フジワラ・ヒカル
時は未来……
ここは、宇宙のとある高校の教室です……
「さあ、いよいよ2週間の休みに入りますから、課題を出します!」
「えぇー!」
「最悪うっ……」
「みんなに出す課題は、百人一首です!」
「……」
「全然知らない人も多いと思います。百人一首は、大昔の地球で流行った歌です。歌といっても、アイドルやイケメンがダンスしながら大音量で歌う歌じゃないですよ。ポエムの朗読、ともチョッと違うかもですが、とにかく詞を読み上げるんです。地球の日本で流行りました。ですから日本語です。みんな日本語は少し学習したでしょ?」
「はぁ、少しは……」
「日本語、めっちゃ難しかったです!」
「確かに難しいかもしれません。でも一度、この百人一首を学んでみて下さい。無理でもせめて、見て下さい! この百人一首には、日本語の言葉の面白さが満載です。そして、大昔の日本の風景や季節が歌われています。百人一首ですから、百人が一首ずつ歌っていて、全部で百の歌があります。それぞれの心模様が歌われています。その頃の日本の歴史も勉強できます。現代のみんなには、分かりにくい、分からない部分もいっぱいあるでしょうが……、でも、でもでもでもぉ……、これ、恋の歌が多いんです!」
「ヒュー!」
「それ、いいぃ!」
「その歌は、五、七、五、七、七、といって、五音、七音、五音、七音、七音の三十一音、つまり三十一文字で歌われています。これが、凄くリズムが良いんです」
「先生、それ、ネットで調べるんですかぁ?」
「ネットでも良いですけど、現代版の解説も売られています。強制はできませんが、良かったら是非、買ってみて下さい。例えば、これ、A社の「百人一首」!」
そう言ってフジワラ先生は一冊の本を皆の前にかざした。
ヒカルは心拍数が上がっていた。放課後になっても先生の顔と、その隣にかざされた本の光景が頭から離れなかった。何はともあれ早速、その本を入手した。
みんながどれだけ覚えたか、休み明けにはテストが行われるという。大卒新任のフジワラ先生は、生徒の人気も高い。年齢は皆の7つ上。ヒカルは、自分が何故こんなに高ぶっているのか、分かったような分からないような、分かりたくない様な心持ちでもあった。
(こんなに高ぶった自分、もしや、誰かに気づかれたりしたら……)
15歳のヒカルは、懸命に平静を装い、休みに突入すると、百人一首の解説本を狂ったように読みふけった。
1 秋の田の かりほの庵の 苫をあらみ わが衣手は 露にぬれつつ
(天智天皇)
作者はむかしの地球の偉いリーダーですが、農作業を見守るため、粗末な小屋にお泊りしています。屋根の隙間から冷たい夜露が入り込み、着物の袖がしっとり濡れていく。この句にあるのは、孤独と自然の厳しさ、そして民の苦労に寄り添う優しくて切ない寂しさ(わび・さび)。
現代に例えるなら、「テラフォーミング中の惑星で、気密性の低い簡易テントに泊まったら、結露で宇宙服がベタベタになって超ブルー」という具合。
なお、「かりほ」は「仮庵」と「刈り穂」の“掛詞”で、ダジャレみたいなもの。そして、最後は“つつ止め”という終わり方で、余韻効果抜群なんだけど、分かるかなあ? ただの愚痴に見えて、どこか風情あるのがエモい!
2 春過ぎて 夏来にけらし 白妙の 衣ほすてふ 天の香具山
(持統天皇)
この歌は、季節の到来をダイナミックに切り取った、爽快な一首です。
作者は、お隣の山に真っ白な夏服が干されているのを見て、「あぁ、春が過ぎて、もう夏が来たんだなぁ」と実感しています。緑の山と白い衣のコントラストが鮮やかで、神聖ながらも、生き生きとした夏のエネルギーに満ちあふれています。
現代に例えれば、「ドーム型居住区のエコシステム(環境維持装置)が春モードから夏モードに切り替わり、一斉に住民たちがクールウェアを外干しし始めた光景」。日常の変化をキャッチして、「夏が来た!」と喜ぶ姿は現代も共通です。
この句は「天の香具山」という名詞で終わる“体言止め”。恰好良いでしょう・・・?
3 あしびきの 山鳥の尾の しだり尾の 長々し夜を ひとりかも寝む
(柿本人麻呂)
「山鳥」のオスとメスは、夜になると別の峰に離れて寝る習性あり。その長い尾のように、気が遠くなるほど「長々し夜」を、ぼくは今夜も一人ぼっちで寝なければならないのだろうか、という究極の寂しさを歌った傑作です。
当時の夜は電気もなく正に真っ暗。恋人に会えない孤独と夜の長さが、山鳥のイメージと重なって、胸が締め付けられるような切なさが漂います。
現代なら、「通信ラグが数時間もある辺境の開拓惑星で、地球に残してきた恋人からの返信を待ちながら、クソ長い闇夜を一人きりのシェルターで過ごす絶望感」に合致するかな。
全宇宙が敵になったような超ウルトラ孤独の夜、みなさんも経験ありません?
4 田子の浦に うち出でて見れば 白妙の 富士の高嶺に 雪は降りつつ
(山部赤人)
突如、眼前に広がった大パノラマって最高! 作者が海岸線に出た瞬間、ドーンと現れたのは、真っ白な雪をかぶって輝く富士山。圧倒的な美しさに、思わず息をのんでいる感動の歌。
冷たい空気、青い海、そして白く輝く山頂。五感がシャキッとするような爽快感と、大自然へのリスペクトが詰まっています。
現代に例えるなら、「暗いワープゲートを抜けた瞬間、目の前に氷河に覆われた超巨大惑星がドーンと現れて、コックピット一同が『うわ眩しっ! 綺麗すぎてワロタ』って語彙力を失っている状態」。
あまりのスケール感に、日頃のちっぽけな悩みなんてどうでもよくなっちゃう瞬間だ。そして、また出たね、余韻効果抜群の“つつ止め”が。
5 奥山に もみぢ踏みわけ 鳴く鹿の 声聞く時ぞ 秋は悲しき
(猿丸太夫)
誰も来ない山奥、落ち葉を踏みしめながら、寂しげに鳴く鹿の声が響く。あぁ、秋って本当に切ない季節だ、としみじみ浸っている歌。
鳴く鹿は、離れて暮らすパートナーを探していると言われます。孤独な山の中で、その切ないラブコールを一人で聞く寂しさは、まさに「わび・さび」の極み。
現代に例えるなら、「役目を終えて放棄されたテラフォーミング惑星の奥地で、サビついた旧型ドローンが、もう誰もいない基地に向かってエラー音をピーピー悲しく鳴らし続けているのを、どこかで一人、聴いている瞬間」という状況。
胸が締め付けられるような、全宇宙共通のセンチメンタルなエモさです。ところで、この歌の主人公は、奥山のどこに居るのでしょう? もみじを踏んでいるのは鹿? それとも?
6 かささぎの 渡せる橋に おく霜の 白きを見れば 夜ぞふけにける
(中納言家持)
夜空にきらめく天の川。伝説では「かささぎ」という鳥が翼を並べて橋を作り、織姫と彦星を会わせたという。作者は、宮中の階段に真っ白な霜が降りているのを見て、夜空の橋を連想し、「こんなに夜が更けたんだな」と寒さに震えています。幻想的な星空の美しさと、静まり返った深夜の冷気が融合した、美しい歌。
現代なら、「軌道エレベーターの展望デッキで、凍りついたガラス越しに天の川銀河の超絶美しい大パノラマを眺めてウットリしていたら、いつの間にか深夜3時を過ぎていて『うわ、明日1限は宇宙物理学のテストじゃん、詰んだわ』と、急に現実に戻る瞬間」みたいな。
ロマンチックに浸りすぎての夜更かしには、くれぐれもご注意を!
7 天の原 ふりさけ見れば 春日なる 三笠の山に 出でし月かも
(安倍仲麿)
この歌の作者は、異国へ留学し、何十年も故郷に帰れなかった人です。ようやく帰国できることになった送別会の夜、夜空に浮かぶ美しい月を見上げて、「あの月は、ぼくの故郷の山で見上げた月と同じなんだなぁ」と、胸を熱くしています。夜空の壮大さと、どれだけ離れても近い故郷。じわじわと涙がこみ上げてくる、切ない望郷の「わび・さび」一杯です。
現代なら、「何光年も離れた未開惑星に単身赴任中のパパが、砂嵐の合間に見えた1等星を眺めて、『あの星、地球の実家の裏山から見えた星とまったく同じだな。みんな元気かな……』と、宇宙酒を片手に涙腺崩壊している状態」。
宇宙の果てにいても、故郷を想う心はワンネスなんですよ。
8 わが庵は 都のたつみ しかぞ住む 世をうぢ山と 人はいふなり
(喜撰法師)
この歌の作者は、都(京)からちょっと離れた宇治山で、のんびり隠居生活しています。周囲は「つらい(憂し)場所」という意味をかけて「うぢ山」と呼び、彼を可哀想に思っていますが、本人は「めっちゃ快適だし!」と平然。世間の目を気にせず、孤独をエンジョイする大人の余裕(わび・さび)が格好いい一首です。
現代なら、「SNSの通知も鳴らない、超高速ネット回線だけを引いた辺境の小惑星で、1人ミニマムライフを大満喫しているゲーマー。世間からは『ぼっちで可哀想』と言われてるけど、本人は『邪魔が入らなくて最高ですが何か?』と煽り気味にピースしている状態」。
他人の評価より、自分の快適さが一番だ!
9 花の色は うつりにけりな いたづらに わが身世にふる ながめせし間に
(小野小町)
「私ってこんなにシワあった?」そんな衝撃の瞬間を描いた歌です。作者の小町さんは超絶美女。でも、ぼんやりと長雨(ながめ)を眺め、物思い(眺め)にふけっているうちに、桜の花の散るが如く、自分の若さや美しさもすっかり衰えてしまったと絶望しています。
華やかな過去ゆえに、現在の衰えが際立つ。形あるものはいつか変わるという、無常の「わび・さび」が美しく表現されています。
現代なら、「最新の美容メンテナンスを少々サボり、SF小説を何作も読みふけっていたら、いつの間にか数年が爆速で経過していて、鏡に映った自分の生体データに『お肌の劣化アラート』が鳴り響いてガチ凹みしている状態」。時間の流れは光速より早い!
「(長雨が)降る」と「(世に)経る」、「長雨」と「眺め」は、それぞれ掛詞。縁語や倒置もあって複雑で大胆。当時は唯一無二の歌と評されたんだけど、果たして現代人に理解できるだろうか?
10 これやこの 行くも帰るも 別れては 知るも知らぬも 逢坂の関
(蝉 丸)
ここが噂に聞く、あの場所か! 旅立つ人も、無事に帰ってきた人も、ここでサヨナラした友達も、全く知らない他人も、みんながドッと集まってはまた離れていく、まさに人生の交差点、それが「逢坂の関」。
作者はここで人間観察をしながら、「みんなそれぞれの人生を生きてるんだな」と、しみじみ世界の広さと儚さを感じています。
現代なら、「銀河系最大級のハブ宇宙港のメインロビー。サイボーグも異星人もビジネスマンも、これから外宇宙へワープする人も地球へ帰る人も、全員がすれ違う巨大なカオス空間を、カフェで合成コーヒーを飲みながら眺めているエモい刹那」。
一瞬のすれ違いの中に、無限のドラマが詰まってる!
11 わたの原 八十島かけて こぎ出でぬと 人には告げよ あまの釣舟
(参議 篁)
「俺は遠くへ飛ばされる!」そんな極限状態のメッセージ。作者は上司と大喧嘩して島流しが決定。多くの島々を通り抜けて、果てしない大海原へ漕ぎ出してしまったと皆に伝えてくれ! そう近くの漁船に叫んでいる。
愛する人らと二度と会えない、圧倒的な孤独と絶望。その張り詰めた「わび・さび」の悲しみが痛いほど伝わります。
現代なら、「国家反逆の冤罪で、銀河の最果てにある流刑惑星へと強制連行される監獄宇宙船の窓から、近くを飛ぶ民間貨物船に向かって『俺は未知の領域へ飛ばされる。マブダチにメッセージ転送しといてくれー!』と、暗号通信を必死に送っている状態」。
リアルな絶望の中に漂う、篁の意地と強がりが正にロックだ!
12 天つ風 雲の通ひ路 吹きとぢよ をとめの姿 しばしとどめむ
(僧正遍昭)
「もう少しだけ、このままで!」そんなオタクの叫びが、大昔から届きました。宮中儀式で美少女たちが踊る姿を見た作者は、彼女らを天女に例え「天の風よ、彼女たちの帰り道を塞いでくれ! あのダンスをもう少しだけ見ていたい!」と悶絶。実は作者は僧侶。あまりの美しさに理性を失いかけているギャップがコミカルです。
現代なら、「バーチャル空間の銀河系同時配信ライブで、推しのAIアイドルの神パフォーマンスに大興奮したファンが、『おい運営!サーバー回線を今すぐ遮断してログアウト不可にしろ!この神空間を永久に続けさせるんだ!』と、チャット欄で発狂している状態」。
この心情はやっぱり、今も昔も変わらんね。
13 筑波嶺の 峰より落つる みなの川 恋ぞつもりて 淵となりぬる
(陽成院)
最初は「ちょっといいな」程度だったのに、気づけば……。そんな恋心の暴走。
筑波山の頂からチョロチョロ流れ落ちる小さな一滴(みなの川)が、山を下るうちに深い川の淀み(淵)になる。同じように、最初は小さかった恋心が、どんどん激しく積もり、今や底なしの深い沼に……と、コントロールできない感情に悶えています。
現代なら、「最初はただのバグだと思っていたAIプログラムへの愛着が、毎日チャットを重ねるうちにデータが自己増殖してしまい、気づけばメインサーバーの全容量を使い果たすほど巨大な恋のブラックホールに成長して、システムごと完全に飲まれている状態」かな。
感情のオーバーフローは、誰にも止められない……。
14 みちのくの しのぶもぢずり 誰ゆゑに 乱れそめにし 我ならなくに
(河原左大臣)
「私の心がこんなに乱れているのは、絶対に君のせいだから!」ていう歌。「しのぶもぢずり」とは、岩の模様を使って布に不規則な模様を染め抜く、当時の最先端デザイン。作者は「あの模様みたいに、私の心がグチャグチャに乱れ始めたのは一体誰のせいだと思う? 君のせい!」と、恋のモヤモヤをぶつけている。
現代なら、「気になる異性からメッセージが来た瞬間、脳内ナノマシンのバグで視界にサイケデリックな警告ノイズが走りまくり、『処理システムが完全にフリーズした!私のメイン基板を狂わせた責任、ちゃんと取ってよね!』と、全責任を相手に押しつけている状態」。
「そめ」は、「初め」と「染め」の掛詞。縁語、序詞も合わせて、複雑に乱れた色合いが凄い!
15 君がため 春の野に出でて 若菜つむ わが衣手に 雪は降りつつ
(光孝天皇)
作者は、大切な人にプレゼントするために、まだ冷え込み厳しい春の野原へ出て、新鮮若菜を懸命に摘んでいます。気づけば、自分の着物の袖にチラチラと雪が降り……という、純粋健気な愛のシチュエーション。若菜の緑と白い雪が織りなす光景は、温かく美しい「わび・さび」を感じさせてくれる。
現代なら、「まだ大気が安定していないテラフォーミング初期の氷雪惑星で、『あの娘がフレッシュな野菜を食べたいって言ったから』と、防護服のヒーターが切れかかっているのも忘れて、簡易温室のバイオ菜園から命がけで超高級レタスを収穫している健気な状態」。
凍えるほどの寒さの中でこそ、相手を想うピュアな温もりが引き立つね。これも“つつ止め”だ。
16 立ち別れ いなばの山の 峰に生ふる まつとし聞かば 今帰り来む
(中納言行平)
「離れるのは寂しいけれど、呼んでくれたら光速で戻ってくるからね!」という、熱い約束の歌。
作者は仕事の都合で、遠い「因幡」へ旅立ちます。寂しがる人に向かって、「因幡の山に生えている『松(まつ)』ではないけれど、もし僕のことを『待つ(まつ)』と噂に聞いたなら、たとえ遠く離れていても、今すぐ帰ってくるよ!」と、巧みなダジャレ(掛詞)を交えて伝えている。
現代なら、「遠い惑星へ単身赴任が決まった人が、『もし寂しくなってサブスクの通信回線で俺の名前を検索してくれたら、超空間ワープで今すぐ戻って来るからな!』と、強がっている瞬間」。
登場人物は男女不問でОKさ!
17 ちはやぶる 神代も聞かず 龍田川 からくれなゐに 水くくるとは
(在原業平朝臣)
「こんなの宇宙の歴史上、初めてだ!」と、あまりの美しさに大興奮の歌。
龍田川の川面を、紅葉の葉がびっしり覆い尽くしている。その様子は、まるで青い川の水を、鮮やかな「からくれない(濃赤)」の絞り染めにしたかのよう。神々の時代から数々の奇跡があったけれど、こんなに美しい光景は聞いたことがないと、大自然の神秘を絶賛しています。
現代なら、「未知の惑星の有毒なハイドロ液体が、特殊な光合成植物の胞子で真っ赤に染まり、グラデーションの川となって流れる奇跡の絶景。それを見た宇宙飛行士が『うわ、AIのCGエフェクトでも再現不可能なレベルの極彩色!神グラフィックすぎワロタ』と、ドローン撮影の手を止めて見惚れている状態」。
全宇宙の創造主に圧倒される、異次元のエモさだ!
18 住の江の 岸による波 よるさへや 夢の通ひ路 人目よくらむ
(藤原敏行朝臣)
平安時代、夢は「相手の魂が会いに来てくれる所」と信じられていました。作者は、「現実ならともかく、誰にも見られないはずの夢の中でまで、どうしてあなたは人目を気にして会いに来てくれないの?」と、切なく身悶えしています。
住の江の岸に「寄る(よる)」波と、夜の「よる」をかけ、切ない孤独(わび・さび)が浮かび上がる。
現代なら、「クラスの気になる異性と2人きりの非公開プライベートサーバーを立ち上げたのに、相手のアバターが『ログが残ったら恥ずかしいから』と常時ステルスモード(透明化)&超強固なセキュリティのまま全然喋ってくれず、『いや、ここ誰も見てないから!』って画面前でキレ散らかしている状態」。
この歌、主語が逆(私が人目をはばかる)でも面白い!
19 難波潟 短き芦の ふしの間も 逢はでこの世を 過ぐしてよとや
(伊 勢)
「ほんの一瞬すら会ってくれないの!?」と、恋人にブチ切れている歌。
難波の海辺に生えている、短い芦の「節と節の間」。その超短いスキマに掛けて、「(わずかな時間ですら会わず)私にこのまま一生を終えろって言うの?」と、相手の冷たい態度に猛抗議しています。
現代なら、「超高速光通信が当たり前の時代に、気になる相手から送られてくるメッセージのラグが『数秒』あるだけで、『このまま私を一生未読無視してブロックするつもり!?』って端末を握りしめて大パニックになっている状態」。
風景描写に序詞、縁語も使って、大いなる恨みを歌う、現代人に分かってもらえるかなあ?
20 わびぬれば 今はた同じ 難波なる みをつくしても 逢はむとぞ思ふ
(元良親王)
「秘密の恋がバレて大炎上だけど、たとえ社会的地位が壊れても、絶対に君に会いに行ってやる!」という、親王の超絶パンクで命がけのラブソング。
難波の海にある、船の道標「みおつくし(澪標)」と、「身を尽くし(身を捨てる)」を掛けた高度なテクニック。
現代なら、「皇子の裏アカウントがハッキングされて秘密の恋愛データが全銀河に流出、大騒ぎでアカウント停止(BAN)確定。でも『人生詰んだなら、サイバー警察のセキュリティ網を強引にハッキング突破して、物理肉体(リアル)で直接お前に会いに行く!』と、最高に危険なウイルスクラッキングを仕掛けている状態」。
すべてを犠牲にしても貫く愛は、いつの時代も最強で、ちょっとスリリング!
21 今来むと いひしばかりに 長月の ありあけの月を 待ち出でつるかな
(素性法師)
「今すぐ行くよ!」の言葉を信じて待っていたのに、結局来ないまま夜が明けて、朝の月(有明の月)が出ちゃった、という、待ちぼうけの歌。
信じていたのに、時間が経つにつれて不安になり、最後は絶望に。秋の長い夜の冷気も相まって、これ以上ない「わび・さび」の寂しさが……。後半の字余りも効果的かも。
現代なら、「オンラインマルチプレイで『今からログインする!』ってメッセージで、楽しみに待っていたのに、一晩中ステータスが『退席中』のまま。結局、明け方になって液晶画面のブルーライトが部屋を虚しく照らす中、『朝じゃん、寝よ』と、絶望しながらゲームの電源を切る瞬間」。
「○○詐欺」は不滅だね、
22 吹くからに 秋の草木の しをるれば むべ山風を あらしといふらむ
(文屋康秀)
「漢字の『嵐』って、山の下に風って書くじゃん!だから山から吹く風をアラシって言うのか、なるほど完全理解!」という、天才的なひらめき(とドヤ顔)を歌ったポップな一首。
その風が吹いた瞬間、秋の植物たちが一斉にしおれてしまうほどの激しさ。自然の圧倒的なパワーに対する畏怖がありつつ、言葉遊びで笑わせる。
現代なら、「テラフォーミング惑星の大気安定化装置がバグって、山岳エリアから超強風。バイオ植物の全倒を見た研究員が『山からの風で大荒れだから、この現象を【山+風=嵐】ってデータ登録したやつ、ネーミングセンス神だな』と、不謹慎にも感心している状態」。
「嵐」と「荒し」は当然「掛詞」さ。
23 月みれば ちぢに物こそ 悲しけれ わが身ひとつの 秋にはあらねど
(大江千里)
「なんか急に涙が出てきた……」そんなメンタル大荒れな夜を描いた、哀愁全開の一首。
秋の月を見上げていると、あれこれ千々(ちぢ)に心が乱れて、とにかく物悲しい。秋は皆に平等に訪れるもので、自分一人だけのために寂寥が来たわけじゃないと分かっているのに、どうしても感傷的になってしまうという、ピュアな「わび・さび」表現。
現代なら、「宇宙ステーションの観察窓から、はるか遠くに輝く母星(故郷)の光を眺めていたら、ホームシック? 急に圧倒的なエモさに襲われ、『全宇宙でぼく一人だけが取り残されたみたいだ』と、謎の涙を流している状態」。
「千」と「一」の対比感もグー!
24 このたびは ぬさもとりあへず 手向山 もみぢの錦 神のまにまに
(菅 家)
「急な出張すぎて、神様へのお土産(幣=ぬさ)を忘れた!ご免!」という、大慌て状況から生まれた奇跡の一首。
作者は後に「学問の神様」となる超天才。急な旅の途中で神山を通りかかり、お供え物がないことに気づきます。そこで「代わりに、この山一面に広がる最高に美しい紅葉のじゅうたん(錦)を、お受け取りください!」と機転を利かせた。
現代なら、「宇宙の緊急任務でワープした惑星の神社で、お賽銭の電子マネーがまさかの通信エラー。焦った隊員が『神様ご免!代わりにコックピットの窓から見える、この1万年に1度しか見られない超美しい超新星爆発の輝きをお供えします!』と、祈っている状態」。「この度」と「この旅」も当然の手法!
25 名にしおはば 逢坂山の さねかづら 人に知られで くるよしもがな
(三条右大臣)
「誰にも見つからず、今すぐ君の所へワープできたなら」そんな秘恋歌。
「逢坂山(逢う)」に生える、引き寄せて使う植物「さねかずら(一緒に寝る・たぐる)」。そんなツルがあるなら、それを手繰り寄せるようにして、誰にもバレずに君の所へ行く方法(くるよし)があれば、と妄想を膨らませてる。周囲の目を気にしながら恋い焦がれる、もどかしい「わび・さび」がたまらない!
現代なら、「監視ドローンが飛び交う学園の居住ブロックで、気になるあの子の部屋に忍び込むため、『着るだけで気配を完全に消せる最高級のステルスコート、手に入らないかなぁ』と、ベッドの中で妄想している状態」。この歌には、掛詞・序詞・縁語、バンバン入ってるんだけど、分かるかな?
26 小倉山 峰のもみぢ葉 心あらば 今ひとたびの みゆき待たなむ
(貞信公)
「紅葉さん、もし人の気持ちがわかるなら、偉い人が次に来るまで散らずに持ちこたえて!」と、植物に無茶振りしている歌。
宇多法皇が小倉山の紅葉の美しさに感動し、「息子の醍醐天皇にも見せたい」と呟いたのを聞いて、お供の作者が即興の詠み。美しい風景を大切な人と共有したいという優しさと、臣下としての完璧な配慮が詰まっているね。
現代なら、「視察中の大物政治家(元大統領)が、未開惑星の超美麗なオーロラを見て『将来の大統領(自分の息子)にも見せたい』と言った瞬間、秘書が『環境制御AIよ、次回までこのプラズマ発光をキープせよ!』と、システムに無茶な命令を入れて忖度している状態」。また2世大統領かよ!
27 みかの原 わきて流るる いづみ川 いつ見きとてか 恋しかるらむ
(中納言兼輔)
「一度しか逢ってない(或いは、逢ってすぐ別れた)のに、どうしてこんなに君のことが恋しいんだろう」という、恋のパニック。
みかの原を「湧き(わき)」出て流れる「いづみ(泉)川」と、いつ見き(いつ会ったっけ?)という言葉をかけた流麗イントロ。相手のことをよく知らないのに、恋心だけが泉のように湧き上がってしまう。
現代なら、「SNSに流れてきた、他校の生徒(アバター)の数秒のショート動画を『一瞬見ただけ』なのに、脳の処理回路が24時間その子のことで占拠され、『これが恋のブレインジャックか!?』と、端末を抱えてのたうち回っている状態」。「湧き」を「分き」と詠むのも有り!
28 山里は 冬ぞさびしさ まさりける 人目も草も かれぬと思へば
(源 宗千)
「山奥の冬、マジで静かすぎて寂しさが限界!」という、孤独を極めた「わび・さび」の傑作。
普段から人があまり来ない山里。冬になると、たまに来ていた人もパッタリ来なくなり(離れ)、生い茂っていた草も枯れてしまう。「離る」と「枯る」を掛けた言葉遊びですが、周囲から生命の気配が完全に消え去った冬の寒々しさに、心が冷たくなる寂しさを歌っています。
現代なら、「メンテナンス期間に入った無人の採掘小惑星で、植物プラントの照明も消え、サポートAIすら省電力モードでスリープし、完全に音が消えた暗黒のシェルターで『本当にぼっちだわ、寂しすぎる』と、通信ログを虚しく眺めている状態」。それを、掛詞、縁語、倒置を交えて表現してるのさ。
29 心あてに 折らばや折らむ 初霜の おきまどはせる 白菊の花
(凡河内躬恒)
「真っ白な霜が降りすぎて、どこに白菊が咲いてるか全然わからん!勘で折るわ!」という、お茶目で美しい歌。
庭一面に真っ白な初霜が降りて、白菊の花と完全に同化している。もし手折るなら、あてずっぽう(心あて)で摘むしかない、と幻想的な白の世界を美しく楽しんでいます。
現代なら、「冬の居住ドームに超高密度のホワイトアウト(冷却霧)が発生して、視界が完全にゼロ。探している白い新型お掃除ドローンが背景に溶け込みすぎて、『勘で探すしかないか、と霧の中でドタバタしている状態」。いや、白菊の花は、誰かさん、なのかも。照れ隠しか!
30 ありあけの つれなく見えし 別れより 暁ばかり 憂きものはなし
(壬生忠岑)
「別れ際の冷たかった君の態度が忘れられなくて、毎朝つらい」という、失恋ソングです。
夜明けに空に残っている「有明の月」の、どこか冷ややかでつれない(冷淡な)輝き。それと同じように冷たい態度をとった恋人と、夜明け(暁)に別れて以来、朝が来る度に悲しい瞬間を思い出して、とにかく憂鬱だという切ない歌。
現代なら、「気になる子を深夜のオンライン通話でデートに誘ったのに、明け方4時頃に『眠いから切るね』と、超塩対応で即切断され、それ以来、早朝にスマホのアラームが鳴るたびに『あの冷たいログアウト画面が脳裏に再生される。朝なんて来なきゃいい』と、枕に顔を埋めている状態」。ところで「有明の月」、見た事ある?
31 朝ぼらけ ありあけの月と 見るまでに 吉野の里に 降れる白雪
(坂上是則)
「うわっ、外がめっちゃ明るい! 月光と思ったら、これ全部雪の光か!」という、朝イチの勘違いを描いた一首。
ほんのり夜が明け始める「朝ぼらけ」の時刻。空に浮かぶ「有明の月」が照らしているのかと見間違うほど、吉野の里に降り積もった白雪が眩しく輝いている。静寂に広がる圧倒的な白光の美しさが、冬の「わび・さび」を引き立てています。
現代なら、「氷の惑星に不時着した翌朝、コックピットの窓の外が尋常じゃない光量で輝いていて、『恒星の超新星爆発か!敵のビーム攻撃か?』と大パニックするも、ただの自転による朝日で氷河が一斉に光の反射してただけだった時の、安堵と美しさへの感動」。超自然の「白光」の破壊力、凄すぎる!
32 山川に 風のかけたる しがらみは 流れもあへぬ もみぢなりけり
(春道列樹)
「あの川、なんか詰まってる。風が仕掛けた紅葉のトラップじゃん!」という、自然アートに驚いた歌。
「しがらみ(柵)」とは、川の流れをせき止める木製の壁。でもこの山奥の川にあるのは、人間が作ったものでなく、風で散った紅葉葉が集まった天然のカラフルな壁。流れていけない紅葉たちが、水面を真っ赤に埋め尽くしている美しさと儚さに、「わび・さび」だ!
現代なら、「惑星の防衛システムが、飛来する宇宙ゴミをプラズマ磁界でせき止めていたら、たまたま近くで爆発した極彩色パウダー貨物船の粒子がそこに全吸着。宇宙のど真ん中に、光り輝く七色の『光子フェンス』が偶然できあがり、パイロットたちが見惚れている状態」。自然のイタズラが起こす奇跡が最高にエモい!
33 ひさかたの 光のどけき 春の日に しづ心なく 花の散るらむ
(紀 友則)
「こんなに穏やかな日なのに、どうして桜だけが生き急ぐように、落ち着きなく(しづ心なく)散っていっちゃうの?」という、春の切なさを歌った超名作。
のどかな春の一日。周りはこんなにゆったり流れているのに、桜の花びらだけがハラハラと猛スピードで散っていく。その対比が、形あるものの移り変わりの早さ(無常)を引き立てて、胸がキュンとするような「わび・さび」を感じさせる。
現代なら、「テラフォーミングドームの天候システムが、完璧にのどかな『地球の春』を再現している平和な午後。にもかかわらず、遺伝子改良された最新のバイオ桜の散布プログラムだけがエラーを起こして爆速終了し、一瞬でホログラムのような花吹雪が消え去って『えっ、もう終わり?』と、呆然という状態」。確かに桜は一瞬だからこそ美しかったんだけど、現代人に分かるかな? 「ひさかたの」は、天空などにかかる「枕詞」。枕詞そのものに意味はないんだけど、歌のリズムを整えたりする効果があるんだよ。
34 誰をかも 知る人にせむ 高砂の 松も昔の 友ならなくに
(藤原興風)
「気づけば周りは若い奴ばかり。昔の思い出を語り合えるマブダチ、宇宙に一人も残ってない!」という、究極の高齢化ぼっちソング。
作者は高齢。ふと「これからの人生、誰を友にすれば?」と途方に暮れます。長生きの象徴である「高砂の松」は昔からそこに居ますが、植物だから言葉を交わす友ではない。過去を共有できる人が誰もいない絶対的な孤独が、冷たく胸に染みる一首(わび・さび)。
現代なら、「コールドスリープ(人工冬眠)のバグで自分だけ150年間も眠り続けてしまい、目覚めたら当時の友達は全員他界。旧型ロボットだけが当時のまま残っているけれど、『お前と昔話しても』と、一人サイバー酒をすする超孤独なベテラン宇宙飛行士」。どう? 君は長生きしたい?
35 人はいさ 心も知らず ふるさとは 花ぞ昔の 香ににほひける
(紀 貫之)
「人間の気持ちなんて分からないけど、ここの梅の花だけは昔のままで、良い香りだ!」という、皮肉混じりのラブソング。
作者が久しぶりに馴染みの宿を訪ねた際、主人から「お忘れでしたか」と嫌味を言われ、「他人の心(内面)など分からない。でも、この梅の花だけは昔と変わらない美しさだね」と、見事な切り返し。変わる人の心と、変わらない自然の「わび・さび」の対比が鮮やか。
現代なら、「数年ぶりに元カノ(元カレ)のアカウントを見たらプロフや趣味が別人に書き換わっていて『人の心は移り変わるな』と凹む一方、当時2人でよく聴いていた配信音楽だけが昔と全く同じエモいメロディで脳内に響き渡っている状態」。でも、梅の花だって、永遠ではないから……。
36 夏の夜は まだ宵ながら 明けぬるを 雲のいずこに 月宿るらむ
(清原深養父)
「えっ、もう朝? まだ夜が始まったばかりの『宵』だと思ってたのに。これじゃ夜空を旅してた月も、隠れる暇がなくて雲のどこかで慌てて野宿してるんじゃ?」という、夏の夜の短さに驚くコミカルな一首。
大昔の地球の夏は、夜がとにかく短い。作者は「月も宇宙に帰れなくなったのかな」と妄想していて、そのファンタジーなセンスが最高にエモい。短すぎる楽しい時間への名残惜しさという、爽やかな「わび・さび」。
現代なら、「自転周期がたった12時間しかない高速回転惑星の夏。友達と通話を繋いでネトゲを始めたら、2〜3戦しただけでドームの窓から強烈な朝日が差し込んできて『朝かよ! 月アバターのあいつもログアウトが間に合わずに背景グラフィックにバグって残ってるよ!』と、大爆笑している状態」。楽しい夜の時間は、全宇宙共通で一瞬のワープ!
37 白露に 風の吹きしく 秋の野は つらぬきとめぬ 玉ぞちりける
(文屋朝康)
「秋風が吹いた瞬間、草の上の水滴が一斉に飛び散った! まるで糸が切れて全方向にバウンドしたネックレスの宝石(真珠)じゃん!」という、大自然の一瞬のきらめきを切り取った美麗な一首です。
草の葉にたまった美しい「白露」に、風が吹きつける。すると、糸で繋がれていない真珠の玉がバラバラと散らばるように、水滴が光を反射しながら宙を舞う。一瞬の美しさ、儚さ(わび・さび)の極みのような光景。
現代なら、「宇宙ステーションの無重力エリアで、お気に入りの超高級クリスタルベアリング(ナノベアリング)のケースを落とした瞬間。磁気サーボが切れて、何千個もの微細な光る球体が空間いっぱいに拡散して『うわ、片付け超めんどいけど綺麗すぎ、ワロタ』と、宇宙遊泳しながら見惚れている状態」。大昔、それが自然の光景だったとはねえ……。
38 忘らるる 身をば思はず 誓ひてし 人の命の 惜しくもあるかな
(右 近)
「私を捨てるのは百歩譲って許す。でも貴方『神に誓って一生愛す。破ったら死んでもいい』って言ったよね? 神様の罰で貴方が消されないか、心配で夜も眠れないわ(微笑)」という、大昔の超ド級の恨み節。
作者は、自分との約束を破って他の女に乗り換えた男に絶望しています。でも、自分の悲しさよりも、「神様との契約違反」によるペナルティを心配するフリをして、男をジワジワ精神的に追い詰めるユーモアと怖さが最高にロックな一首。
現代なら、「生体認証付きの電子誓約書で『一生浮気しません。破ったら脳内ナノマシンが爆発します』ってデジタル署名してきた彼氏が、速攻で他の女子とマッチング。それを見つけた彼女が『私は全然怒ってないよ?ただ、システム自動執行であなたの脳細胞が明日強制フォーマットされるのが心配なだけ♡』と、笑顔でメッセージを送っている状態」。だけど現代、本気で相手の心配するケース、あると思う? 意外とあるよねえ(苦笑)。
39 浅芽生の 小野の篠原 忍ぶれど あまりてなどか 人の恋しき
(参議 等)
「バレないように、気持ちを完全に隠(しの)んでいるんだけど、耐え難いまでに貴女が恋しくて……」という、赤面悶々の一首。
背の低い笹が生い茂る「篠原」という言葉に、「忍ぶ」を忍ばせたオシャレなイントロ。自分の胸のなかにギュッと閉じ込めていた恋心が、抑えきれないまでに膨張を重ねてしまう秘恋の「わび・さび」。
現代なら、「ドーム学園のクラスで、気になるあの子を目で追っていると、感情に同期したスマートウォッチの心拍数アラートが『恋心MAX!』だって。顔を真っ赤にして悶々としている状態」。ポーカーフェイス? 現代人なら可能かな? でも、この歌の作者には全く無理らしい。
40 忍ぶれど 色に出でにけり わが恋は 物や思ふと 人の問ふまで
(平 兼盛)
「完璧に暗号化して隠していたはずなのに、顔や態度にモロに出てたわ! 周りから『ねえ、誰かのこと考えてお悩み?』と、突っ込まれるレベルで!」という、秘恋失敗の恋歌。
この歌は、宮中の「恋の歌バトル(歌合)」でライバルと激突した大勝負の一首。誰にも言わずに片思いを胸に秘めていたはずなのに、恋のエネルギーが強すぎて外見(色)に滲み出てしまい、他人に心配されるほど分かりやすく片思いをこじらせている「わび・さび」が最高にキュート。
現代なら、「意中の相手にバレないよう、脳内のプライベートフォルダに片思いのログを完全秘匿していたのに、その子が近くを通るたび、感情パラメーターのバグで体温が急上昇。アバターの顔が真っ赤に発熱しちゃって、親友から『お前、処理落ちするくらい誰かに恋してんな?』ってニヤニヤしながら肩を叩かれている状態」。ちなみに、前述の歌合では、この歌が僅差で次の歌に勝ったらしい。
41 恋すてふ わが名はまだき 立ちにけり 人知れずこそ 思ひそめしか
(壬生忠見)
「えっ、私が恋をしてるって噂が、もうタイムラインに! 誰にも言わず、ひっそりと思い始めたばかりなのに、拡散されるの早すぎない?」という、ネット炎上並みのスピードに驚く歌。
誰にも知られないよう、超極秘にスタートした恋。それなのに、どこから情報が漏れたのか、すでに世間の噂(名)になってしまっている。そんな戸惑いと、隠しきれなかった恋心の強さが、ちょっぴり恥ずかしくも切ない「わび・さび」。
現代なら、「意中のあの子のアカウントをこっそりフォローして、まだDМすら送っていないのに、『おすすめユーザー』や『あなたへの推奨トレンド』に勝手に2人の名前が並んで表示され、『全銀河系に俺の片思いがレコメンドされてる!』と、大パニックな状態」。歌合で40番の歌に惜敗(泣)。
42 契りきな かたみに袖を しぼりつつ 末の松山 波越さじとは
(清原元輔)
「『宇宙が崩壊しても僕たちの愛は不滅』と、泣きながら誓い合ったのに、あっさり乗り換えるとか、マジで信じらんない!」という、約束を破られた怒りと悲しみの歌。
「末の松山を波が越える」とは、当時の地球で「絶対にあり得ないこと」の代名詞。お互いに涙で濡れた袖を絞りながら、「あの山を波が越えることがないように、ぼくたちの愛も絶対に変わらない」と誓い合ったはずなのに、相手の心はあっけなく変わってしまった。信じていた分だけ深い絶望(わび・さび)が胸を刺す。
現代なら、「『絶対に破られない最強の量子暗号化サーバー(末の松山)がサイバーテロでハッキング(波が越える)されるくらい、ぼくらの絆が壊れる確率ってゼロだよね!』ってアバター同士でエモい約束を交わした翌週に、相手が別のユーザーとペアルックで限定イベントに参加しているのを目撃して脳内システムがフリーズ状態」。恋に絶対って、あると思う? そもそも現代人、恋してる?
43 逢ひ見ての のちの心にくらぶれば 昔は物を思はざりけり
(権中納言敦忠)
「片思いの時は『付き合えさえすればゴール!』と思ってたのに、いざ両想いになったら、会えない時間が昔の100倍苦しくなった!」という、恋の底なし沼。
ついに憧れのあの人と結ばれた作者。しかし以後、「もっと会いたい、離れたくない」という切なさに直面。それに比べたら、付き合う前に「あの人が好きだなあ」と悩んでいた日々なんて、何も考えていなかったも同然だ、と恋の重みに打ちのめされます。
現代なら、「推しのアカウントから奇跡的にDMの返信が届いて狂喜乱舞したものの、そこから次の既読がつくまでの数分間が1年間に感じられて、『ただのファンとして遠くから眺めていた頃の方が、脳内チップの処理負荷が低くて平和だった』と、恋の依存度に頭を抱えている状態」。やっぱり恋は、片思いが華!
44 逢ふことの 絶えてしなくは なかなかに 人をも身をも 恨みざらまし
(中納言朝忠)
「こんなに心がボロボロになるなら、最初からあの人に一度も会ったことがなければ、どんなに楽だっただろう」という、恋のどん底ソング。
あの子と付き合うなんて可能性が「完全にゼロ」だったなら、冷たい相手を恨むことも、不器用な自分を責めることもなかったのに。一度でも最高の幸せを知ってしまったからこそ、それが失われた今の孤独が耐えられない、という究極の後悔と未練。
現代なら、「最高のVRゲームをして感動したのに、セーブデータがバグで全消去。またあの世界に行きたいのに二度とログインできなくなり、『こんなに絶望するなら、最初からあの神ゲーの存在すら知らないまま、現実世界の普通の日常を送っていればよかった!』と、端末を床に投げつけている状態」。男って、弱い!
45 あはれとも いふべき人は 思ほえで 身のいたづらに なりぬべきかな
(謙徳公)
「あぁ、ぼくがここで野垂れ死にしても、全宇宙で『かわいそうに』って泣いてくれる人は一人もいない。このまま私は無駄に消え去るんだな」という、悲劇のヒロイン風こじらせソング。
作者は恋人にフラれて絶望のどん底。「私が消えても君はなんとも思わないんだろうね」と、相手の同情を引くためにあえて大袈裟にアピール。冷たい宇宙の果てに放り出されたような絶対的な孤独の中に、どこか「かまってちゃん」なコミカルさが見え隠れする一首。
現代なら、「クラスのグループチャットから自分だけハブられ、自暴自棄になってサブスクの全アカウントを削除。『これで俺の存在データは銀河から完全消去された。誰も悲しまない暗黒の宇宙へワープしてやる……』ってベッドの中で毛布をかぶり、誰かから『どうしたの?』って個人DMが届くのを待機している状態」。またまた「男って、弱い!」。
46 由良のとを 渡る舟人 かぢを絶へ ゆくへも知らぬ 恋の道かな
(曾禰好忠)
「コントロールが完全にイカれた! これから一体どうなっちゃうの!」という、恋の暴走パニック。
「由良の門」とは、当時の地球の激流スポット。そこを渡る船の「かぢ(オールやハンドル)」が折れてしまい、波に揉まれてどこへ流されるか分からない。同じように、私の心も恋の荒波に流されて、もう自分の意志では制御できない、というハラハラを描写。
現代なら、「宇宙の激流『小惑星帯』を突破中に、操縦かぢのサーボモーターが完全にショート。自動航行システムも機能停止して、機体がどこへワープするか予測不能になり、『推進力100%のまま恋のブラックホールへ直行してる!誰か止めて!』と、コックピットで絶叫している状態」。恋の河を渡る舟にオール無し!
47 八重むぐら 茂れる宿の さびしきに 人こそ見えね 秋は来にけり
(恵慶法師)
「あんなに栄えていた場所なのに、今は誰もいない。でも、季節だけはちゃんとやってくるんだな」という、諸行無常ノスタルジーな一首。
「八重むぐら」とは、何重にも激しく生い茂る雑草。かつては華やかだったお屋敷も、今は手入れする人もおらず荒れ放題。人間は一人も訪ねてこないけれど、吹き抜ける寂しい風の音に、確かな「秋」の訪れが。これぞまさに、滅びの美学を内包した「わび・さび」の極み。
現代なら、「10年前に住民が全員避難した、ゴーストタウンならぬ【遺棄されたドーム居住区】。サイバー植物がハッキングしたみたいに建物を埋め尽くし、人間の気配はゼロ。だけど、ドームの天候制御AIだけは生きていて、今年も切ない『秋モード』の冷たい風を静かにドーム内に吹かせている光景」。今昔不問、場所不問で栄枯盛衰!
48 風をいたみ 岩うつ波の おのれのみ くだけて物を 思ふころかな
(源 重之)
「風が強すぎて、岩にぶつかる波が己のみ砕け散る。これって、あの娘の冷たい態度に突撃して、勝手にメンタル崩壊してる俺の姿そのものじゃん!」という、自爆系片思いの歌。
「風をいたみ」とは、風が激しいという意味。激風に煽られた波が、ビクともしない巨大な岩に激突しては、自分だけが粉々に砕け散っていく。相手は何とも思っていないのに、自分だけが勝手に傷つき、心を痛めているという、不条理で切ない「わび・さび」がドラマチックに描写。
現代なら、「クラスの鉄壁無愛想なクール系美少女に必死にメッセージを送るも、既読スルー。彼女の超強力電磁バリアに特攻しては、自分の恋心エンジンだけがオーバーヒートで粉々に自爆し、『俺のガラスのハートが粉砕した!』と、宇宙の藻屑になっている状態」。現代人は「当たって砕けろ」って使う? この歌発信の言い回しかも?
49 みかきもり 衛士のたく火の 夜は燃え 昼は消えつつ 物をこそ思へ
(大中臣能宣朝臣)
「夜は恋心が大炎上して一睡もできないのに、昼は周りの目が気になってスンと、気配を消さなきゃいけないから情緒が狂う!」という、昼夜のギャップに悶える歌。
「御垣守(みかきもり)」とは宮殿の警備員、「衛士(えじ)」は彼らが夜間に焚くパトロール用の火のことです。夜は暗闇の中でゴーゴーと激しく燃え上がり、昼は白い灰になって消えていく。そんな火と同じように、夜は部屋で一人、恋の炎を燃やして苦しみ、昼は誰にもバレないようポーカーフェイスで感情を消しているという、もどかしい「わび・さび」。
現代なら、「昼間のドーム学園では『興味ないし』と完全ステルスモードで接しているのに、夜に一人でシェルターに帰った瞬間、あの子との思い出をアーカイブでループ再生して脳内チップの恋心ログを高負荷で真っ赤に大炎上させている状態」。24時間体制で感情のシステムを切り替えるのは、中高生にとっても大仕事だ!
50 君がため 惜しからざりし 命さへ 長くもがなと 思ひけるかな
(藤原義孝)
「君と付き合えるなら死んでもいいって本気で思ってた。でも、いざ両想いになれた今は、1秒でも長く生きて君のそばにい!」という、恋の奇跡を歌った超絶エモ名作。
付き合う前は「命なんて惜しくない」と豪語の作者。ところが、初めて一夜を共にして想いが通じ合った朝、自分のマインドが80度変わっていることに気づく。この人と一緒にいるために「長生きしたい」と願う、恋の幸福感(わび・さびの対極でもある)の見事な表現。
現代なら、「『あの子に振り向いてもらえるなら、片道切符の危険なワープ特攻任務に志願しても構わない!』と無謀な暴走をしていた荒くれパイロットが、作戦前夜についに告白されて両想い。翌朝、速攻で司令室に駆け込み『すみません、やっぱり死にたくないので超高性能の新型防護シールドと100年分の延命ナノマシンをフル装備させてください!』と、ガチで命乞いしている状態」。愛は、最高の生存本能スイッチか!
51 かくとだに えやはいぶきの さしも草 さしも知らじな 燃ゆる思ひを
(藤原実方朝臣)
「君が好きだなんて、口が裂けても言えない。君は私の胸の中が火山みたいに大炎上してるなんて、夢にも思っていないんだろう」という、悶絶級の片思いソング。
お灸(きゅう)に使う薬草の「さしも草」と、「さしも(それほど)」をかけた、百人一首の中でもトップクラスの超絶技巧。「言いたいけれど言えない」というもどかしさが、伊吹山の燃える草と重なって、胸焦がす熱量で伝わってきます。
現代なら、「意中の相手と至近距離のペアワーク中、緊張のあまり脳内CPUの温度が1000度に達して冷却ファンが爆音の回転。当の本人は『なんでもないよ』と平静を装っているけれど、胸の内部の恋愛演算回路がドロドロに溶けて火花が散っていることに、相手が1ミリも気づいていない状態」。皆の教室内にもあるんじゃない? こんな光景。この歌、掛詞、縁語、序詞、倒置、係り結び、技術が盛り沢山!
52 明けぬれば 暮るるものとは 知りながら なほ恨めしき 朝ぼらけかな
(藤原道信朝臣)
「朝が来た、また夜になれば君に会えるって頭では分かってる。分かってるけど! 2人の時間を強制終了させるこの夜明けが、憎たらしい!」という、愚痴の歌。
楽しい夜が終わって、うっすらと空が明るくなる「朝ぼらけ」。どんな夜も明けるし、また夜が来ると知っているのに、どうしても朝の光を恨んでしまう。恋人と離れたくない一瞬の切なさが、みずみずしく描写。
現代なら、「意中の子と深夜の限定VRワールドで通話しながら2人きりで遊んでいて、ドームの環境システムが非情にも『朝のログイン時間』を告げるアラートを鳴らした瞬間。また夜にマルチプレイできると分かっていても、『天候制御AI、今すぐ朝のプログラムをバグらせて、夜をループさせろ!』と、モニターを睨みつけている状態」。女性の所に夜、男性が訪れて夜明けに帰る。これが大昔の慣わし!
53 嘆きつつ ひとり寝る夜の 明くる間は いかに久しき ものとかは知る
(右大将道綱母)
「貴方は浮気して他の女の家に泊まって様だけど、あなたが来ない部屋で、私がどれだけ長い夜を泣いて過ごしてるか知らないでしょ?」という、怒りMAXの皮肉ソング。
真夜中にやって来た夫。作者(妻)は、怒ってすぐには開けません。「あなたが遊んでいる間、一人ぼっちで待つ夜明けがどれほど永遠に感じられるか、教え込んでやる!」という、張り詰めた孤独と、キレ味抜群のコミカルな強がりが最高にスリリング!
現代なら、「『ごめん寝てた』って深夜3時に言い訳のメッセージを送ってきた彼氏を、ステータス『オンライン』でとっくに捕捉済みの彼女。何時間も未読無視のまま絶望の夜を過ごした怒りから、『その言い訳、全宇宙の通信ラグより長い30時間の反省室にぶち込んでから、じっくりシステムログを解析してあげるね(笑)』と、冷徹にブロックしている状態」。当時は「通い婚」が慣わしだったって! 現代はどお?
54 忘れじの 行く末までは かたければ 今日を限りの 命ともがな
(儀同三司母)
「『永遠に君を忘れない』そんな男の甘い言葉、続くわけないし! だったら、あなたが私を世界で一番愛してくれている今日この瞬間に、私の人生を強制終了させて!」という、愛が深すぎてヤバい領域に突入した一首。
未来のことは分からない。だからこそ、最高に愛されている「今」のまま時を止めたいという、儚くも鮮烈な美しさが描写。幸せすぎて逆に死を願ってしまうという、中高生の感情の暴走にも通じるエモさ。
現代なら、「あの子とVRデートで最高ロマンチックな両想いイベントをクリアした瞬間。『人間の脳なんてすぐ上書きされるから、この幸福度パラメーターが最大値の状態で私の生体データを永久セーブして、今すぐ全システムをシャットダウンして!』と、ログアウトボタンに手をかけている状態」。どお? この感覚。現代の君たち。
55 滝の音は 絶えて久しく なりぬれど 名こそ流れて なほ聞こえけれ
(大納言公任)
「この滝、とっくの昔に干からびてるのに、ネット上の『伝説の超絶景スポット』としての知名度だけは、今でも世界中に轟いてるの凄すぎ!」という、名声の不滅さを歌った一首。
かつては流れていた、嵯峨天皇ゆかりの滝。今は水が枯れていますが、その輝かしい歴史と評判だけは、まるで川が流れるように、今の時代まで語り継がれている。失われた風景への寂しさと、時代を超えて残る物語のカッコよさが同居した名作!
現代なら、「大昔にサービス終了してアクセス不可能な幻のゲーム。サーバーもデータも完全に消滅しているけど、当時のプレイヤーたちの間で『あの最終決戦は神だった』という伝説のログだけが、今のSNSのタイムラインに拡散され続けて語り継がれている状態」。ちなみに京都の大覚寺「名古曾の瀧」どすえ!
56 あらざらむ この世のほかの 思ひ出に 今ひとたびの 逢ふこともがな
(和泉式部)
「私はもうすぐ死んじゃうみたい。だから、あの世へ持っていく思い出として、最後にもう一度だけ、あなたに会いたい」という、究極に切なくて強烈なラストメッセージ。
病気で自分の死を予感した作者。悲しくて寂しいはずなのに、「死ぬ前にあなたとの最新の思い出を上書きしたい!」と願うパッションが半端ない。これをもらった男性は、絶対に秒で駆けつける!
現代なら、「アカウントの完全削除や、別次元の惑星への強制ワープが決定したユーザーが、『次のサーバーへ転生したあとも、ずっと思い出せるように、最後に1回だけVRロビーで直接アバターを合わせてバイバイしよ』と、最後のログイン通知を送っている状態」。作者は恋に生きた女性。もちろんVRじゃなくて!
57 めぐりあひて 見しやそれとも わかぬ間に 雲がくれにし 夜半の月かな
(紫 式部)
「今すれ違ったのって、もしかして昔の大親友? と、確認する間もなく、速攻で帰った! まるで雲のなかに秒で隠れちゃう夜中の月みたい!」という、一瞬のすれ違いを惜しむ歌。
せっかく久しぶりに巡り会えたのに、相手は用事があるのか「本当に本人?」と見分ける暇もないほど一瞬で去ってしまった。その余韻の寂しさを、夜空を爆速で駆けていく「夜半の月」に例えるセンスがスタイリッシュ。
現代なら、「銀河ハブ宇宙港の混雑した動く歩道で、何年も音信不通だった幼馴染のアバターと一瞬だけすれ違い、『あ!』と思った瞬間に相手がハイパースペース(超空間)の連絡船に搭乗してログアウト。『今のあいつだよね!?』とタイムラインを大慌てでスクロールしている状態」。作者はかの有名な古典ゲーム「ヒカルキミ」の原作者さ!
58 有馬山 猪名の笹原 風吹けば いでそよ人を 忘れやはする
(大弐三位)
「『僕のこと忘れたの?』なんて被害妄想のメッセージ送ってくんな! 風で笹の葉がそよぐみたいに、そうよ、あなたのほうが私のこと放置してたんでしょ!」という、キレ味抜群のツンデレソング。
「有馬山」の近くにある「猪名の笹原」に風が吹くと、葉が「そよ」と音を立てる。その音と、「いでそよ(さあ、そのことですよ)」という言葉をかけた天才的ユーモア。浮気を疑う男に対して、「私があなたを忘れるわけない」という本音を隠しつつ、可愛く怒ってみせる強がりがキュート。
現代なら、「何週間も未読無視してきた彼氏から、急に『もう俺のこと忘れた?』って的外れな連絡が届いた瞬間。『は?風で笹の葉がそよぐじゃないけど、あなたのログイン履歴が途絶えてたのが原因!私は1ミリも忘れてないわボケ!』と、スマートフォンの画面をタップしまくっている状態」。作者は「ヒカルキミ」原作者の娘さんだって。
59 やすらはで 寝なましものを さ夜ふけて かたぶくまでの 月を見しかな
(赤染衛門)
「あいつの言葉を期待しないでさっさと寝ちゃえばよかった! 夜が更けて、月が沈みかけるまでずっと待ちぼうけじゃん」という、怒りと切なさが入り混じった一首です。
「来るかも」という期待のせいで、眠ることができなかった作者。静まり返った夜空で月がゆっくりと傾いていく孤独な時間の経過が、リアルな虚しさとして胸に迫る。
現代なら、「『後で通話行く』っていう気になる子の言葉を信じて、ベッドに入らずに待っていたら、いつの間にか深夜3時。端末のバッテリー残量が数パーセントに傾いて警告ランプが点滅し始めるまで液晶を眺め続け、『絶対に来ないわ! バカ正直に待ってた時間を返せ!』と、枕に頭を沈める瞬間」。作者が姉妹のために歌った代作なんだって!
60 大江山 いく野の道の 遠ければ まだふみも見ず 天橋立
(小式部内侍)
「『どうせ母親のゴーストライターが書いてるんだろ?』って煽ってきた先輩を、その場で詠んだ即興神ラップで完全論破してやったわ!」という、超スカッとするクリティカルヒットの一首。
作者の母親は、超天才歌人の和泉式部。ある日、意地悪な先輩から「お母さんのいる丹後(天の橋立)から、もうアドバイスの『手紙(ふみ)』は届いた?笑」とからかわれた。すると彼女は秒で、「大江山を越えて『生野(いく野)』へと進む道のりは遠いので、まだ母からの手紙(ふみ)なんて見ていませんし、天の橋立の地を『踏み(ふみ)』分けたこともありません!」と、完璧なダジャレ(掛詞)を重ねて言い返し、先輩は何も言えずに逃げ出した。
現代なら、「コンテストで入賞した中学生が、いじわるな先輩から『どうせ裏で生成AIにプロンプトを打ってもらったんだろ?』とディスられた瞬間、その場で端末も使わずに超高速の生身の脳内処理だけで、先輩をディスりバックする神プログラムを即興コーディングして『お前ごときが俺のオリジナルデータにケチつけてんじゃねえよ!』と、完全シャットダウンした状態」。スカッとしただろぅ?
61 いにしへの 奈良の都の 八重桜 今日九重に にほひぬるかな
(伊勢大輔)
「昔の都で咲いていた伝説の桜が、最新の宮殿にお披露目! 今日、この場所で美しく輝いている!」という、一大イベントの成功を祝う華やかな一首。
かつての都「奈良」から、現在の天皇がいる平安宮中「九重」へ、見事な八重桜が届く。作者は新人の女房ですが、大ベテランたちから「お前がこの桜を褒める歌を詠め」と無茶振りされます。そこで、奈良の「八重(8)」と宮中の「九重(9)」をテンポよく繋ぎ、桜の美しさと天皇の栄華を称えて大絶賛された。
現代なら、「奇跡的に保存されていた地球のソメイヨシノの苗木が、何光年も離れた最新の巨大宇宙コロニーの首都庭園へ移植され、初開花。全住民が見守る中、新米広報AIが『人類の歴史が育てた奇跡のピンクが、今、最新のグラフィックで完全再現!』と、全銀河に向けてバズらせている状態」。若人よ、いじめを跳ね返せ!
62 夜をこめて 鳥のそら音は はかるとも よに逢坂の 関は許さじ
(清少納言)
「まだ夜中なのに、ニワトリの鳴き真似をして朝が来たと言い張っても騙されないから! 私の心のゲート(逢坂の関)は、そんな嘘っぱちじゃ絶対に開けません!」という、知性派ギャルの鉄壁シャットダウンソング。
むかし地球の中国に「ニワトリの鳴き真似で夜中に関所を開けさせた」という騙しテクニック(故事)がありました。深夜に帰ろうとした男友達が「ニワトリが鳴いたからもう朝だ、早くドア開けて」と嘘をついたのに対し、作者は「その手口、知ってるし。通用しないよ!」と、完全勝利。
現代なら、「深夜に『課題が終わったから通話(ディスコード)入れてよ』と嘘のスクショを送ってきた男子に対し、ログを秒で解析した女子が『その偽装データ、古典的なハッキング手口だから。私のプライベートサーバー(逢坂の関)は永久アクセス禁止!』と、完全に通信遮断している状態」。この作者も才女。男子は敵わないさ!
63 今はただ 思ひ絶えなむ とばかりを 人づてならで いふよしもがな
(左京大夫道雅)
「もう二度と会えないなら、最後に一言だけでいい。『君への想いをあきらめるよ』と、自分の声で直接君に伝えたいい!」ていう、引き裂かれた恋の絶望ソング。
作者は、あるお姫様と身分違いの恋に落ちますが、父親に激怒されて軟禁され、完全に連絡を断たれてしまいます。もうあきらめるしかないけれど、せめて最後だけは直接会いたいという、引き裂かれた孤独と深い哀愁が胸を締め付ける。
現代なら、「運営や親の強制アカウントロックによって、あの子へのメッセージ送信が完全ブロックされた状態。『もう二度と連絡しない』という最後のワンフレーズだけでいいから、仲介AIの自動テキストじゃなくて、生身の音声データで直接届けられたら……と、絶望している瞬間」。この2人、当時、絶対付き合っちゃダメな間柄だったらしい。
64 朝ぼらけ 宇治の川霧 たえだえに あらはれわたる 瀬々の網代木
(権中納言定頼)
「夜が明けて、川に立ち込めていた深い霧が少しずつ晴れてきた。霧の隙間から、魚を捕るための仕掛け(網代木)が姿を現していく光景、美しすぎる!」という、冬の朝の感動を歌った一首。
うっすら明るくなる「朝ぼらけ」の時刻。宇治川の白い霧が途切れ途切れ(たえだえ)になっていく中、水面に突き出た杭の列が立体的に浮かび上がる。静寂と冷気、そしてモノトーンの世界から少しずつ現実のディテールが見えてくる描写は、冬の「わび・さび」最高峰。
現代なら、「朝イチの未開惑星で、夜間に発生していた有毒ガスがテラフォーミング装置によってゆっくり中和され、霧の奥から眠っていた巨大な採掘プラントの骨組みが視界にローディングされていくような、寒々しくもどこか機能美を感じる瞬間」。世界の解像度が上がっていく瞬間って、理屈抜きにゾクゾク!
65 恨みわび ほさぬ袖だに あるものを 恋に朽ちなむ 名こそ惜しけれ
(相 模)
「冷たい貴方を恨みすぎて、毎日涙で袖が濡れっぱなし。でもそれ以上に、私が『彼女、くだらない男に騙されて自爆したらしいぜ』と、全宇宙の噂のネタにされるのが一番ムカつく!」という、プライド高きリベンジソング。
恋に破れてボロボロながら、作者は泣き寝入りはしません。「私の人生データが、あなたみたいな男のせいで『黒歴史』としてアーカイブに残るのが許せない」と、自分の名誉を心配する強気な姿勢がコミカルで格好いい一首。
現代なら、「浮気男にフラれて毎日泣いているのに、友達の前では『涙でスマホ画面がバグるのは百歩譲っていいとして、私が【地雷男に引っかかった痛い奴】としてタイムラインで永久にデジタルタトゥー化されるのだけはマジで草』と、怒りの方が勝っている状態」。歌合で勝利した歌。強気女は才もあり!
66 もろともに あはれと思へ 山桜 花よりほかに 知る人もなし
(前大僧正行尊)
「冬の山奥で、たった一人で咲いている山桜よ。私もお前と同じ孤独な身の上だから、お互いに『寂しいな』と共感し合おう」という、孤独な魂のワンネスソング。
作者は山にこもって厳しい修行をしている僧侶。誰も来ない険しい山の中で、ポツンと咲く美しい桜に出会います。「私にはお前しか友達がいないし、お前にも私しか理解者がいない」という究極のぼっち空間の中に、植物と本気でマブダチになろうとする、チャーミングな優しさが光る。
現代なら、「人類が絶滅したはずの未開の砂漠惑星を一人で探索中、岩の隙間に一輪だけ健気に咲いている美しいバイオ植物を発見。寂しさのあまり『お前もぼっちか。俺たちの孤独の同期レート、100%だな』と、話しかけて、ヘルメット越しに記念撮影している宇宙飛行士」。極限の孤独の中での出会い。君たちにはあるかもよ! 将来。
67 春の夜の 夢ばかりなる 手枕に かひなく立たむ 名こそ惜しけれ
(周防内侍)
「『眠いなら俺の腕を枕に』? そんな春の夜の夢みたいに一瞬で消えるチャラい優しさに乗っかったら、明日から学校で『あいつら付き合ってるぜ』って噂が広まって大迷惑!」という、防衛ソング。
夜遅くまで起きていて「枕がほしいな」と呟いた作者に、男がすかさず「僕の腕を」と口説いてきた。作者は「こんな事で噂を立てられたら名誉に関わるわ!」と、恋のトラップを華麗にスルー。周囲の視線を気にしつつも、大人のスマートなユーモアで切り抜けるやり取りが痛快。
現代なら、「深夜のドーム学園の居残り勉強中、『疲れたから充電したい』と溢した女子に、クラスのチャラ男が『じゃあ俺の個人サーバーの空き容量、貸すわ』と即ナンパ。それに対して女子が『そんな春の夜の夢みたいな一時的なデータ共有のせいで、明日から学園のタイムラインに熱愛疑惑のデジタルタトゥーが拡散されたらガチで嫌だから拒否!』と、すぐさまアクセスブロックしている状態」。ちなみに男の返歌がこれ「契りありて春の夜深き手枕をいかがかひなき夢になすべき」。どお? 現代人!
68 心にも あらでうき世に ながらへば 恋しかるべき 夜半の月かな
(三条院)
「自分の本意ではなく、この苦しい世界で生き延びてしまったとしたら、私はいつか、今夜見上げているこの美しい月を『あの頃は良かったな』って激しく恋しく思い出すんだろうな」という、未来への切ない予感を歌った一首です。
作者は政治的な争いに巻き込まれ、病気で目も悪くなり、天皇の位を無理やり退かされた悲劇のリーダー。絶望のどん底の中で、今夜だけは優しく輝いている「夜半の月」を見つめながら、これから訪れるであろうさらなる孤独と闘おうとしている。
現代なら、「理不尽な命令で辺境惑星の防衛任務に就かされ、機体もボロボロで通信も途絶。そんな過酷な状況下で、コックピットの窓から見える衛星の輝きだけが唯一の癒やしであり、『もし奇跡的に生き延びて故郷に帰れたとしても、俺はこの絶望の夜に見た月の美しさを、一生エモく思い出し続けるんだろうな』と、ログを記録している状態」。これ、俺かよ!
69 嵐吹く 三室の山の もみぢ葉は 龍田の川の 錦なりけり
(能因法師)
「三室山で激しい嵐が吹いて紅葉が全部散った! と思ったら、その葉っぱが川に流されて、下流の龍田川を真っ赤な最高級の織物にドレスアップさせてる!」という、大自然の華麗を歌った一首。
山で起きた「嵐」というトラブルが、川では「絶景」という最高のアートに化けている。目の前の破壊が、巡り巡って別の場所で圧倒的な美にアップデートされるという、地球の自然のダイナミズムを、スケール大に、かつどこかワクワクするような知的な視点で切り取っている。
現代なら、「気候制御ドームAで発生した大嵐によって、バイオ植物の赤い原始細胞が一斉に大気中へ飛散。それが風に乗ってセクターBの人工河川へと一斉に流入し、水面を極彩色の液体スクリーンみたいに染め上げ、住民たちが『エラーかと思ったら、川全体のグラフィックが神レベルにアプデされてる!』と、感動している状態」。自然が起こす偶然の奇跡には敵わないよ!
70 さびしさに 宿を立ち出でて ながむれば いづこも同じ 秋の夕暮れ
(良暹法師)
「部屋に一人でいるのが寂しすぎて、気分転換に外へ飛び出してみた。でも、外にあったのも、やっぱり同じように寂しい秋の夕暮れだった」という、逃げ場のない切なさを歌った一首。
作者は山奥で暮らす僧侶。孤独に耐えかねて外の景色に救いを求めるが、見渡す限りの夕闇が、自分の心の中の寂しさを更に増幅させる。どこへ行っても世界は切なさに満ちているという、諦めにも似た深い情緒が染み渡る。
現代なら、「辺境の開拓惑星のシェルター(宿)で、ホームシックの寂しさに耐えきれずエアロックを開けて外に出てみたけれど、目の前に広がっていたのは、やっぱり、オレンジ色から暗黒へとゆっくり沈んでいく物悲しい『秋モード』の夕暮れ。全宇宙どこにワープしても、寂しいときは寂しいんだなと、宇宙服のヘルメット越しに遠い星を見つめている状態」。現代人にも刺さらない? この感情。
71 夕されば 門田の稲葉 おとづれて 芦のまろやに 秋風ぞ吹く
(大納言経信)
「夕方、外の田んぼの稲穂がザワザワと音を立て、続いて、自分の粗末な小屋の隙間から秋風がヒュウと吹き抜けていった」という、音の立体感が素晴らしい一首。
「おとづれて」には、秋風が音を立てる(音連れ)という意味と、秋が訪問してくる(訪れ)という2趣がある。耳を澄ませていると、秋の気配が自分に近づいてくるリアルな臨場感に、思わずゾワッ!
現代なら、「ドーム農場セクターの環境維持装置が夕方モードに切り替わり、外のバイオ稲穂が波打つカサカサというノイズを外部センサーがキャッチ。数秒後、気密性の低い個人シェルターの換気スリットから、キーンと冷えたリアルな秋風のプログラムが吹き込んできて『一気に部屋が寒くなった(寂)』と、ブランケットを被る瞬間」。当時の秋は、人を不意にヒンヤリさせたらしい。
72 音に聞く 高師の浜の あだ波は かけじや袖の ぬれもこそすれ
(祐子内親王紀伊)
「噂に高い高師の浜の激しい波を浴びたくないように、君の『浮気者(あだ)』な誘いには乗りたくない。騙されて涙で着物の袖を濡らしたくないし!」という、ナンパ撃退ソング。
男性から「僕の涙で濡れた袖を見て!」と情熱的アプローチをされた作者。しかし相手は超有名なプレイボーイ。そこで作者は、激しい波(あだ波)と浮気心(徒波)を掛けた完璧な返しで、「そんな言葉に心(袖)をかけるつもりないし!」と、大人の余裕で完全シャットアウト。
現代なら、「全宇宙の恋愛タイムラインで『数々の女子のアカウントをバグらせてきた要注意チャラ男』として有名な先輩から、個人DMで熱烈な告白が届いた瞬間。女子が『先輩の甘い口説き文句に引っかかって、私のデータログを悲しみのバグで汚したくないので、最初からプロテクトしておきますね♡』と、即座にゴミ箱に放り込んでいる状態」。ちなみにこれ、男の恋歌に女が返歌する試合での歌。男の歌がこれ「人知れぬ思ひありその浦風に波のよるこそいはまほしけれ」。大昔って、楽しいことやってる!
73 高砂の 尾の上の桜 咲きにけり 外山の霞 立たずもあらなむ
(前中納言匡房)
「はるか遠くの山の頂上に、綺麗な桜が咲いたぞ! だからお願い、手前にある低い山の霧霞よ、どうか邪魔をしないで消えて!」と、絶景を待ち望むピュアな一首。
待ちに待った桜の開花が、手前の山に発生したモヤのせいで、隠れてしまいそうになります。「邪魔な霧さえなければ、完璧な絶景なのに……」というもどかしさの中に、自然への強い愛着が可愛らしく描写。
現代なら、「超高解像度のホログラムライブが配信スタートしたのに、ぼくの部屋のWi-Fiルーターがまさかの通信エラーを起こして、画面が低画質のモザイクだらけに。『今が一番大事なサビの演出なのに!お願いだから通信バグ、今すぐ消えてくれ!』と、端末を大きく振っている状態」。素直な感覚だから、君らも分かるだろ?
74 憂かりける 人を初瀬の 山おろしよ はげしかれとは 祈らぬものを
(源 俊頼朝臣)
「『あの子が私に優しくしてくれますように』って祈ったのに、なんで初瀬山の強風(山おろし)みたく、激しく冷たくなっちゃうわけ?」という、神頼み大失敗の絶望ソング。
作者は冷たい恋人の心がコチラを向くよう、有名な長谷寺(初瀬)にこもってお祈りしました。しかし、恋人の態度は優しくなるどころか、まるで山から吹き降ろす超強力なブリザードのように、より冷酷で激しいものにアップデート。理不尽な状況への悲痛な叫びが、コミカル哀愁。
現代なら、「恋愛サポートAIに課金して『気になる相手との親愛度パラメーターを上げてください』とバグ修正のプロンプトを入力したのに、プログラムが謎の暴走。翌朝、相手からのメッセージの文面がマイナス100度レベルの冷徹な定型文に変わっていて……と、システム画面の前で頭を抱えている状態」という感じ。ところで「神仏頼み」って現代人、分かる?
75 契りおきし させもが露を 命にて あはれ今年の 秋もいぬめり
(藤原基俊)
「『次のチャンスは絶対に君を推薦するよ』って言ってくれた偉い人の言葉を信じていたのに、結局何も起きないまま、今年の秋も虚しく過ぎ去っていく」という、悲しき約束スルーの歌。
作者は、自分の息子の出世をある大物(藤原忠通)に頼み込み、「任せとけ」と約束(契り)されていました。しかし、秋の除目(人事異動のシーズン)になっても音沙汰なし。恵みの雨をもたらす植物「させも」に降りる「露」のような、かすかな希望を頼りに待っていたのに、約束を破られた大人の悲哀。
現代なら、「先輩から『次の限定イベントの招待枠、お前に譲るからな』とメッセージをもらって待っていたのに、イベントの開催期間が爆速終了。タイムラインに『イベント終了!また来年!』という運営通知が虚しく流れてきて、『完全に社交辞令だった』と自分の端末を眺めて呆然としている状態」。ああ人事!
76 わたの原 こぎ出でて見れば ひさかたの 雲居にまがふ 沖つ白波
(法性寺入道 前関白太政大臣)
「船で大海原へ出てみたら、遠く水平線の彼方で、巻き上がる真っ白な波が空の雲と完全に混ざり合って、次元の壁がバグっちゃってるような大絶景だ!」という、壮大スケールの映像美ソング。
作者は当時の政界トップ。自身の小さなしがらみから離れ、どこまでも広がる広大な海の景色に感動しています。海と空、波と雲の境界線が融け合うダイナミックな光景が、突き抜けるような爽快感で描写。
現代なら、「探査船で未知のガス惑星のリングに突入した瞬間、超高速で回転する純白の氷粒子が惑星上空の超巨大な大気雲と完全に一体化。コックピットの全天周囲モニターが真っ白な光の幾何学模様で埋め尽くされ、『上も下も前も後ろも全部白!宇宙と惑星の境界がバグり溶けてやがる!』とパイロットが鳥肌を立てている状態」。ちなみに作者、前の75番歌の大物。
77 瀬をはやみ 岩にせかるる 滝川の われても末に あはむとぞ思ふ
(崇徳院)
「岩で川の流れが二つに引き裂かれても、下流で必ず一つの川に戻る。同じように、僕たちを阻む障害があって離れ離れになったとしても、未来には、絶対また巡り会おう!」という、運命の絆を信じるに熱い一首。
川の流れ(瀬)が速いために、突き出た岩に激しくせき止められる水流。作者はのちに歴史的な大乱に巻き込まれる悲劇の天皇ですが、引き裂かれる激しい孤独のなかに、「絶対に離れない」という一途でコミカルなほど強固な情熱を秘めている。
現代なら、「クラス替えやアカウントのサーバー移転によって、親友や好きな子とデータ通信のタイムラインが二つに強制分岐されてしまった状態。それでも『数年後、絶対に再同期して合流するからな!』と熱いメッセージを送り合っている瞬間」。熱男もいた!
78 淡路島 かよふ千鳥の 鳴く声に 幾夜寝ざめぬ 須磨の関守
(源 兼昌)
「淡路島から飛んでくる千鳥の鳴き声のせいで、今夜もまた目が覚めた。須磨の関所を守る警備員は、どれだけ多くの夜をこんな切ない気分で過ごしているのか」という、極寒の夜の哀愁を描いた一首。
冬の海を渡る鳥の、キーキーという物悲しい声。作者はその声に、寒さの中で孤独に任務をこなす警備員の寂しさを重ね合わせています。夜中に何度も目を覚ましてしまうもどかしさが、リアルな冬の質感とともに描写。
現代なら、「マイナス200度の氷雪惑星の警備基地で、深夜に外部センサーが謎の微弱なノイズをキャッチ。そのたびに『侵入者か?』と脳内アラートが鳴り響いて目が覚め、結局ただの宇宙ゴミの摩擦音だと分かって『また誤検知か、睡眠サイクル乱されまくりで超ブルーだわ』と毛布にくるまる防衛隊員」。えっ「ヒカルキミ」が須磨に流れた?
79 秋風に たなびく雲の 絶え間より もれ出づる月の 影のさやけさ
(左京大夫顕輔)
「秋風で流れる雲の隙間から、信じられないくらいクリアで眩しい月の光が差し込んできた! この美しさ!」という、光のまばゆさに感動している一首。
夜空の雲が風に裂かれ、その絶え間から月光が地上を射抜く。ただの明るさではなく、周囲の暗闇があるからこそ引き立つ、澄み切った一瞬の美の極み。
現代なら、「砂嵐が吹き荒れる未開惑星の夜、防護服のメインバイザーの視界がノイズだらけの中、一瞬だけ大気の雲が切れて、超巨大な衛星の純光が視界いっぱいに神画質でローディングされ、『世界のグラフィックが美しすぎて息止まる!』とセンサーをオフにして見惚れている状態」。「月」見てみたいでしょ? 現代人!
80 長からむ 心も知らず 黒髪の 乱れてけさは 物をこそ思へ
(待賢門院堀河)
「貴方の『一生愛する』なんて言葉、どこまで本当か分かんない! 起きたら髪の毛がグチャグチャに乱れてるみたいに、私の頭の処理回路も今朝は完全にパニック!」という、恋の不安マックス歌。
初めて一緒に夜を明かした翌朝のシチュエーション。相手の愛がこの先「長く」続くかは分からないという不安と、自分の「長い黒髪」の乱れを重ねている。幸せなはずなのに、未来を考えて急に切なくなる、乙女で不器用な「わび・さび」漂う一首。
現代なら、「あの子と初めてVRのプライベートドームで徹夜のペアワークを終えた翌朝。相手への執着が急上昇して、ログアウトした瞬間に『あいつ、明日のログイン時にも同じくらい私に優しくしてくれるのかな』と不安になり、寝癖でグチャグチャなアバターのグラフィックのまま、ベッドの上で悶々と悩んでいる状態」。現代人、大昔の女の長い長ぁい黒髪、見てみたくない? 艶やかどすえ!
81 ほととぎす 鳴きつる方を ながむれば ただありあけの 月ぞ残れる
(後徳大寺左大臣)
「キョキョッ!と夜明けの空にほととぎすが鋭く鳴いた。驚いてパッとそっちを見上げたら、鳥の姿はもうなく、そこにはただ、白々と光る朝の月浮かんでいるだけだった」という、美しい一首。
当時、夏の鳥「ほととぎす」の最初の一声を聴くのは超ステータス。作者は徹夜して待ち構えていた。声の主を探して視線を動かした瞬間の、音のフェードアウトと、視界に残る月の「静」の対比。この引き算の美学こそ、日本の「わび・さび」の真骨頂。
現代なら、「夜明け前の格納庫で、大好きな新型ステルス戦闘機がキーンと爆音を立てて爆速でスクランブル発進。その音に驚いて見上げたときには機体はすでに超空間へワープしており、ただホログラムの残光だけが空間に寂しく明滅している状態」。一瞬の音響後に訪れる圧倒的な静けさ、ゾクゾクだ!
82 思ひわび さても命は あるものを 憂きにたへぬは 涙なりけり
(道因法師)
「フラれて悲しすぎて死にそうなのに、私の生命維持システムはなぜかピンピン動いてる。でも、このつらさに脳の処理が耐えきれなくて、目から涙だけが無限にオーバーフローして止まらないんだけど!」という、失恋の限界突破ソング。
作者は恋の悩みに疲れ果て、絶望しています。これほどつらいのに自分の「命」だけは意外とタフに残っているという皮肉と、それなのに感情のコントロールを失って涙だけがボロボロ溢れてしまう様子を、どこか客観的に見つめる切なさが絶妙にマッチ。
現代なら、「意中の相手からブロックされてメンタル崩壊。防護服のバイタルデータは『異常なし』を示しているのに、感情センサーのバグで目から涙の洗浄液だけが噴出し、ヘルメットの内側が完全に水没して『悲しさより窒息の危機なんだが!』と、大パニックになっている状態」。作者の僧侶は90歳でも歌合に出席したらしいよ!
83 世の中よ 道こそなけれ 思ひ入る 山の奥にも 鹿ぞ鳴くなる
(皇太后宮大夫俊成)
「この世はつらいことばかり。すべてを捨てて誰もいない山奥に引きこもったのに、そこでも鹿が寂しそうに鳴いている。結局どこへ逃げても、生きる苦しみから逃れる事はできないんだな」という、究極の諦めと哀愁。
世間の人間関係に疲れ果て、思い詰めて自然の奥深くにエスケープした作者。しかし、そこで耳にしたのは自分と同じように孤独を抱えて鳴く鹿の声。
現代なら、「クラスの人間関係に絶望して、ユーザーが一人もいないはずの未開の過疎サーバーにアカウントを移転。これで平穏に暮らせると思った瞬間、隣のセクターで旧型の作業用ロボットが、エラーコードを吐きながら寂しくビープ音を鳴らしているのを見つけて、『全宇宙どこにログインしても、孤独からはログアウトできない』とため息の瞬間」。逃げ場のない現実をそっと受け入れる、静かで深い世界観!
84 ながらへば またこのごろや しのばれむ 憂しと見し世ぞ 今は恋しき
(藤原清輔朝臣)
「いま学校生活がキツすぎて最悪だけど、もしこの先長生きできたら、いつかこの地獄のような日々も『あの頃は青かったな』って懐かしく思い出すのかな。昔『もう人生終わった』って絶望してた黒歴史が、今となっては愛おしい思い出データになってるんだもん!」という、超ポジティブな視点を持つ人生の歌。
過去の苦しみが、時間の経過とともに美しい輝きを帯びる。そんな人生の不思議を冷静に分析。今がどんなにつらくても、未来の自分へのプレゼントになるという、若者の心に優しく寄り添う名作。
現代なら、「中間テストの赤点と失恋が重なって『全システム機能停止したい』と病んでいた暗黒のライフログ。でも成人後にそのアーカイブを開くと、なぜかめちゃくちゃエモく見えて、『あぁ、きっと今仕事で直面してるこの大ピンチも、10年後の宇宙旅行のときには酒の肴になってるんだろうな』とサイバーグラス越しに微笑んでいる状態」。現代人だって、分かるだろう?
85 夜もすがら 物思ふころは 明けやらで 閨のひまさへ つれなかりけり
(俊恵法師)
「一晩中、君のことで悩み倒しているのに、全然夜が明けない! 寝室(閨)の窓のわずかな隙間から差し込む光すら、なかなか朝を連れてこない。冷たいじゃん!」という、夜の長さに悶絶する歌。
心が苦しいときほど、時間が進むのが遅く感じる。作者は、部屋の隙間から外の様子をうかがいながら、「まだ夜明けプログラムは起動しないのか」と絶望しています。静まり返った暗闇のなかで、窓の隙間という小さなディテールにまで恨みをぶつけてしまう、孤独の極致をリアルに描いた一首。
現代なら、「フラれたショックで一睡もできず、タイムラインをループ再生するだけの暗黒の夜。スマート寝室の遮光スリットの隙間から『朝日のローディング』がいつまで経っても始まらず、『環境制御システム、1秒の処理速度バグってないか?私をいつまでこの孤独な暗闇に隔離するつもりだ!』とベッドの中で液晶画面を睨みつけている状態」。お題「恋の歌」での僧侶の歌どすえ!
86 嘆けとて 月やは物を 思はする かこち顔なる わが涙かな
(西行法師)
「月が私に『悲しめ』って命令してるわけじゃないのに、なんで月を見上げるとこんなに涙が出ちゃう? あたかも月のせいで泣いてるみたいになってる私の涙、マジで不条理!」という、逆ギレソング。
本当は自分の個人的な失恋や孤独のせいで泣いているのに、夜空に浮かぶあまりに美しい月の光のせいにしている作者。自分の不器用な感情の暴走を照れくさそうに見つめる、コミカルな自虐が効いた名作。
現代のなら、「気になる子へのメッセージが未読無視されて泣きそうな夜、スマートバイザーのバグで視界に巨大な月面ホログラムが120%の輝度で強制ローディング。涙で視界が歪むのを『俺のメンタルのせいじゃなく、この端末の超高解像度の月光エフェクトが眩しすぎて目に染みてるだけだ!』とAIに言い訳している状態」。涙の理由を何かのせいにしたくなるの、思春期あるあるですよね。まこと素直な、あるあるな歌だろ?
87 村雨の 露もまだひぬ まきの葉に 霧立ちのぼる 秋の夕暮れ
(寂蓮法師)
「さっきの激しいにわか雨(村雨)のしずくが、まだ杉や檜の葉っぱ(まきの葉)で乾ききっていない。そこに、今度は静かに白い霧が立ちのぼっていく。なんて奥深くて静かな秋の夕暮れなんだろう」という、美しい自然のグラデーションを歌った一首。
派手な紅葉の赤ではなく、あえて色が変わらない常緑樹(まき)の緑と、白い霧という「無彩色」の組み合わせがスタイリッシュ。水の形態が雨から露、そして霧へと変化していく静寂美。
現代なら、「気候シミュレーターの局地的な『豪雨プログラム』が終了した直後。バイオニクス樹木の葉に残った水滴が乾くより早く、ドームの冷却ファンから白い冷気が幻想的に立ちのぼり、世界の解像度が一瞬でモノトーンの神グラフィックへと切り替わって、あまりの情緒に言葉を失っている瞬間」。この作者も僧侶だけど、元は貴族や武士で出家した僧侶、多いんだぜぇ! そうそう、坊主めくりゲームも是非!
88 難波江の 芦のかりねの ひとよゆゑ みをつくしてや 恋ひわたるべき
(皇嘉門院別当)
「難波の海辺で刈った芦の『根のひと節』じゃないけれど、たった『一晩』お試しで付き合っただけなのに、どうして私は身を滅ぼす(みをつくし)ほど、この先ずっと君に恋し続けなきゃいけないの!?」という、人生最大の計算違いを歌った一首。
旅先での「仮寝(かりね)」のひと晩(ひとよ)と、芦の「刈り根」のひと節(ひとよ)を掛けた超絶技巧。さらに、海辺の道標「みおつくし(澪標)」に「身を尽くす」を隠し持たせている。軽い気持ちだったはずが、気づけば底なしの沼にハマっている不条理を、叫ぶように伝えている。
現代なら、「『一晩だけ』の約束で、お試しの限定VRワールドに体験ログインしただけなのに、ログアウトした瞬間に脳内チップがバグ(みをつくし)。それ以来、あの男の幻影が頭から消えなくなり、『ただの体験版のデータなのに、メインシステム全体が完全にジャックされてる!』と頭を抱えて悶絶している状態」。あの一瞬が後の全てを支配……、恐ろし!
89 玉の緒よ 絶えなば絶えね ながらへば 忍ぶることの 弱りもぞする
(式子内親王)
「私の命の糸(玉の緒)よ、切れるなら今すぐプツンと切れてしまえ! これ以上生き延びてしまったら、胸の奥に隠し通してきたこの恋心が、ついにコントロールを失って周りにバレちゃうから!」という、命がけの秘密の恋の歌。
作者は、絶対に人に知られてはいけない身分にいる女性。誰にも言えない孤独のあまり、自分の命よりも「秘密を守ること」を優先しようとする、張り詰めたパッションが凄まじい。
現代なら、「絶対に知られてはいけない片思いのログ。もしこれ以上私の脳内システムが稼働し続けたら、隠しフォルダのプロテクトが解除されてクラスのタイムラインに全データが流出しちゃう!『だったらその前に、私の端末のメイン基板ごと今すぐ完全自己崩壊して消滅せよ!』と、絶望のあまり強制シャットダウンボタンを握りしめている状態」。絶対的な制限、だからこそ超えるは命がけ!
90 見せばやな 雄島のあまの 袖だにも ぬれにぞぬれし 色はかはらず
(殷富門院大夫)
「ねえ、貴方に私のこの着物の袖を見せてあげたいわ! 毎日波をかぶっている雄島の漁師の袖だって濡れっぱなしだけど、色は変わらない。でも私の袖はね、貴方のせいで血の涙を流しすぎて、真っ赤に変色しちゃってるんだけど!」という、恨み骨髄のホラー系失恋ソング。
ただ悲しくて泣いているのではない。「私の涙は血の色だよ」と、男の裏切りに対する怒りを、鮮烈なビジュアルで突きつける。おどろおどろしいのに、どこか演劇的でコミカルなインパクトを残す、情熱的な一首。
現代なら、「浮気した彼氏のせいで毎日泣きすぎた女子。防護服のバイザーに溜まった涙を指差して、『過酷な液体惑星の作業員のスーツだって浸水で変色なんかしない。なのに私の涙はストレスのバグで真っ赤な警告カラー)に染まってるんだけど!これ、全宇宙のタイムラインに拡散してあげようか?(笑)』と、冷徹に端末を向けている状態」。ホラー女子の微笑!
91 きりぎりす 鳴くや霜夜の さむしろに 衣かたしき ひとりかも寝む
(後京極摂政 前太政大臣)
凍りつくような冬の夜、冷え切ったむしろの上で、自分の衣服の片袖だけを敷いて寂しく一人で寝るのだろうか、という、究極の「ぼっち」を歌った超絶切ない冬の歌。
大昔の地球では、コオロギ(きりぎりす)の鳴き声が、寒さと孤独感をさらに引き立てるBGM。
現代なら、「マイナス200度の氷の惑星で、暖房が故障したコックピットに一人取り残され、薄いエマージェンシーシートを体に巻きつけて寝るしかない状況」。しかもWi-Fiが繋がらなくて、推しの配信も見られずに外の宇宙風の音だけを聴いている、絶望的な夜のイメージ。
「寒し」と「むしろ」は変則の掛詞。寒さと静寂、孤独が織りなす「わび・さび」!
92 わが袖は 潮干に見えぬ 沖の石の 人こそ知らね かわく間もなし
(二条院讃岐)
引き潮の時でさえ海に沈んだままで見えない「沖の石」のように、だれにも気づかれないけれど、わたしの袖は恋の涙でずっと乾く暇がありません……という、切なすぎる片思いの歌。昔の地球の人は、あふれる涙を「袖が濡れる」と表現。
現代なら、「水の惑星のディープ・オーシャンに沈んだ探査ロボットみたいに、だれにも見つからない場所で、毎日冷却水が漏れまくって回路がショート寸前という状況」大好きなあの子は、ぼくがこんなに泣いているなんて1ミリも気づいてない。
「沖の石」はエモい! 作者は当時、「沖の石の讃岐」と讃えられたそうな……。
93 世の中は 常にもがもな 渚こぐ あまの小舟の 綱手かなしも
(鎌倉右大臣)
「この平和な世界がずーっと変わらずに続いてほしいなぁ。水際を漕いでいく漁師の小さな舟を、陸からロープで引っ張っている、そんな何気ない日常の景色が本当に愛おしい」という、しみじみとした平和への願いを歌ったもの。
作者は昔の地球で最高権力者(将軍)になった人ですが、暗殺されるかもしれないというハラハラした毎日のなかで、この一瞬の「普通」に激しく心を打たれた。
現代なら、「いつ小惑星が衝突するか分からないスリリングな銀河生活のなかで、のどかな農業惑星のローカル列車が、のんびり走っているのを作業着のまま眺めている瞬間。ああ、この平和がずっと続けばいいのになぁ」。ああ無常!
94 み吉野の 山の秋風 さ夜ふけて ふるさと寒く 衣打つなり
(参議雅経)
吉野の山から冷たい秋の風が吹き下ろす夜更け、かつて都だった古い里に寒々しさが満ちていく。そんななか、どこからかトントンと衣を叩いて柔らかくする「きぬた」の音が寂しく響き渡っているという、晩秋の冷気と寂しさが五感に染みる歌。
昔の地球では、秋になると冬支度として着物を木槌(きぬた)で叩く音が、夜の静けさを引き立てる風物詩。
現代なら、「テラフォーミング計画が途中で中止され、すっかり寂れてしまったゴースト・タウンの惑星。夜になって急激に気温が下がるなか、風に揺られた古いドームの金属シャッターがバタン、バタンと切なく鳴り響いているのを、一人ぼっちで聴いている時間」。
かつての賑わいが消え去った「ふるさと」の寒さと、闇に響くリズミカルな音。圧倒的な孤独感と静けさに宿る「わび・さび」が、エモくて胸に刺さる!
95 おほけなく うき世の民に おほふかな わが立つ杣に 墨染の袖
(前大僧正慈円)
「身の程知らずかもしれないけれど、辛いことばかりの世の中で苦しむすべての人々を救いたい。比叡山(わが立つ杣)で仏道に生きる、このわたしの黒い衣の袖でね」という、とてつもなくスケールが大きくて優しい愛を誓った歌。
作者は仏教界のトップですが、戦争や天災が相次ぐリアル地獄のような時代を目の当たりにして、「みんなを救ってみせる!」と熱く心に誓いました。
現代なら、「宇宙戦争や未知のウイルス、巨大彗星の衝突で滅びかけている絶望的な銀河系。そんななか、一人の若き熱血スピリチュアルドクターが『どれだけ無茶だと言われても、この最新のステルス医療宇宙船で全宇宙の全生命体を救うシールドを展開してやるぜ!』と宇宙の真ん中で叫んでいる様」。比叡山で仏道修行の作者は、開祖伝教大師(最澄)の歌を本歌として踏まえる(阿耨多羅三藐三菩提の仏たちわが立つ杣に冥加あらせたまへ)。
96 花さそふ 嵐の庭の 雪ならで ふりゆくものは わが身なりけり
(入道前太政大臣)
「嵐が庭の桜を誘って、まるで雪のように散らせている。しかし、本当に『ふり(降り/古り)』てボロボロ衰えていくのは、散る花びらじゃなくて、年老いていくこの自分自身なんだなぁ」という歌。散る花の美しさに、自分の「老い」の寂しさをユーモラスかつ切なく重ね合わせる。
現代なら、「最新型だと思って買ったAI搭載の愛車が、宇宙の砂嵐で塗装ハゲハゲのオンボロになっていくのを見てショックを受けていたら、ふとバックミラーに映った自分自身の生体パーツ(サイボーグ化していない生身の体)が、それ以上にガタがきていて超へこんだ瞬間。「フリ(降る・古る)」のダジャレ掛けを効かせてコミカルながら、衰えゆく切なさを受け入れる大人の「わび・さび」が、心にじわじわ染み渡る名作!
97 来ぬ人を まつほの浦の 夕なぎに 焼くや藻塩の 身もこがれつつ
(権中納言定家)
「待っても待っても来てくれないあの人を想い、夕暮れの静かな海辺で、海藻をじっくり焼いて塩を作る『藻塩』のように、わたしの心も体も激しく恋の炎で焦げ焦げに燃え上がっています」という歌。静かな夕焼け空(夕なぎ)とは対照的に、胸の内側だけがドカンと爆発寸前に焦げ付いている。このギャップがたまらなく切なくて、エモい!
現代なら、「メッセージの『既読』がつかない大好きなあの人を待ち続けて3時間が経過。夕暮れの惑星基地の窓辺で、完全にオーバーヒートして黒煙を上げているおんぼろの核融合発電機みたいに、ぼくの脳内回路も恋のストレスでドロドロに溶けそ!」という状態。作者の藤原定家は、この百人一首をセレクトした超偉い天才プロデューサー。恋のじりじりとした苦しさを、塩作りの熱い煙に例えて表現。掛詞、序詞、縁語バンバンさ!
98 風そよぐ ならの小川の 夕暮れは みそぎぞ夏の しるしなりける
(従二位家隆)
「風がサラサラと楢(なら)の木の葉を揺らしている。この『ならの小川』の夕暮れは、すっかり涼しくて秋みたいだけど、川辺で行われている『みそぎ(お祓い行事)』の様子だけが、かろうじて今が夏であることの証拠なんだなぁ」という歌。暦の上ではもうすぐ秋。一瞬の涼しさと、夏の終わりの切なさを見事にキャッチ。
現代なら、「テラフォーミングが完璧すぎて、24時間年中無休で秋のような超快適マイナスイオンが流れる最新のドーム型リゾート惑星。だけど、広場の神社ホログラムで行われている『夏祭り・大祓キャンペーン』の電子看板を見て、あ、大昔の地球の暦では今がギリギリ夏なんだ、と気づく瞬間」。季節の変わり目、それがそもそも「わび・さび」だったんだけど、現代じゃ分からないかも……。
99 人もをし 人も恨めし あぢきなく 世を思ふゆゑに 物思ふ身は
(後鳥羽院)
「人間って愛おしくて大好きだなあと思う日もあれば、裏切られてめちゃくちゃ憎らしいと思う日もある。この思い通りにならない不条理な世界のことを真面目に考えてしまうからこそ、私はこんなに悩んでしまうのだろうか」という超真面目な歌。作者は昔の地球で、政治の権力争いに敗れて遠い島へ流されてしまった元皇帝(上皇)。人間関係のドロドロに傷つき、孤独のなかで深く人間という存在を見つめ直す。
現代なら、「宇宙SNSのフォロワーたちからの『いいね!』に飛び上がるほど元気をもらう日もあれば、迷惑コメントに傷ついて全員ブロックしたくなる日もある。こんな風にネット社会の人間関係に振り回されてメンタルをすり減らしているのは、ぼくが真面目に生きすぎているからなのかな……と、夜のコクピットで一人タイムラインを眺めて病んでいる」という時間。
現代人だってよく分かるだろ?この「悩み」。元皇帝みたいに泥臭い感覚で生きてくれ!
100 ももしきや 古き軒端の しのぶにも なほあまりある 昔なりけり
(順徳院)
「宮殿(ももしき)の古びた軒端に生えている『しのぶ草』を見るにつけても、いくらしのんでも、しのび尽くせないほど素晴らしかったのは、あの大全盛期だった昔の時代なんだなぁ……」というノスタル首。百人一首のラストを飾るこの歌の作者は、99番の後鳥羽院の息子。衰退していく自分の王朝の運命を悲しみ、過去の輝かしい栄光を激しく恋しがる。
現代なら、「かつて全銀河の覇権を握り、超ハイテク都市として栄華を極めた巨大スペースコロニー。いまやエネルギーが枯渇し、ツタや雑草がメカの隙間からボロボロに生い茂る廃墟となったその中心で、昔のホログラム映像を見ながら『あのワープ航法が発明された宇宙開拓黄金期は、本当に最高に輝いていたな……』としみじみ号泣している状況」。植物の「しのぶ草」と、過去を「偲ぶ」のダジャレ(掛詞)が胸を締め付ける。1番の歌で「未来への開拓」から始まった百人一首が、100番の歌で「過ぎ去った黄金期へのノスタルジー」で幕を閉じる。この壮大な歴史のサイクルと、滅びゆくものの美しさ(わび・さび)が、最後に最大級でエモいかも……。
時が経ち・・・
(あった、良かった……)
現在は115歳となったヒカルが、自宅を整理中、あの百人一首の本を見つけた。
(よし、これで、持って行ける!)
この100年の間、ヒカルはその本を時々手にして、歌を何首か見たりはしたが、しばらくしては本を見失ってしまい、そんな事を繰り返してきた。気にはなっていたが、所在の分からなかったA社の百人一首解説本。それが見つかってヒカルは小躍りした。100年前のフジワラ先生の顔も、ハッキリと思い出せる。(テストで高得点を叩き出して、先生に褒められたなぁ。かるたも坊主めくりも楽しかった。先生は現在、どうなさっているだろうか)
ヒカルの星の住民は全員、来年には、別の惑星に移住する予定だ。現在暮らしている惑星は人類の生命維持システムの老朽化が近づき、そこでは、やがて、人間は生きられなくなってしまうという……。
終わり
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内容に関するアピール
(私自身を含めた)SF、百人一首に縁遠い人向けに書きました。
小説でなく解説本の類だ、そもそもAIの文章だ、等々と一蹴されてしまう事も想定されるので、UP提出については揺れ悩みましたが、提出いたします。UPによって、私では考えの及ばない何らかの支障等がございましたら、即刻に抹消いただいてOKです(その場合において、私に異存はありません)
参考文献は、文英堂の小倉百人一首(くわしい解説・設問付き)1982年発行と、AI(グーグル検索で勝手に出てくるAI)です。百人一首の1番~100番の解釈文は概ね、AIが8割、私が2割です。こんな状況なので提出を悩みました。
最終課題については、結局は時間を失くし、提出は諦めようとしていたところ、百人一首を思いつき、梗概作に変えて、400字×100の4万字作を試みました。AIに歌を1首ずつ解釈してもらい、1首ずつ修正加筆編集などしました。歌と作者は、上記参考文献の表記を引用しています。これら一連の作業を7月最終週に行いました。AI使用の作業とはいえ、不慣れもあってか、編集には1週間まるまる費やしてしまい、8月が心配です。窮鼠のAI使用突貫作ですが、よろしくお願いします。
「SF、百人一首に縁遠い人向け」というのが、本作の(今回私の)最優先のコンセプトです。
さて、ゲンロン様、大森様、講師様ほか、講座の関係各位には1年間お世話になり、誠に有難うございました。講座は、当初の想定以上に高いハードルでしたが、自分なりに楽しめました。あつく御礼申し上げます(リモート壁打ち有難うございました。最終実作には生かせませんでしたが、後日必ず・・・)。
今後も、自分の可能な範囲で創作活動を続けていこうと考えています(勿論、AI8割は有り得ません)。1年前、迷いましたが思い切って申し込んで、本当に良かったです。皆さん有難うございました。
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