Missing

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梗 概

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 近未来の韓国。韓国では優勢思想が蔓延し、人間ランクの高いものから配偶者を自由に選べる権利を持っていた。ランクは年収、職業、容姿、遺伝子情報によって数値化され、全国民がデータで見られる形式になっていた。人間のランクは1000を満点とし、600を下回ると脱落者と見なされスラム街へ追いやられるという差別を受けた。

 18才になったとき韓国国民は、ランクの高い人間から自分の容姿を決める権利を与えられた。美しいパーツを脱落者から奪い、醜いパーツを捨て、目指す職業に応じた全身改造が<KRA>によって自動的に行われた。

 そんななか、政府直属の韓国改造協会<KRA>によってスラム街に住む脱落者及びホームレスたちに一斉攻撃が行われる。ホームレスは社会からドロップアウトされた存在として、<KRA>の全身改造のために美しい顔のパーツを奪い、醜いパーツと取り替えるという人体実験が行われたのだ。

 ホームレスの中でも優生思想が抜けずに蹴落としあいが続き、愛の観念がなくなった世界の中でのセックス。親も不確かで、ホームレスとして産まれた子どもは一生ホームレス暮らしとなり、美しい顔の子どもが生まれる確率も少ない。だが、元々美しい顔と抜群の知能を持ったパク・デミは元々韓国の優生思想に反対で<KRA>の機械に対してハッキングを繰り返していたため例の人体実験で反感を買い、より一層酷い顔にされてしまう。そして自分の元の顔の奪還と<KRA>による全身改造をなくすと決心する。

 そこでデミが頼ったのが、今は<KRA>を辞めた元美容整形外科医のキム医師だった。キム医師はその腕を<KRA>に買われていたものの、<KRA>の極悪非道なやり方と韓国そのものの風潮に不満を持ってスラム街で細々と生活していた。キム医師は全身改造で使われるパーツは政府の研究所に保管されているとデミに告げる。そこで研究所に忍び込もうとするデミだが、<KRA>の手先に見つかり、長く細い手足までも切断されてしまい、大根足と太い腕を無理矢理に付与されてしまう。

 必ず元の自分の顔と手足を取り戻すと決意したデミ。そんなとき同じく奪われた自分の顔を探しに研究所にやってきた醜男イ・セロイと出会う。デミは最初セロイに不信感を抱くが、その生意気な性格が自分と同じく酷い顔の奪われ方をした凄惨な過去を背負っていることによるものだとわかり心を開き、協力することにする。そして二人は<KRA>研究所内にあるPCで<KRA>の全身改造を行う機械をハッキングし、全ての手術を止めることに成功する。

 <KRA>と韓国が国家転覆となるほどまで騒然となっている中、ついに研究所内で自分のパーツを見つけるデミとセロイ。だが各々の保管庫には厳重な暗号がかけられており、開けることができない。デミとセロイはキム医師に暗号解読と手術を頼む。元の体と顔を取り戻したデミとセロイは恋に落ちる。そして、全身改造のなくなった新しい韓国で愛のある生活を始めるのだった。

文字数:1230

内容に関するアピール

 小説つばるからの原稿依頼、ということで、どうにか同時代性を入れようと思いました。元々の着想は、日経のネット記事で「スチュワーデス用の整形プラン」が韓国では普及している、というものを見たことです。美容大国韓国とはいえ、そこまでするのか……と闇を感じたと同時に、年収の高い職業にはそれに応じた「顔」が求められるのが韓国なんだということを思い知らされました。この分断の世の中にあって、さらに美醜における分断を突き詰めればどうなるのかを書いてみたいと思いました。あと、ホームレスがハッキングや潜入をできるのか? と言う疑問については、実作でデミの知能に活躍してもらうつもりです。

文字数:286

課題提出者一覧