【歌ってみた】木ノ葉アンコール【市ノ瀬木葉】

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梗 概

【歌ってみた】木ノ葉アンコール【市ノ瀬木葉】

  森本は「合唱王国」と呼ばれる、全国でも有数の合唱が盛んな地区の中学生である。秋にあるクラス対抗の合唱大会に向け、教室が合唱練習に燃える中、声変わりしていない自分の声を嫌う森本は、可能な限り、練習をボイコットし続けていた。

 放課後練習をサボる森本はいつも「市ノ瀬木葉」の【歌ってみた】を再生しながら帰る。市ノ瀬木葉とは、その神懸かった歌声によって、人気を急激に伸ばしつつあるVTuberだ。歌うこと自体が嫌いなわけでない森本は、市ノ瀬木葉の歌に合わせて自分も口ずさむが、彼女ほど上手には歌えない。
 あー、自分もこんな風に歌えたらな、と思う。

 そんな時、海外の音楽学校に留学していたと噂の少年が森本の中学に転入してくる。少年は森本と同じクラスになり、柳瀬、と名乗った。柳瀬は合唱練習に参加するようになるが、森本と同じくやる気がない様子だ。ある日、森本と柳瀬は合唱の居残り補習を一緒に受けることとなる。ピアノ奏者の伴奏に合わせ、歌唱練習を開始したが、森本も柳瀬も一向に歌いだそうとしない。ピアノ奏者が泣き出し、廊下に出る。取り残された森本がいつもの癖で市ノ瀬木葉の歌ってみたを聞いていると、隣にいた柳瀬が歌い出す。美しいソプラノだった。森本は、その神掛かった歌声の虜になった。何より驚いたのはその歌声がVTuber市ノ瀬木葉とそっくりだったことだ。

 その後、森本は市ノ瀬木葉の歌声を何度も聞き返した。その結果、「柳瀬の歌声=市ノ瀬木葉の歌声」としか結論できず、柳瀬に「市ノ瀬木葉の中の人ではないか」と問い詰める。すると柳瀬はあっさりとそれを認め、再び森本の前で歌った後、自分は変声期なので合唱には参加しないことを告げた。

「この歌声はもうじき失われてしまう」

 声変わりによって自身のアイデンティティが失われてしまうと思った柳瀬は、完全に声変わりする前の自分の歌声をインターネット上に残し、アーカイブ化するとともに、自分が声を失ってしまった後も自律的に歌い続ける存在として、永遠に残しておきたいのだと語る。そのための、VTuber市ノ瀬木葉。

 柳瀬は合唱祭に参加しない代わりに、VTuberによる合唱を披露したいといい、森本の協力を依頼する。森本に実際の中学生の合唱練習風景を録音してほしいのだという。柳瀬は森本の録音してきた音声と、ネットで募った匿名のデータを使って、市ノ瀬木葉の音響的特徴を基にした22人の編成合唱隊を構成し、疑似ホログラムの準備を終えた。

 一方、森本は柳瀬に協力するため、合唱練習にいやいや参加していたが、次第に楽しくなる。

 そして合唱祭の当日、VTuberによる合唱は大成功に終わった。動画投稿サイトに英語字幕付きでアップロードすると、22人の市ノ瀬木葉は瞬く間にブームとなり、22人の市ノ瀬木葉と、そのデータセットは、世界中のホールを駆け回ることとなった。

 

 

 

 

 

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内容に関するアピール

 変声期を迎える少年二人の変化を、「声変わりを迎えておらず、変声前の歌声が恥ずかしい森本」と「天才的な歌声を持つが、身体構造の変化から歌声を失いつつある柳瀬」を対比させ、二人の成長と葛藤を描く青春小説です。作中技術は、現実でのボカロ技術、ニューラルネットワークを活用した音声合成技術等のイメージです。

文字数:150

課題提出者一覧