る、という体裁を考えています。その頃にはもう巨人も竜も史書都市もとうになくなっているので、ただのほら吹きだと周りからは言われそうですが…。アンとゾエには無事に逃げて、その後も幸せに暮らしてほしいので、語り手にはそこまで含めて語ってもらいます。
 キャラクターについて:アンは忠誠心が強く、仕事もできるしっかり者。ゾエは製本マニアでやや浮いている変わり者。読み書きができます。性格も正反対なふたりですが、互いを尊敬し信頼しています。

文字数:280

課題提出者一覧