梗 概
友よ、僕は覚えている
屋根裏に暮らすネズミたち――
知恵者のジェイド、食いしん坊で心優しいマチュー、そして人間の暮らしに強い憧れを抱く少女ミナ。ネズミ達は、人間が暮らす古い家の屋根裏で慎ましく生きていた。
ある日、ミナはその家に住む少女マリーに見つかってしまう。しかしマリーは、小さなネズミを可愛いと言って微笑みかける。
以来、ミナは夜ごとマリーの部屋を訪れるようになる。マリーの部屋にある色鮮やかな服、人形、おままごと道具、人間の世界は、ミナにとって夢のように輝いて見えた。
ジェイドはミナに、人間に近づきすぎるなと忠告するが、ミナは聞かない。ある夜、マリーの部屋で遊んでいたミナは、マリーに見つかってしまう。マリーはミナが両親に見つからないようにベッドの中に隠し、ミナのことを秘密にする。
それからしばらくして、マリーが病気で家から姿を消す。
それと同時に人間たちは、ネズミの駆除を始める。
逃げ惑う中、ミナの両親は粘着罠に捕まり、身動きが取れなくなる。ミナが泣き叫ぶ前で、二匹はそのまま水桶へ沈められ、命を落とした。その光景を目の当たりにしたミナは、その日以降、言葉を失ってしまう。
生き残ったのは、ジェイド、マチュー、ミナの三匹だけだった。
ジェイドは、生き延びるには知恵を得なければならないと、人間たちを観察し、学ぶ。
マチューは陽気に振る舞い、沈み込む仲間たちを励まし続けた。
ミナは依然として口をきけなかったが、服を着せてもらうと、少しだけ表情を和らげた。
そんなある日、服を着て外を散歩していたマチューは、人間の研究者ディビットに捕らえられてしまう。
研究所での暮らしはマチューにとって奇妙なほど快適だった。豊富な食事、暖かな寝床、遊び道具。マチューは次第に人間へ心を開いていくが、記憶が少しずつ薄れ、かつての仲間たちの記憶が曖昧になっていく。
ジェイドはマチューを救うため、研究所へ潜入。
ヘビの毒針を武器に、人間へ立ち向かい、ついにマチューのもとへ辿り着く。
しかし再会したマチューは、ジェイドの知る友ではなかった。
「ここは天国だ。出て行くなんでありえないよ」
そう語るマチューは、ジェイドのことも覚えていない。
マチューはふと、ディビットが倒れていることに気づく。
それはジェイドが侵入途中で、毒針で傷つけた相手だった。
マチューは激昂し、ジェイドに牙を向ける。
逃げ帰ったジェイドを待っていたのは、ミナだった。
成長した彼女は、ジェイドから教わった手話で、自分の思いを伝えられるようになっていた。
ミナは夕食を用意しながら、ジェイドへ告げる。子供ができたと。
老いたジェイドは、2輪の花を手に墓地を訪れる。そこにはディビットの名が刻まれた墓があった。ジェイドは静かに花を供え、その後、研究所の片隅に建てられた小さな慰霊碑へ、そこには実験動物として死んだマチューの名前が刻まれていた。
ジェイドは花を供え、その場を後にする。
文字数:1187
内容に関するアピール
力を得る、知恵を得る。
そんな中で、ふと思い浮かんだのは「アルジャーノンに花束を」です。
そのネズミ側で考えてみました。
おそらくネズミたちにとって、人間と暮らすことは毎日が戦場なような気がします。
懸命に生きていくには、力、知恵、色々なものが必要になる。
彼らは必死に助けを求めても、無残に殺されていきます。
そんな中で、ジェイドは力を手に入れて人間に立ち向かうが、逆に友であるマチューに牙を向けられる。
力があっても、どうにもできない。
そんなジェイドの悲しさを、表現できればと。
文字数:234



