ピクセルの百鬼夜行

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梗 概

ピクセルの百鬼夜行

廃刊になったレトロゲーム雑誌の編集長を務めていた石津は、自身の豊富なゲーム雑学を活かして、ゲーム関係のフリーライターとして食えるだけの仕事を得ていた。中でも彼が動画やWeb記事で展開しているゲーム都市伝説の紹介コーナーは幅広い年齢層のゲーマーから人気を博していた。

ネタに困ってきて更新が滞っていた石津は、変わったゲームに詳しい元同僚の高橋から三十年近く昔のオンラインゲームに関する話を聞く。石津も聞いたことがあるそのゲームは、酔狂なプログラマーが一人で作ったらしいことで話題になっていた。

だが、高橋の話によるとそのゲームはまだ遊べるらしいのだという。Webに公開されてはいないが、ゲームのサーバはデータを消去されないままどこかに残っていて、限られた者だけが遊べる状態になっているらしい。石津はにわかに興味を惹かれた。課題は二つあった。どうやってその会員になるのかと、30年前のゲームをどうすれば遊べるようになるのかだ。一つ目は意外にも高橋が知っていた。彼がSNS上で、マイナーなソーシャルゲームを遊んでいる際に知り合った人物が、そのゲームのサービス終了の折に彼を会員に誘ったのだという。二つ目の課題には、石津の古い情報通信の知識が役に立った。

遊ぶための環境を整え、二人はアカウントをもらいオンラインゲームへとアクセスする。荒いドットや使い回しのテクスチャは当時を思わせるものだったが、奇妙だったのは人口密度だ。そこにはところ狭しとアバターが寿司詰めとなっていた。そしてアバターの名前は、殆どがどこかで聞いたことがある版権キャラクターの名前だった。

ゲームの仕様として、操作しているアバターはログオフすれば地上からいなくなるが、死体はフィールドのどこかに保存される。そのため会員たちは、いつしかサービス終了やストーリー上の死亡など、電子の世界でもう会えなくなったキャラのアバターをクリエイトしては殺し、この世界に配置する慣習を始めた。ここは剣と魔法の世界ではなく巨大な霊園になっていた。

プログラマーを名乗る人物は既に病でこの世を去っているのだという。彼は生前ユーザーにこの霊園の運営を託した。この因習は彼のゲームへの巨大な弔いでもあった。既に霊園に使えるマスは残り少なく、一人、また一人と、土地が幽霊で埋まってプレイヤーが強制ログオフされる。二人は固唾を飲んで、ゲームの世界が幽霊で満たされるのを見届けた。その瞬間とともに、仕込まれたプログラムが起動し、全ての幽霊の名簿が、過去に遊んだことのある全てのユーザーのアドレスに送信された。少しでも忘れられることを防ぐために。

石津はその日のことを記事にも動画にもしなかった。電子の世界の因習をネタにする代わりに、彼は自宅にある好きだったレトロゲームを久しぶりに引っ張り出し、自分がこのゲームをまだ遊べることを噛み締める配信を流してその日を終えた。

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内容に関するアピール

買い切りではない、ソーシャルゲームやネットゲームなどのサーバ運用型のゲームは、ほぼ全てのものがサービス終了という形で終わりを迎えます。一世を風靡したとしても、かつて何百万というユーザ数を持っていたとしても、ユーザ層の老いや飽きに応じてコンテンツは劣化しますし、たとえ人が飽きなかったとしても技術適合やセキュリティの問題で維持が難しくなることもある。ファンとして、サービスが終了してしまうことはとても寂しいことですが、同時に自分が好きだったゲームを看取れることは得難い経験であるとも思っています。フィクションであるコンテンツに熱をあげる時間は無駄とは思いませんし、親しい友人の一生を隣で見ているような満足感を覚えた経験もあります。

ゲームの世界は割と何でもありで、運営だけでなくユーザが介入して延命する、あるいは逆に破壊するようなニュースもよくあることから、こんなゲームもあり得るかなと思ってます。

文字数:397

課題提出者一覧