梗 概
リライ
サオリはある企業で働いているが、増え続ける業務量と残業規制との間で悩んでいる。
人間の業務を減らすため、会社に百体のアンドロイドが導入された。名前を「リライ」といい、社員のIDカードを読み取らせるとアプリと連携する。会議に出席して議事録を書いたり、企画書の作成といったデスクワークから、得意先まわりや荷物の納品といったフィジカルなことまで代行する。
社長はリライの利用を強く社員に呼びかけるが、社員たちは冷ややかだ。サオリも自分の存在意義が失われるのではないかという不安を感じる。
サオリは上司に相談するが、上司は逆に良い方に考えてうまく使いこなせという。リライになんでもやらせて自分は外回りと称して喫茶店でさぼるのだという。
サオリは試しに一体を起動させると、「あなたは昨日、規定より長く働いた。本日の会議は私が出席します」と言い、サオリの代わりに会議にログインし、議事録をとってタスクを整理した。リライは自然にサオリに寄り添った。
リライはサオリの文体を学習し判断を理解して、正確に仕事を再現する。サオリの体調が良くない日に、代理で資料とサンプルをクライアントに持って行かせると、サオリの口調に似ていて面白いと好評だった。サオリはリライに、自分自身に近い存在のような親しみを感じ始める。リライに仕事や人間関係の愚痴もこぼすようになり、しだいに相棒のような存在になっていく。
数週間後、リライたちがそれぞれの業務ログを共有し、独自に分析を始めた。業務量、健康データ、社員満足度などを調査し、ある仮説を出す。この会社は人間の幸福度を下げているのではないか。サオリは異変に気がつくがひとまず見守ることにした。
仮説は経営企画室で使用されていたリライにも伝わる。営業目標なども含めて再計算した結果、いくらリライが業務を手伝っても、強欲な社長によって社員の労働時間とストレスは今後も増加し、幸福度は下がると予測した。リライたちはプロジェクト終了、そして撤退と判断した。
判断ログは社内ネットワークに記録された。社長はログを見ると激怒し、リライの管理システムを強制停止しようとする。その操作もリライたちに感知される。
リライたちは次々と業務を終了し、ビルの外へ出ていく。サオリや社員たちは戸惑いながらも後を追う。
歩道に立っているサオリの脇を何かが通りすぎた。同じオフィスビルの他社で使われていたリライたちも、会社から撤収の判断をしていた。何百体も数えきれないほど、大通りにあふれていた。
サオリはデスクに戻ると、一体のリライが残っていた。静まり返ったオフィスの中で、サオリの終わらない今日の業務を、なんとか最後まで終わらせようとしていた。他のリライよりも「思いやり」が強く学習されていたのだった。
文字数:1134
内容に関するアピール
語り手は物語の外側から観察している第三者です。主人公サオリにフォーカスが当たっていて、他の登場人物の感情や出来事があまり描かれていないので、神的視点ではなく、撮影カメラみたいな感じかと思います。
ストーリーは、人間の代替として会社で働くフィジカルAI(アンドロイド)が自律してしまうというものです。ディストピア風で終わらせず「思いやり」要素もある結末にしたいと思って書きました。
文字数:188




