梗 概
微分的終末
第一電子空間は地球の叡智を集結され作られた電子ネットワーク空間であり、人間のニューラルネットワーク処理を基本とした単位時間からすると100倍の処理速度であり、アクセルしている限りの1年は物理的な地球の100年に相当する。この第一空間から下層の電子空間につれては、50倍、10倍とPCスペックのごとく処理速度が違っていた。
全ては、地球に迫り来る隕石衝突、つまり地球最後の日を迎えるためだけの余生としての空間であった。
その地球最後の日までの1年間を、1年として生きるもの、10年として生きるもの、100年として生きるもの。ただそれだけの違いではあった。もちろん、異なる位相同士でもコミュニケーションはできた。だが、一方にとっての1時間が、もう一方にとっては30分になる。
こうして、地球が1日に発電できる電気量と現存する半導体から割り振られた電子カースト制度は、もののわずかな時間で構成され、地球最後の階級制度となる予定だった。多くは生命維持装置につながれ、もはや戻る前提のない永久的な閉鎖ポッドに入れられた。ポッドから現世に戻ったとしても、もはやその管理をできる人間も仮想空間に入ってしまっていた。もちろん、経済的・政治的に立場の弱い者たちは、そのまま1年を過ごすだけであった。
仮想空間内には、技術者および科学者が集められ、この隕石衝突を避けられないか検討するチームがある。アラタは科学者であったが地球に残り、データを送信する役割だった。彼が毎日送るデータは、ネットの向こうにいるエンジニアたちにとっては、数年に1回のアップデートとなる情報であった。
地球への隕石の距離は、栄光ある科学の叡智が示した軌跡どおり、着実に地球へ近づいていた。
地球最後の日がやってきた。月の向こうに、うっすらと赤い点が見えてきた。この点が地球へ確実に衝突する予定だった。アラタは最後のデータを送った。そして最後のコーヒーを飲もうと思った矢先、メッセージの通知がおびただしく鳴り続いた。――地球は助かる。予定と違うわずかな誤差がある。ゆえに、今まで打ち込めなかった核弾頭と月の引力を計算に入れれば、少なくとも地球の軌道を逸れてくれる可能性が生まれてきた、と。
すぐさま、用意されていたロケット発射の手筈が整えられ、発射ボタンが押下されるよう指示が出される。
アラタは知っていた。飛んでいくのは、核弾頭ではなく、生命維持装置につながれたおびただしいポッド群であり、彼らの移住ロケットであることを。
アラタは全ての電源を止めて、ポッドの生命維持機能を停止させると単独ロケットに乗り込んだ。
今日が地球最後の日かもしれないが、俺にとっては始まりの日だ。どこかも分からない移住地への座標へ向かってロケットは動き出す。電子空間は予備電源が切れるまでの余生が1年だと計算された。
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内容に関するアピール
地球の終末が確定した未来で、その生きる時間の濃度が人によって違う世界です。
電子空間にアクセスすれば、ほぼ寿命分は電子空間上で生きることができる世界。そこでのんびり余生を暮らす人、そこにはアクセスできない人に分断された社会です。科学者チームとしてつくられたのは、地上に残った人たちに一抹の希望を見せるだけの存在であり、生命維持に繋がれた人たちは、早々に移住先を調べているだけだった、という前提です。
主人公であるアラタはその欺瞞に気づき、騙されたふりをして、そんな電子空間の人間を全て殺して復讐するという、(ほぼ全ての人にとっての)地球の終わりという話です。ただ、その終末の数時間だとしてもポッド内の人間にとっては1年はある、というのがオチです。
展開がありきたりなので、もっと違う展開でもいい気がしています。
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