三途の川辺でソロキャンプ

印刷

梗 概

三途の川辺でソロキャンプ

キャンプが趣味の男・池谷昭道は、ある日崖から滑落し昏睡状態に陥る。目を覚ますと、彼は三途の川に立っていた。
渡れば死ぬと直感した昭道は、持っていたキャンプ道具で川辺に居座りソロキャンプを始める。マイペースに釣りや焚き火を楽しむうち、「早く渡れ」と迫ってきた鬼や奪衣婆とさえ打ち解けていく。対岸の花畑にはときおり美しい女性が現れ、昭道は心惹かれるが、空からは「目、覚ませよ」という謎の声が響き思いとどまる。

ある日、昭道は星の位置が見慣れたものと違うことに気づく。ここは本当に死後の世界なのか。それとも三途の川に見える別の場所なのか。昭道は、なぜか自分が恒星の位置関係から、ここが太陽系外惑星であると計算できたことに驚く。昭道は、自分にそんな知識があること自体、思い出せずにいたのだ。

疑問を抱き周囲を探索すると、遺跡に覆われた小さな街にたどり着く。そこには、昭道と同様に三途の川を渡らなかった臨死体験者たちが暮らしていた。街を率いる男・溝渕は、この惑星にいる「精神生命体」について語る。人間の精神には、生前から寄生種の精神生命体の卵が産みつけられている。人間が死ぬとその精神は地球から、精神寄生生物の本来の住み家である三途の川惑星に移動する。そして川を渡ると、精神寄生生物は成体となって宿主の精神構造を食いつくすのだ。鬼は寄生生物により用意された管理者であり、各地の死者たちは文化の違いによってこの川を三途の川やナイル川と呼んできたのだ。溝渕たちは、かつてこの星に来たヒトラーが残した核兵器を用い、宇宙生物の生息域である花畑を破壊して、この惑星を人類のものにしようという計画を語る。

しかし昭道は鬼から、花畑に現れる美しい女性が、かつて亡くした自分の妻だと知らされる。妻を失った悲しみから逃れるため、昭道はソロキャンに没頭するようになったのだった。溝渕は、花畑にいるのはもはや宇宙生物にすぎないと言う。だが昭道には、その花畑を敵の巣として見ることができない。

一方、地球の病院では、徐々に回復に向かう昭道の肉体がわずかに手指を動かせるようになっていた。彼は指先でモールス信号を表現し、看護師をしている息子と意思疎通。さらに隣室で延命治療を受ける溝渕本人の存在を突き止める。息子の声を介し、昭道は三途世界の溝渕と現実世界の溝渕の妻を伝言する。絶望の縁にいる妻に「そっちはどんなところなの」と問われた溝渕は、永遠の命への野望を捨て「ここは素晴らしい場所で、自分は幸せだ。もう命を延ばさなくていい」と嘘をつき、花畑破壊計画を思いとどまる。
昭道もまた妻の待つ花畑へ渡りかけるが、最後に踏みとどまり、生きて目を覚ますことを選ぶ。

数十年後、天寿をまっとうした昭道は、花畑で妻と再会する。そこへ一機の宇宙探査機が降り立つ。それは、昏睡から目覚めた後の昭道が、三途の川惑星へ向けて二人の思い出の品を乗せて打ち上げたものだった。

文字数:1200

内容に関するアピール

命の終わりの世界の表象として、「三途の川」「ナイル川」「ステュクス川」など世界中に川のイメージが伝わっていることに注目しました。
また、賽の河原で亡霊が石をひたすら積み上げさせられるという伝説がありますが、登山者も「ケルン」という石積みを道しるべや遭難者の慰霊のためにつくるという連想から、精神が実体化する生と死のあわいの場所でマイペースにソロキャンプを楽しむ男がギャグとして描写できないかと考えました。
臨死状態にあるくせに生への執着がすごすぎる臨死体験者の街並み(時間の流れが現実と異なる)と、あの手この手で川を渡らせようとする鬼や奪衣婆とそれをかわす主人公のやり取りや、三途惑星と地球の関係の飛躍などをバカSFとして描き、三途惑星を地球から観測し死者を眺める技術が確立するオチをつけたいと思います。

文字数:350

印刷

【レポ】三途の川辺でソロキャンプしてきた話。

【レポ】三途の川辺でソロキャンプしてきた話。(前編)

こんにちは、お久しぶりです。
独身中年キャンプ狂いのソロキャン侍です!
みなさん、キャンプ楽しんでますか?

最近どうにも忙しく、心身ともに「ちょっと限界かもな……」と思っていた矢先。
なんとなんと、巷で噂の(?)超穴場スポット「三途の川」の河原に行く機会をゲットしました。
生死の境をさまよってましたので、何泊何日だったのか不明なんですが、そこは拙者、ソロキャン侍。
川辺でソロキャンきめこんでまいりましたので、その様子とおすすめギアをレポートします!

結論から言うと、めちゃくちゃデトックスできました。

 

〇まず、三途の川ってキャンプできるの?

できます。
少なくとも今回はなんとかなりました。
ただ、一般的なキャンプ場ではありませんので、いくつか注意点があります。
まず、ペグは絶対にソリッドステーク推奨です!
基本的に三途の川はガレ場のサイトなので、アルミペグは100%へし折れます。
ペグは長め・強めが安心でしたね。

あと、川のすぐ横に設営するのはやめましょう(注意!)
三途の川に行ったら、細かい流木がどのあたりまでひっかかっているかはよく見てください。
漂流物がくっついているところや、砂利が平らになっているところは過去に水が通った可能性があります!
せっかくテントでチルしていても、増水にまきこまれたらあの世行きですからね。
もう行ってるだろって話ですがw

厳密には三途の川はまだあの世とは言い切れないと思います!(←何を知ってるんだw)

 

〇アクセスについて

これはぶっちゃけ、よくわかりません。
気がついたらいた、というのが正直なところです。
ただ、ついた瞬間に「あ、ここ三途の川だな」って直感しましたね。
バックパックと愛用のギアたちも身に着けた状態だったので、基本的な装備は持ち込んでチェックイン(?)できたようで安心しました。

そしてサイトの第一印象としては、「めちゃくちゃロケーションがいい」。

とにかく川幅が広い!
普段は道志村や富士周辺のキャンプ場に出没している拙者ですが、こんなに立派な川は見たことがありません。
そして向こう岸には一面の花畑!!
これがまあ綺麗なんですよねぇ。
キャンプ場の花畑というと、どうしても人工的な手入れをされた雰囲気を感じてしまって、大自然の息吹を求める我々キャンパーにとっては興醒めに思えますが、なかなかどうして美しい。
野の花が風に揺られる素朴な眺めに、不思議と人の気配を感じないんですよねー。

やや霧が濃すぎて周辺の様子がよくわからないという問題はありつつも、
畏怖の念すら覚える美しい景観と、せせらぎの音が最高の癒しを与えてくれます!!

混雑度としては、文句なしの星5つ(★★★★★)!
非常に快適です!
拙者のほかにキャンパーはゼロ。
遠く霧のむこうで、子どもたちが石を積むアクテビティ(?)を楽しんでいるらしいのがぼんやりと見えるくらいで、プライベート感は抜群です。

もちろん、電波はいっさい通じません。
こりゃいいぞ、と。
最近はどこの山奥でも5Gが繋がって便利になりましたからね。
や、まあ技術の進歩はすばらしいですけれども。(拙者、イーロン・マスク氏の人工衛星事業について”は”一定の評価をしております)
反面、ソロキャン中につい仕事のメールを返したり、思考停止でショート動画をスクロールしたりして、「これ家にいるのと変わらんのでは?」と虚しくなることも多いもの。

わずらわしいスマホの通知から解放されて、「さあ、下界のことはすっかり忘れよう!」と、スマホをポケットにしまったその瞬間。
ふと、気づいてしまったんです。
拙者、ソロキャン侍であること以外、自分が何者なのかよく思い出せないんですよねえ。

 

〇本日のキャンプ飯

はてさて、気を取りなおしまして飯を楽しみたいと思います。
さきほどからチラチラと三途の川に魚影が見えておりまして、自慢の折り畳みコンパクトロッドで釣りに挑戦してみたくもあったのですが……、
空腹に耐えかねまして、いったん今夜のメニューはシンプルに。
取り出したるは、お馴染みの「カップヌードル(シーフード味)」!

ここで愛用ギアをご紹介。
ザ・マウント社の「フラッシュボイル」(税込18,700円)。
小型のガスバーナーとボトルが一体になったインスタントクッカーです。
ボトルに三途の川の水をすくいまして、バーナーに点火すると……、
ものの数分で500mLのお湯ゲット!!
バーナーの詰め替えにライター用のガスを使えるのがソロキャン侍的一押しポイントです☆

いや~うまい!!!
アツアツのスープが五臓六腑にしみわたります。
気づいたんですが、三途の川辺、ビューは最高なんですけどもちょっと寒いんですよね~。
なんというか底冷えするというか、体の内側から「もう休んでもいいんじゃないか」と言われてるような冷えっていうんですかね。
昔、雪山の山小屋であの、寒すぎて眠くなるやつを体験したことがあるんですが、それに近い感覚ですね。

それはそうと。
お気に入りのマグにインスタントコーヒーも淹れまして、湯気と川の流れを見ながらこのレポを書いております。
レポ記事はキャンプ中にほぼ実況スタイルで書いてしまうというのが拙者流。

ソロキャンをするということ。
文章を書くということ。
それすなわち、
「己という存在ひとつに向き合うこと」。
クゥ~、決まりましたねw(←単芝やめろw)

ではでは、次の記事に続きます!
はてさてこのレポ、どれくらい続くのか。
というか、アップできるのか……。
そこも含めて楽しみです。

 

【レポ】三途の川辺でソロキャンプしてきた話。(中編)

やってしまいました。
至高の飯を平らげ、お腹も心も満たされた拙者。

やってしまったのです。
キャンパーとしては絶対にやってはいけないことを……。
カップ麺の食べ残しを片付けずに寝るというギルティ。

「まあほぼプライベートサイトだし、ちょっとだけ……」と油断してしまいまして。
コットに横になった瞬間、意識がブラックアウトしました。

拙者ともあろうものが……。
わかっています、こんな記事をアップしたら炎上必至ということは。

隠してしまおう、そういう選択肢もありました。
しかしながら、どうしても注意喚起しなくてはならないことが起きたのです。

みなさん、三途の川辺で食べ残しの放置は【絶対に】やめてください。

結論から申し上げますと、鬼が出ます。

 

〇野生の鬼対策

寝落ちしてから、どれくらい時間が経ったでしょうか。
あたりは人工的な光が一切存在しない、「野生の闇」に包まれていました。

ふと、「ズズズ……ズバババッ……!!」という、不快な咀嚼音が聞こえて目が覚めます。

冷や汗を流しながら、テントのチャックを数センチだけ開けて外を恐る恐る見やると――そこにいたのは、明らかな鬼。
体長はゆうに2メートルを超えているでしょうか。
筋肉の塊のような巨体に、頭部からは禍々しくねじくれたツノがとってつけたみたいに生えてます。
よくは見えなかったのですが、肌の色は赤黒く、体毛は針金レベルの太さ。
拙者が残したカップ麺の容器を巨大な手で掴み、最後の一滴までスープを豪快に貪り食っているのです。

しかも、さらなるエサを求めてか、拙者のいるテントの方へ近づいてくるではありませんか。
どんどん近づいて、荒々しい吐息とともに漂う生ぐさい鬼の口臭がわかるようです。

ヤバイ。

よくよく考えると三途の川で死んだらどうなるのかちょっとよくわかりませんが。
とにかく拙者、大ピンチ。

ここで、おすすめのギアを紹介させてください。
山の命綱、ワイルドソウル社の「究極クマ撃退スプレー”曝噴”」(税込6,930円)です。
トウガラシ由来のカプサイシン物質が、クマの粘膜を強烈に刺激します。
お求めやすい価格ながら、噴射距離が6mと業界最長。
圧倒的なコスパと言えるでしょう。

正直、拙者ビビり散らかしていたもので……
鬼が近づいてくるのに耐えられずだいぶ遠くから吹き付けるかっこうになってしまったのですが、さすがの「曝墳」。
無事鬼は逃げていきました。

やー、心臓バクバク。
とんでもなくアドレナリンが出ましたねーw
さすがにこう思いました。
鬼退治までできちゃうなんて、
拙者、侍でなくて桃太郎?
三途の川から巨大な桃でも流れてこないかしら(やかましいわw)

冗談はさておき。
三途の川では、カップ麺の残り汁をすてる炊事場はありません。
飲み切るか、凝固剤で固めてすぐにゴミ袋に入れましょう。
鬼には出会わないのが一番です。
鬼の生息域にお邪魔しているのだということを忘れずに。
キャンパーは品を第一にしましょう。

関係ないですが、「鬼が出るか蛇が出るか」って日本語、おかしくないですか?
どっちもキャンプ場の危険生物ですし……。
鬼が出るかオオルリビタキが出るか、なら一か八かのフィールド探索って感じで意味が通ると思うんですけどね。

 

〇星空は超ド級!!

鬼が出没するとわかった以上、ここに拠点をかまえておくわけにはいきません。
せっかく設営したテントですが、再びたたみまして、別の場所を探します。
そこでふと頭上を見上げると……、

圧倒的な星々。
天の川が異常なまでに濃厚な光を放っています。
夜空を真っ二つに叩き割る巨大なヒビのようにうねっているんです。

これまで星が綺麗といわれるスポットには数多く足を運んできましたが、比較になりません。
拙者、アゴが外れやすいクセがありますので、非常に危なかったです。

ただですね、いくらなんでもおかしいんです。
天の川の幅が広すぎですし、星の数も多すぎ。
夏の夜空に天の川の近くでひときわ輝く星といえば「夏の大三角」でおなじみのデネブ、ベガ、アルタイルですけれども。
どうにもデネブらしき星しか見つかりません。
ベガとアルタイルといえば織姫・彦星でおなじみですが、両方行方不明です。
いったいどこにしけこんでいるのやら……
などと言っている間に拙者、ピーンときました。

ここ、地球じゃないぞと。

夏の大三角のうち、ベガとアルタイルはそれぞれ太陽からの距離約25光年と17光年とだいぶご近所なわけですが、じつはデネブだけ1400光年以上離れていまして、別格に遠いんですな。
察するに、三途の川は、地球よりもやや銀河の中心に近い天体にあるのではないでしょうか。

キャンパーのなかでも星追い勢もご覧になっているでしょう弊ブログの読者諸賢には釈迦に説法かもしれませんが、天の川というものは諸賢の住む銀河系を中心側に向かってみたものですから、中心に近ければより星々の密度は濃密に見えるはずです。
銀河系の中心方向に移動するということは、いて座方向に移動するということですから、ベガとアルタイルは反対側に置き去りにされると考えられます。
振り返ってみると……、むほほ、地平線すれすれにひときわ輝く青白い星が2つ。

織姫と彦星、見~っけw
独身中年ソロキャン狂いにめっかっちゃったねw
地球で見る場合からズレた分の角距離を見積もって三角測量の要領で計算すると、だいたいどれくらいこの星が地球から離れているかも目算がついたんですよ。

とまあこんな具合のことがらがピーンときましてさすがに興奮していたわけですけども。
どうしてこんなことがピーンとくるのかというところがわからずじまい。
拙者、星が好きだったのかしら。

それと同時に、なんとなく、
こんな星空を見せたかった人がいたような、そんな気がしたんですよねー。

言ってる間に。

夜空にかかっていた薄雲が魔法みたいにはれてきて、対岸の花畑が星の光で照らされました。
するとそこに、一人の女の人が立っているではありませんか。

うおw 織姫様登場w
とか言えるのはレポのなかだけでして。
実際はだいぶびっくりしたんですよね。
最初はその人の顔もよく見えなかったので。
オバケかと思って、腰ぬかしそうになりました。
冷静に考えると三途の川なので、オバケが出るのは当然というか、てか拙者もオバケ?とか思い直してなんとか腰は持ちこたえたんですが。

だんだん姿かたちが見えてくると、とんでもない美女なんです。
拙者しがない独身中年男性ですので、完全に気おくれしまして、固まっちゃいました。
なんというかもう気まずいんで、さっさと行っちゃおうと思ったんですが。
ま一応、山や森で出会ったキャンパー同士は挨拶をするのがマナーですし、
「こんにちは」ってだけ言ったんですね。
で、「お先に失礼します!」って叫んで。
川幅が広いんで聞こえてるんだかわからないですけど、もういいだろうと思ったところ、
足が動かなくなっちゃったんですよねえ。
というか、その若い黒髪の女性から目を離すことができないんです。

 

するとその女の人、
「おいで」
って一言いうんですよ。

拙者今度は勝手に足が動き出して、ザバザバと川に入っていっちゃいました。
冷てぇ~! 夜の川は絶対に入らないでください!
着衣で入るのもNGですよ!
てか、入水するなら水場用のクロックスも持ってきてたのに~。
KLEINのゴアテックスシューズ(税込35,200円)のまま川に入っちゃったんですよね~。
これはほんとに大誤算。
普段使いもできるデザインで重宝してたんですが……。
三途の川に行くときは、自分の意思に反して入水することがあり得るので、本格的に濡れるのは避けたい靴を履いてくるのはやめましょう。

とか言ってるうちにわりと深いところまで来てしまいまして。
胸くらいまで浸かっとるわけですよ。
これはマズいなと。死ぬなと。
ところがですね、「まあいっかな」とも思うわけです。

拙者だって、三途の川を渡ったらヤバいことくらい知ってるんですけどね。
とくに記憶も戻らないし。
美女に手招きされてるし。
地元民かな? とか思って。
地元民なら近くのおいしい店とか教えてもらえたらそれもいいじゃないですか。
あと拙者、星と野鳥はチョットワカルんですけど、花って守備範囲外だったんですよねー。
花畑もよく見てみたいし。
と、思って歩いていたら突然、

「起きろ!」

って声が聞こえたんです。
で、後ろからグイッと手を握って引っ張られたような気がしたんですよね。

ビックリしてふりむいたら、目の前にでっかい浮き輪。
さっきまで拙者がいた側の岸に、丸刈りの青年がいましてね。
その青年が言うんです。

「浮き輪に捕まれ!」

そういう青年の着ているオレンジのライフジャケットが、なかなか渋くて。
見たことないアウトドアブランドだな、とか思ったんですよね。
ピンときました。

彼も拙者と同じ、キャンパーだと。

そんなこんなで、浮き輪にくくりつけられたロープでたぐりよせてもらって、岸に戻ってきたんです。

 

〇(重要)シャワー・お風呂情報!

青年は、「溝渕」と名乗りました。
そして溝渕くんは、

「シャワーを浴びたほうがいい」

といって、ビチョビチョの拙者を案内してくれたんです。
しばらく歩いたところに、ボロ小屋がありました。

へ~、こんなとこでシャワー借りれるのかあ。

と思ったらですね、小屋のなかから出てきた管理人さん(?)の姿にビックリ。
100歳超えてるんじゃないか……?っていうおばあちゃんだったんですね。
ひとの(?)外見のことなんであんま言い募ることでもないんですけれども、枯れ木を捻じりあわせてつくった人形に目と口がついた、っていう印象ですかね。
そしてその目と口がデカいんですよね。
デカいし、血走ってて赤いんですよね。
四白眼っていうんでしょうか。黒目の上下左右に白目のスペースが見えるくらい、常時目をかっぴらいているんです。
ようするに、めっちゃおっかなかったです。
そして年齢感のわりに覇気がすごいんですよ。

そのおばあちゃんがいきなり、拙者の濡れた服につかみかかって脱がそうとしてきたんです。
あw やめてw

すると溝口くんがおばあちゃんをひっぺがして、
「ソロキャン侍さん、お金ある?」と言ってきました。
(もちろん、名前を名乗ってますよ。便宜上ブログで名前の部分を「ソロキャン侍」にしてるだけ。そう、なんとさっき川に入っているあいだに、自分の名前を思い出したんですよねえ。怪我の功名!?)

溝口くんによると、小屋には奪衣婆(だつえばあ)と懸衣翁(けんえおう)という老夫婦が住んでいて、三途の川の渡し守をやってるんだとか。
渡る前には奪衣婆に服を預けて、シャワーで身を清めるというのがマナーなんだそうです。
渡し賃の価格は伝統的に「六文銭」(いくらやねん)らしいですが、
溝口くんいわくシャワーのみの利用も可能とのこと。
ただし、懸衣翁に服を持って行かれると、深い森の木の高いところにかけられて二度と返却されなくなるらしいです。(なんで?)

その場合は強制的にすっ裸で船に乗せられるみたいですね。
ので、同行者がいれば預かってもらうのがベストです。

それはいいのですが、ここで拙者またうっかりが出てしまいまして。
財布がないんですよ。
これときどきやってしまうんですよね……。
バックパックはキャンプ前日に準備するじゃないですか。
でも財布って普段使いのカバンに入れてるから、出発当日に移し替えなきゃいけないでしょ?
これ忘れちゃうこと、あると思います。

でもご安心ください。
交通系ICカードが使えました。
や、ほんと助かりますよね。
拙者はスマホに一体にしてたんですが、モバイルICって電波なくても使えるんですよ。
スマホの充電切れてるのに改札通れたことってありません?
あれすごいっすよね。
「交通系でお願いします」と言えば、奪衣婆が決済端末を出してくれます。
PayPayとかLINE Payは使えないっぽいですけどね。とにかくPASMOとSuicaはいけます。ICOCAもいけると思う。
なんででしょうね? 基本渡し守の人たちなんで、交通費には意識が高いのかもです。

そんなこんなで、いや~、スッキリしました!
正直、シャワーの満足度は星2つ(★★☆☆☆)って感じでしたが、贅沢は言えません。

↓一応、気になったポイントです。
・温度がすぐ熱いか冷たいに振れてちょうどよくならない。
・ボタンを押してからしばらく出るタイプのシャワーですが、1秒くらいですぐ止まる。
・シャンプーとトリートメントがあるのはありがたかったのですが、懸衣翁に「馬油ですか?」と聞いたところ、「馬頭(めず)からとった油です。頭が馬の妖怪です」と言っててやや怖かった。

拙者の濡れた服も溝渕くんが乾かしてくれていて、今時見上げた青年です。
ところがこの溝渕くんが、とんでもない奴だったんですよねえ。

さっそく溝渕くんについていったら、謎の集落があった話をお届けしたいんですが……。
ちょっともう、拙者柄にもなく今日は人(人じゃないのもけっこういたか)に会いすぎて疲れ果ててしまったゆえ、後編に続きます!!

 

【レポ】三途の川辺でソロキャンプしてきた話。(後編)

翌朝。
拙者が目を覚ますと、そこは掘っ建て小屋というか山小屋というか。
簡易的なログハウスのソファだったんですよね。

ああ、そういえば溝渕くんに案内されるがままに森の奥へ奥へと歩いていくと、ちょっとした村に到着したってことを思い出しました。
一人の老紳士が、拙者が起きたことに気づいてホットミルクをくれました。

 

〇現地コミュニティとの交流

現地民とのふれあいっていうのも、キャンプの醍醐味のひとつです。
拙者はソロキャンパーゆえあまりそっち方面の楽しみ方はしていないタイプではあるのですが。
集落の人たちは、鬼や奪衣婆とちがって目が血走ってなくて話が通じるというのも大きなメリット。
三途の川に来たら、ぜひ霧の奥の村を訪れてみてください。

って、そこは一体どこやねんと。
もちろん拙者もそこはいっぱしのキャンプジャーナリストとして(すみません、ただのブロガーです汗)、取材してまいりました。

なななんと、こちらのホットミルクをくれた老紳士。
拙者のブログを読んでくださったことがあるんだとか。
すみません、取材したというか。
人見知り前回の拙者ですが、向こうから知って下さっているということでやっと色々とお話できた感じです。

 

結論から言うと、拙者と同じ臨死体験者の集いみたいですね。
老紳士によると、だいたいみんな一度は川を渡りかけるのですが、溝口くんや集落の人に助けられて集落に集まっているということらしいです。

溝口くんは10代後半か20代前半くらいに見えるのですが、ここじゃ最長老なんだとか。
たぶん現世と時間の流れが違うんでしょうねー。
来訪の予定がある方は時差にお気をつけあれ。

 それから溝渕くんにつれられて見た集落は、いくつかの掘っ立て小屋やシュラフでできていました。
7割方がご老人で、3割くらいが若者。
ところがこれが、揃いも揃ってやたらに生き生きとしているのです。
そしてそこらじゅうで、何やらモノづくりや特殊なトレーニングが行われています。

溝渕「僕たちは、向こう岸から死者を強奪してこようと考えています」

拙者「は? 死者を強奪……?」

物騒なワードに、思わず耳を疑いました。

 

〇死者強奪計画

聞けば、この集落の面々は生と死のあわいでただのんびりと過ごしているわけではないとのこと。
拙者にもつい昨日経験がありますが、
三途の川辺にいると、あちら側に誰かが立つものなのです。
それは決まってすでにこの世を去った大切な人。
彼らの姿を見ると、ついフラフラと川へわけいってしまいます。
三途の川に浸かったが最後、「もういいや」と生きる気力を失い歩きはじめてしまいます。

ところが集落の人々には、座して死を待つつもりなど毛頭ありません。
水に触れてはいけないのであれば、それ以外の方法で川を渡ればいい。

なんらかの方法で川を飛び越え、
彼岸に見える大切な人をキャッチ、そしてこちら側に戻ってくる。
溝渕くんの周囲には、長い時間を経てそれだけの気骨のある臨死体験者たちだけが残ったのです。

ブラブラとぶらついて様子を見ていると、じつにいろんな「渡り方」が検討されているようです。

ざっと見てまわるだけでも、

・【跳躍班】棒高跳びの要領で川を超え、さらにこちらへ戻ってくるために鍛錬を積むチーム
・【潜水班】潜水服を作り、水をシャットダウンしたまま川底を歩いて渡ろうとするチーム
・【ロープウェイ班】高圧ボウガンで向こう岸とロープを渡し、ゴンドラで渡ろうとするチーム
・【架け橋班】橋をかけようとするチーム
・【ラジコン班】ドローンを飛ばして彼岸を撮影したり、攻撃したりするチーム
・【望遠鏡班】望遠鏡の精度を上げ、彼岸を覗こうとするチーム

これだけの計画が進んでいました。
なかでももっとも異彩を放っていたのは、溝渕君の率いる【飛行機班】。

集落を囲む森のさらに奥深く。
つぎはぎだらけの手作り飛行機が鎮座していたのです。
拙者は(その飛行機のディティールが入る。そしてエンジンの構造)を長い間観察していました。

 

★執筆が間に合いませんでした。先の展開は下記のように想定しています。大変悔しいです。★

1. 溝渕の過去と、手作り飛行機の正体

  • 久々の「グループ」キャンプ:一人を愛するソロキャン侍ですが、なぜか溝渕と大きなキャンプファイアを囲むうちに、不思議と深い話をしたくなります。

  • 飛行機の材料は「遺品」:つぎはぎだらけの飛行機の正体は、奪衣婆(だつえばあ)に剥ぎ取られ、懸衣翁(けんえおう)が森の木に掛けた「死者たちの遺品」を夜な夜な回収したもの。

  • 10年前の航空機事故:そして飛行機の最も重要なパーツは、森の奥に墜落している本物の旅客機から剥ぎ取ったものでした。それは下界でも大ニュースになった10年前の航空事故機であり、この集落は、その事故の犠牲者たちが一気に三途の川へやってきたことから始まった場所だったのです。

  • 溝渕の親友「浅倉」:実は溝渕は当時、若き航空整備士でした。同じく整備士の親友・浅倉(あさくら)と別の勤務地へ向かう途中で事故に遭遇。浅倉は多くの犠牲者を前に「自分たちの関わった航空機が死を生んだ」という整備士としての強い罪悪感に駆られ、そのまま向こう岸(彼岸)へ渡ってしまったことを知ります(※集落の老紳士談)。溝渕は、親友をその呪縛から連れ戻すために飛行機を作っていたのです。

2. 主人公「ソロキャン侍」の過去と拒絶

  • 明かされる主人公の正体:溝渕の告白を聞くうちに、主人公もまた、おぼろげだった生前の記憶を取り戻します。

  • 挫折と息子との絶縁:主人公はかつて、ロケット研究を志す技術者の卵でした。しかし妻が出産直後に病に倒れます。妻を失った失意を育児で紛らわす生活の中、いつしか夢への気力を失ってしまいます。男手一つで息子を育てたものの、息子との関係はギクシャク。数年前に息子は家出して絶縁状態になっており、ことさらに「独身中年ソロキャンプ」をネタ化するブロガーになっていのです。

  • 消えかける存在:生きる気力を失いかけていた自分の過去を思い出した瞬間、主人公の身体は現世への未練を失い、じわじわと半透明に透け(消えかけ)始めてしまいます。

3. クライマックス:彼岸への強奪作戦

  • 総力戦のドッカンバトル:ついに決戦の日。【ラジコン班】のドローン空爆、【跳躍班】の棒高跳び強襲が鬼や霧の化け物たちを急襲します。川の水に浸かると完全に生きる気力を失うため、一歩も入水できない極限の戦いです。

  • キャンプギア大砲の炸裂:ここで主人公が元ロケット研究者の「弾道計算能力」と、愛用の頑丈なキャンプギア(薪ストーブの煙突や高圧ガス缶)を組み合わせて即席の大砲をビルドアップ。見事に鬼の群れを蹴散らします。その隙を突き、溝渕の飛行機が爆音を上げて離陸。向こう岸から死者(浅倉たち)をごっそり回収し、旋回します。「やったか!?」

  • 三途の川の大洪水:しかし、激怒した鬼が三途の川上流のダムを決壊させ、川は大増水。黒い濁流が押し寄せ、主人公たちも、すべてが三途の川に呑み込まれていきました。残ったのは、上空で溝渕が操縦する飛行機だけです。

4. 結末(エピローグ)

  • 現世へのチェックアウト:激しい胸の圧迫感とともに、主人公は病院のベッドで目を覚まします。

  • 看護師となった息子:目の前で必死に心臓マッサージをしていたのは、看護師になっていたあの息子でした。搬送されてきた父親を偶然見つけ、救ってくれたのです。

  • 溝渕との再会:主人公は息子に頼み、同じように10年間昏睡状態のまま生きる屍となっていた青年「溝渕」が眠る病室を探し当てます。弱々しいバイタルに手を重ねる主人公。息子は「何やってんだよ」と呆れますが、主人公は静かに語ります。

    「本当は彼も、死者が救えないことくらい分かっていたんだと思う。でも、希望にすがらざるを得なくて、死に場所を探していた。自分にとってのソロキャンプもそうだった。だけど、キャンプは非日常。守るべき日常があってこそ、初めてキャンプは楽しいんだ」

  • 目覚め:その時、溝渕がゆっくりと目を覚まし、一言呟きます。「……不時着した」

【おまけ(後日談)】

  • 1年後、主人公は溝渕のリハビリに付き添いながら、公園のベンチでおすすめのチタンマグを使ってインスタントコーヒーを淹れています。日常のコーヒーは最高に美味い。

  • ふとスマホの交通系ICカード(モバイルSuica等)の履歴を見ると、三途の川にいた日時に「不明な請求元:-300円」の文字が。どうやらあの世の渡し賃「六文」は下界の日本円で300円だったようです(笑)。

(完)

文字数:11010

課題提出者一覧