2050年の羅生門

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梗 概

2050年の羅生門

ある夕暮れ、レオは閉鎖されたデータセンターのゲートで雨宿りをしていた。ここはまるで羅生門だ、不法行為に手を染めるしか生き延びる道はないと思いながらも、まだ踏み切れずにいた。

戦争や災害が続いた結果、行政の機能は最低限の治安維持とインフラ保守に縮小されていた。食料、医療、住居や雇用はシステムによって算出されたスコアにそって配分される。スコアは健康状態、労働実績、社会貢献度などを分析して算出されていた。人々は自分の端末に表示されるスコアによって、生きる資格があるかを日々突きつけられる。

レオは街外れにある老朽化したデータセンターを警備員として巡回していた。仕事は単調で給料も安かったが、かろうじて最低限のスコアを維持して暮らしていた。

数日前、レオの担当区域が維持費に対して価値が低いと都市管理システムから判断され閉鎖された。同時にレオも一方的に解雇された。

レオは今、雨に濡れながら手元の端末を見ている。生存確率の表示は13%に下がっていた。社員寮は退去、食料配給も減らされる予定で、レオは呆然とする。

レオが端末を操作すると、システムは選択肢ごとの予測を表示した。現状維持だと生存確率は13%、食料品の窃盗で38%、データセンターでの窃盗と転売で70%。窃盗の項目には「不可逆・人格評価は低下」という赤字の警告が点滅していた。

雨風が強くなってきたので、レオは立入禁止区域のゲートの奥へと足を踏み入れる。そこで一体の旧型アンドロイドに出くわした。薄暗い中をアンドロイドの稼働ランプだけが緑色に光っている。アンドロイドになにをしているのかと聞くと、自分は三日後に廃棄予定であり、記憶を保持するために必要な演算資源やバッテリをコンピュータから取り出していると答えた。

アンドロイドは自分のスコアをレオに見せた。社会的価値ゼロ、維持コスト過大、判定:廃棄。レオは自分と同じように不要と判断された存在に、奇妙な共感と痛みを覚える。そのとき、レオの端末に新たな通知が表示された。このアンドロイドから資源を強奪し転売した場合、生存確率は70%に上昇。

レオは「生きるために必要なんだ」と言った。アンドロイドは「合理的選択です」と答えた。レオはアンドロイドから演算資源とバッテリを奪い取る。逃げ去るレオの端末には、おめでとう!生存確率70%という数字が表示されていた。

立入禁止区域のゲートを走り抜けるレオの端末に、新たな項目が赤く点灯する。窃盗歴:あり。

突然、ゲートの金属柵が変形した。何箇所かが直角に曲がり、レオを囲い込んで檻のような形になる。地面が左右に開閉し、レオを入れた檻はそのまま地下へと飲み込まれていった。ゲートのセキュリティ・システムに、アンドロイドからの最後の通信があり作動したのだった。

レオの行方はわからない。アンドロイドの方は緑色に光っていた稼働ランプが静かに暗く消えていった。

文字数:1187

内容に関するアピール

世界の終わり言えば「羅生門」を思い出し、未来に置き換えてストーリーを考えてみました。
暗澹たる世の中で倫理が崩れて罪に走ったのち、原作の「羅生門」では、盗人の下人は逃げおおせて夜の世界に解放されます。
未来社会はもっと非情なディストピアなので、主人公はセキュリティ・システムで抹殺されることにいたしました。

文字数:151

課題提出者一覧