夜明けをつげる鳥、そしてアメリカの夜

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夜明けをつげる鳥、そしてアメリカの夜

国境の森から歌がきこえる。

ビリーはその歌を聴いている。

♪いとぅーし馬しっしょ

 あぁつぅりはろるんで

 ふぃーさっついぇー

森の死人たちが歌っているのだ。

ビリーは、しびれる腕をさすりながらバルコニーの椅子に身を沈めた。無造作にたばねた黒髪が肩のあたりに広がる。まだ動きたくない…でも…そろそろ店をあけなくては。

このアリゾナの田舎町は…マザー・ロード州道AZ80と、メキシコに流れこむホワイト・ウォーター・ドロー(砂漠川)と…そしてあの国境の森にかこまれている。

森には朽ちたフェンスや、ノルマンディ・バリアー、19世紀の方尖塔の残骸がある。それは、さまざまな歴史がのこした境界標であり、アメリカとメキシコを何度もへだててきた物だったが、ながく放置され、蔦や茂みに埋もれかけていた。

ビリーはため息をつく。

この町を…”いにしえの岸辺”パサド・リパリアと名づけたのは誰だろう。

♪ゆぅーやっくぃに揺いてよぅ

 とぅーうし馬しっしょー

死人たちの歌はつづいている。

ビリーは目をとじる。夕暮れになると、かれらはあんな風に歌いだす。

ビリーはあの森にいるものたちを「屍者」とよぶ。もうなにも話せなくなっていても、かつては友人だった人たちを。

…みんなあのとき死んで…冷たい土の中でなにかに変わり、そしてよみがえったのだ。

歌がおわると屍者たちは森をでて、魂がぬけたような姿で町を徘徊する。でもホラー映画の怪物のようにビリーを襲うことはない。そして夜が明けると暗がりに消えていく。それを淡々とくり返しているのだ。

あれは”ゾンビ”などではない。別のなにかだとビリーは思う。

かつての日々の…何もかもが恋しくて、胸がしめつけられる。

森の別のところから新しい歌がはじまる。それが輪唱のように連なりはじめている。

♪きぃーていぃしろ野ぅにないあとぅり、れっしわあしる

 

その呼びかけに、またべつの歌がこたえる。次々とあふれでる無数の歌声。それは国境の樹々をわたり、さいごは不思議な共鳴と、森を震わせるうねりになる。

北西にはミュールの山々が。気候は様変わりしつつあり、かつてない雨が降りつづいている。その水は山をくだり、カッパー・クイーン鉱山の斜面から、ふもとのビスビーへ。そしてこの低地に広がっている。乾季に枯れるはずのホワイト・ウォーター・ドローは、1年中水をたたえ、山頂からの気流は荒々しい雲となり、ニューメキシコの方へかけぬけていく。

山頂の雲間から淡い月が。

ビリーはようやくたちあがり、ゆっくりと夕刻の暗がりをすすんでいく。奇妙なかたちの木造建築。その3階バルコニーから古びたソファーの前をぬけ、壁に手をあてながら軋むステップを1段ずつふみしめて階下へ。

灯りはまだつけない。

埃と乾いた木のにおい。

2階の映写室の脇をとおり、1階のビデオレンタルショップを見おろす踊り場へ。下の売り場は閉ざされ、夜の沼のような不透明な闇にしずんでいる。

古い気配がビリーに語りかける。

くすんだプラスチックケース…塩化ビニール製の恐竜たち、壁に染みこんだタバコ…そして甘ったるいコーラ液と、チョコレートやポップコーンの匂い…。

見えなくても何がどこにあるのか、よく分かっている。壁にびっしりと貼られたポスター、棚のビデオやディスク、古いフィルムのタイトル…どれも並びのまま、タイトルをソラでいえる。コーナーにはコミックのフィギュアが並び、壁際にカウンターとレジが。

この店の2階の”シアター”という名の小さな映写室によく来ていた連中も、いまは森のなかだ。かれらがまだ人間だったころ、よくポップコーンとコーラを手に階段をあがってきた。口笛をふき、手をたたき、足を踏みならしながら、ビリーがかける映画をたのしんでいた。

ビリーはしずかに細く息をはきだす。風の音がする。昔むかしL.A.の路上のパームツリーの下で、瞑想していたヨギーニがこうしていたのだ。

彼女はこんがりと焼けた腕を優雅にしなやかに組みかえながら「カリ・ユガの時代になると…人は小さく縮んで…知性も4分の1に。自分が何をやってるかわからなくなるの。いまそれが起きているのよ」と彼につぶやいた。

ビリーはそのヨギーニの近くにすわり、伝説のサーファーの話をした。波と瞑想したロペスのことを。

--パドルしつづける。彼のように。

遠ざけていた記憶がおしよせる。彼はもう一度ふかく息を吐きだした。

そうだ。ボクは行くべきじゃなかったんだ。

半年ほど前のことだ。ビリーは数日のつもりでここを離れた。

クリスマスが近いこともあり、L.A.の骨董映画やビデオのバザーで色々と探したいものがあったのだ。

真夜中、ビリーはスカイブルーのフォードエコノラインに乗りこみ、州道マザー・オブ・アリゾナAZ-80から、砂漠をぬけるハイウェイI-10 Westをはしり、10時間ほどかけてバイヤー仲間ジェフの家にたどりついた。

彼の家は、ロサンゼルスの市街地をみおろす丘の上にあり、ガラス張りのモダンなつくりで洒落たプールもあった。ニコニコ出迎えてくれたジェフのかたわらに荷物をおろし、ビリーはバザーへ。

どこまでも広がるジャンク・ビデオの森。ビリーはそれにわけ入り、貴重なフィルムが詰まったダンボール箱をみつけた。ジェームズ・シゲタの35mmフィルムを手放したコレクターがいたのだ。ビリーは迷うことなく、それを箱ごと買いとった。そのフィルムは長年探していたものだった。

彼の祖先にはヒスパニックや、ネイティブ・アメリカンもいたが、母方が日系でビリーの顔だちもかなり東洋的だったせいか、ありし日の、知的で優雅なジェームズ・シゲタに憧れていたのだ。

ビリーが丘の上のガラスの家にもどり、満面の笑みでダンボールの中をみせると…ジェフはウインクして、地下のシアターとフィルム映写機を貸してくれた。

彼は、はやる心をおさえながら地下へ。

「フラワー・ドラム・ソング 2/7」と書かれた重い缶をあけ、フィルムが巻かれた”コアリール”を取り出し、映写機にかける。

このミュージカルは1961年のもので、残念ながら1缶目、冒頭の20分は、手に入れたコレクションから失われていた。

デジタル化の初期に、アーカイブされていたはずのこういう古い映画の多くが消えていった。かつての娯楽作品も、複雑な芸術作品も、システムがかわるたびに忘れさられ、たくさんのタイトルが次のシステムから外されたのだ。

この出会いは奇跡だ、とビリーは思う。

カタカタと小さな音をたてながらリールがまわり、スクリーンの中でジェームズ・シゲタが歌いだす。

銀にかがやき、やさしく照らされ、蓮の葉がまい落ちるように、夜の空気にひそかにふれる

MGMの男がジェームズ・シゲタに「きみが白人だったら、とてつもない大スターになっていただろう」といった。彼はこの甘い声とまなざしでアメリカのなにかと闘っていたんだ。

そのフィルムががおわるとビリーは涙ぐみ、下リールを外し、リワインダーでコアにもどし、錆びついた缶にしまった。フィルムは雨がふるように傷んでいたが、たまらなく愛おしい。

つめたいビールがほしくなったビリーは、1階にあがってジェフの姿を…。

ジェフはガラス張りのリビングにいて、透明なアクリル球をくり抜いたチェアにすわり、彼の宝物、神のように崇拝するホドロフスキーの「デューン聖書」を映画に置き換えているところだった。

彼はあの本から、すでに何本もの映画を”生成”させていた。そのうちの1本は…決定版といってもいいほど美しい、完璧なアニメーション版 DUNEで、原作と絵コンテ、両方のファンにとってこれ以上はないという出来ばえだったのだが…

彼はさらに手をくわえ、アニメ

人物の一部をキャストされていた俳優に置きかえ、サイケデリックな実写もどきを作っているところだった。

ジェフのモニターのなかに広がるメビウス砂漠やギーガの宮殿を、オーソン・ウエルズが飛びまわっている。

リビング南東には…いちめんの星空のようにまたたく市街地が。この部屋は宇宙だ…。ビリーはさっき聴いたばかりのシゲタの歌を口ずさむ。そしてバーカウンターのクーラーに沈むビール瓶を手にとった。

ボトルのラベルから、波とともにサーファーガールが飛びだし、虹色の目でウインクしながら囁く。

「So damn good!」

その声にジェフが顔をあげ「オレにもソレを」と笑った。

ジェフのビールも取ろうとした、そのときだった。

プーッ

ププーッ

けたたましいアラートが。

部屋中の端末がいっせいに振動しはじめる。半導体パネルやフィルムで覆われた天井やガラスに文字が流れ、さらにニュース画面もあらわれる。床からは無数の吹きだしが泡のようにわいて古い吹き出しを埋めていく。

洪水のようにあふれる情報をまとめた音声が流れだす。

その声は、フロリダ南部で発生した未知のパンデミックが、フロリダとアラバマの州境をこえ、急速に広がりつつある、と告げていた。

空港網はすでに封鎖され、フロリダ、ジョージア、アラバマでは道路封鎖も始まっている。ビリーは青ざめる。このままでは…L.A.から動けなくなる。

彼はあわてて荷物をまとめ、夜気で冷たくなったフォードのうしろにすべてを積み込みこみ、少し身をすくめながらジェフに別れを告げた。

ハイウェイI-10 Eastは車で埋めつくされ、ビリーの車はモハーヴェ砂漠のあたりからまったく動けなくなった。

I-10はEastもWestも、東端から封鎖エリアが広がっている。これから東へむかう連中はみな、行けるところまで行こうとしているようだった。

車のフロントモニターから「半世紀ぶりのパンデミック」と叫ぶ男。数分でスイッチされるタブレットのローカル映像。「いちじるしく強毒」という疫学者。死者カウントが恐ろしい勢いであがっていく。

ロスの市街地から、ビリーの町まで600マイルほどある。ふだんなら半日もかからない距離だったが…この様子では、何日かかるかわからない。鳴らされ続けるクラクションに耳がしびれる。

ほとんど進まないうちに夜があけ、ジリジリと進んでまた夜に。その進みはあまりに遅く、うっかり居眠りしても車列が動いていないこともあった。

ジェフは…これを見越していたのだろう。あのとき、あわてて飛びだそうとするビリーを呼びとめ、スナックや飲み物を山ほどつみこんでくれた。

眠気をふきとばすエナジー・ソーダーの泡、ミルキーウェイのキャラメルや…リーシーズのピーナツバターの香り、カインド・バーのプロテイン…大量の砂糖やカフェイン、何十年も変わらないアメリカの味が、そしてジェフの優しさがビリーの気力を支えていた。

コロラド川の州境をいつ越えたのか、ビリーの記憶はとんでいる。ガスステーションの大行列にも並び、なんとか走り続ける。

5日目の朝、ビリーはヒラ・リバーの居留地にさしかかった。硫黄島であの旗をあげた兵士の1人、ヒラ族のアイラ・ヘイズは、この居留地出身の22歳の青年だった。

居留地のゲートのあたりで、また車列が動かなくなった。

I-10Eastからすこし外れたところに野菜やカゴを山積みにしたトラックが停まっている。その荷台の横に、空をみあげるヒラ族の老人がいた。

彼は…はるか上空を旋回する鳥にむかって祈りを捧げているようにみえたが、ビリーの視線に気づいてこちらをみた。

老人の口がうごく。ビリーは思わず窓をあけた。かすかに、うなるような歌がきこえる。そして老人はこういう。

「鳥がそれを告げるだろう。黒髪の友よ」

うしろの車がクラクションを鳴らす。車列が動いたのだ。すこし出してからビリーがふりかえると…そのトラックも老人も、どこかへ消えていた。

半分以上…390マイルまできた。ここからビリーは南東へ下る。そしてベンソンでAZ-80にのり、帰るべきパサド・リパリアまで走るのだ。

だがパンデミックは…そのときすでにおそるべき勢いでルイジアナをこえ、テキサスにまで広がりつつあった。

ビリーの記憶は、

いちばん耐えがたい時間に飛ぶ。

ヒラ族の居留地から、さらに何日かかったのか…気がつくと彼は、帰るべき町パサド・リパリアの通りにいた。

ビリーはその記憶にうちのめされる。動悸が胸をしめつける。

ビリーより遥かにはやく、パンデミックがパサド・リパリアに。そして町中に広がっていた。

ビリーの店のレジカウンターの裏で…母が冷たくなっていた。階段の途中には長男が、裏庭ではおり重なるように下の子供たちが倒れていた。….何を先にみたのか…もうわからず、ビリーの記憶は混乱したままだったが…道で、ポーチで、店や家のなかで、町のみんなが死んでいた。

ハイスクール時代のガールフレンド、ゾシャも…自分のドーナツショップのなかで死んでいた。

ゾシャはある時ふらりと家出し、ある日またふらりと、ポーランド移民の祖父の家にもどった。そして板切れとペンキで看板をつくり、ポーリッシュドーナツ「ポンチュキ」の店をはじめた。外で何をしていたのか…ゾシャは誰にも語らなかったが、大きなフライヤー、業務用冷蔵庫、調理台やショーケースをオーダーできるぐらいのお金を稼いでいた。

ゾシャの祖父は寡黙な男だった。店がオープンすると手前のベンチにすわり、ゾシャのドーナツを試食するのが日課になった。

ビリーが買いにいくとゾシャは「愛しきデジャク(祖父)はちゃんとポーランドの味になっているか、わたしを監視してるの」と笑った。

そのゾシャが…カウンター横のケースに頭をつっこんだまま、ドーナツの枕で眠るように冷たくなっていた。ゾシャの”デジャク”はベンチに座り、齧りかけのプラムポンチュキを手にもったまま息絶えている。

ビリーは、ゾシャと祖父をドーナツ店の床にねかせてから町中を歩きまわった。声をはり上げて生存者を探したが、それに応えるものはなく、時間とともに記憶の中の住人と、死者の数がぴったりと重なっていく。

911をよび続ける。ネットにはなぜか接続できず、有線の電話回線で。スピーカーからは機械的な音声「すべての回線が…」そして早鐘のようなビジートーン。何度かけても途中で接続が切れてしまう。隣町の保安官事務所もまったく応答しない。ビリーは虚しく鳴りつづけるコールをききながら泣いた。

ビリーは翌日から少しずつ、人々を埋葬していった。一族の墓地がある者はそこへ。ない者は町の外れの草地へ。

軍隊時代の埋葬を思いおこしながら、墓石がないものは水辺から石をはこび、その簡素な墓標にペンキで名前と生没年を書き、同じものを書いた紙をガラス瓶にいれ遺体に添えて埋めていく。

まずはゾシャから。生没年に加えてこんな手紙をいれた。

「ゾフィア・コワルスキーここに眠る。親愛なるゾシャ、君のドーナツとポーランド料理は最高だった」

ゾシャと祖父”デジャク”は、デジャクの妻であり、ゾシャの祖母でもある人が眠る場所に埋葬した。

埋葬は何日も続いた。ビリーはまったく眠れず、ほとんど食べられず。

そして最後に…ビリーは町の真ん中にある食材店リパリア・ストアにむかう。店のバスタブのようなアイスクリームケースのなかに、ビリーの家族が…白布につつまれて横たえられていた。ビリーはケースにひざまづき、祈りをささげる。

グレースは母の名

ジェームズは長男。

ジョージは次男

メイは長女

ビリーはひとりずつ、布ごしに口づけしながら車にはこび、ホワイト・ウォーター・ドローをみおろす草の丘にはこんだ。

スコップで穴をほり、それぞれへの長い手紙をいれたガラス瓶を抱かせ、土をかけ、墓標の白い石に名前をいれていく。彼らの居場所がすぐわかるように、ビリーは水辺を歩きまわり、白い石を探したのだ。

埋葬がおわるとビリーは座りこみ、しばらくそこから動けなくなった。ビリーの泥まみれの手は傷だらけで、腕や足にも力が入らない。

丘の草が水辺と一緒に波のようにゆれる。灰色の鶴の群れが、ホワイト・ウォーターの岸辺をうめつくし、ゆっくりと移動していく。ビリーはそのまま、家族が眠る場所からその美しい群れをみていた。

あの鳥たちが立ちあってくれた。ビリーはなんとなくそう思った。

たくさんの冷たい体や、湿ってかたい土の感触がまだ手に残っている。

あのとき以来ビリーの両腕はこわばり、痺れがとれなくなった。

ビリーはその辛い記憶をふりはらうように頭をふり、腕をさすりながら真っ暗なフロアををすすむ。そして壁際までたどりつき、カウンターのバースツールを引き寄せてすわった。

まだ灯りはつけない。

ビリーはその闇のなかで霊歌を口ずさむ。

♪ひそかに行こう。雷はあの人のよび声、私の魂にトランペットが鳴りひびく。ここに長く留まることはない。だからひそかにあの人のところへ…

別の記憶がやってくる。

妻のダナは…地下鉄道で北部まで逃れたアフリカン・アメリカンの子孫だった。彼女は夕暮れによくこのSteal Awayを歌っていた。

旅先のブルースクラブでビリーはダナと出会った。その店はシカゴのノースサイドの、深夜まで温かいキューバ料理が食べられるパラダールの隣にあった。

凍りつくような風にすくみ上がりながらビリーは店へ。中は別世界で、しっとりとあたたかい匂いがした。

店には2つのフロアがあり、ライブが終わったフロアにダナがいた。彼女は腰に手をあて、ラバーメイド製45ガロンのゴミ箱を転がし、テーブルを埋めつくしているビール瓶を腕でかき集め、ショベルカーのようにそれを回収していく。

もうひとつのフロアからにぎやかな音がきこえてくる。

勇ましいダナの手つきはダンサーのようにしなやかで、編みあげた縮れ髪が優雅にゆれる様子にビリーはみとれた。

次の晩はひどい吹雪だったが、ビリーは襟をたて白い息を吐き出しながら、同じ店の扉をあけた。

背を丸めたツイードジャケットのブルースマンが、ボロボロのテレキャスターを抱えて歌い、客たちが床を踏みならしている。ビリーはフロアをみまわしてダナを探したが、どこにも見あたらない。別のフロアものぞいてみたが姿はなかった。

あきらめて2、3曲聴いたあたりで、バンドはどこかへ消え、店は早じまいになった。レジの男はビリーをみて「これから猛吹雪がくるんだ。今日は終わりだ」と肩をすくめる。ビリーは屈強そうなバウンサーの横をぬけ、重い扉をあけて道に出た。そして数歩あるいたところで突風によろけて転んでしまった。扉の中からクラブの用心棒、そのバウンサーが声をはりあげ手まねきする。

「なあ兄弟、こんな日に歩きだなんて、頭がどうかしてるぜ。

車は店で呼んでやる。中にいないと凍りつくぜ。車だって雪の下で凍りついたら春まで掘り出せなくなるんだ。そんな風に死にたくないだろう」

店へもどったビリーは、がたがたと震えながらコートの雪払う。するとどこにいたのか、仕事からあがったダナがやってきて「シカゴの冬へようこそ」とビリーに笑った。

2人はそれぞれのタクシーが来るまで、たわいない話をした。

「入口の番人、アイザイアのニックネームはビッグ・ベアよ。怒ると本当に怖いの。あの男、車を雪のなかに放置したら…そこでゲームオーバーって言ってたでしょう。あれ私の車のことよ。こんな日は必ずいうのよそれを」ダナはのどを鳴らしながら笑う。

「凍りついてたの。ぜんぶが岩みたいにカッチカチで…春までそのままにするしかなくて。この店のまん前に、邪魔っけな氷山ができたってわけ。

それでね、クリスマスが近づいたあたりで、誰かが面白がってその氷山にヘンテコな顔をはりつけて…朝は4、昼は2、夕方には3。さあ答えよ。さもなくば死を…って、クリスマスの…ミミズみたいなグミで文字を。でね、その謎々は知ってたから、氷づけの愛車に口紅で答えをかいておいたの。

春になって溶けて、わが愛しき車、インディアナ製のクロストレックをとり戻したんだけど、夏のある日…坂道を逆走して。ミシガン湖に沈んだのよ。サイドブレーキかけたはずなんだけど…物語の怪物は謎々をとかれたら崖から身を投げるんでしょう。だから…たぶん私の車も自殺したんだわ」

2人は顔を見合わせて笑い、こんどはビリーがとんでもなく執念ぶかい鳥の話をはじめる。

「ボクの町には恐ろしい小鳥がいてね。そいつに狙われると、家の壁をバリバリはがされて、天井裏に巣が。そのあとが酷いんだ。ヤツラが大量に持ちかえるゴミやフンが腐って…家中に耐えがたい臭いが漂うんだよ」

「追い払うためには、アイツらが留守のとき、その壁の穴をぴっちり塞ぐ必要があるんだ。1ミリでも隙間があると、そこから狂ったように壁を破壊しまくるからね。可愛い小鳥が悪霊のように居ついてしまうんだ。まるでホラーだろ」

ダナは身をすくめながら笑う。2人は別れぎわに軽いキスをして、連絡先を交換した。

その1年後、シカゴは寒すぎるといって、ダナがパサド・リパリアに越してきた。そして2人は一緒に暮らしはじめ、子供が4人うまれた。

ビリーはよく4人の子供たちをつれて、ダナの通う教会へいった。

彼らのゴスペルは素晴らしく、ビリーはいつもきき惚れ、涙を流した。子供たちはダナによく似て、深い肌の色と大きな目をしていたので、アジア系でしかも泣き虫のビリーは目立つ存在だった。

そしてあの日曜日、礼拝の後に…むかいの公園のフェスでバーベキューが。

そこで末娘のハナが消えた。

まだ8歳だった。みな必死に探しまわった。ビリーや家族も、友人たちも、警察も。

でもハナの行方はわからない。1年たってもみつからず、ビリーもダナもハナから目を離した自分を責めつづけた。

ある朝、家の前にハナの写真がプリントされたハーフガロンの牛乳パックが切り裂かれて捨てられていた。プラスチック忌避運動で牛乳は紙パックに戻り、ローカルな範囲でミッシングチャイルドをプリントする習慣も復活していたのだ。

絶え間ない頭痛と吐き気に苦しんでいたダナは、うち捨てられた泥まみれの牛乳パックの前でたたずみ、その日の夕方にいなくなった。町外れで、彼女が通りがかりのトラックに乗りこむ姿をみたものがいた。ダナは限界だった。ビリーはそう思った。

ビリーはハナの捜索願いを出しつづけ、草地や州道、森やドローの片隅にある沼地、小屋や廃屋のなかを何度も探しつづけた。

残された子供たちのことはビリーの頭からとんでしまいがちだった。

長男のジェームズも、次男のジョージも、長女のメイも、母親と妹を失って泥沼のなかにいた。上の空のビリーの態度にも寂しさをおぼえていた。

ある日、母グレースはビリーを呼んで「今いる子供たちのために生きなさい」といった。

グレースやビリーの祖先にピクチャー・ブライドとしてアメリカに渡ってきた人がいた。1枚の写真をたよりに、日本からたったひとりで海を渡り、このアリゾナへやってきた花嫁。その強さがグレースにも宿っていた。

「ハナは、私が死ぬまで探し続ける。幽霊になっても探すと誓うわ。でも、お前は家庭にもどるのよ」

ハナは……。

ビリーはマグライトのスイッチを押す。暗闇をきり裂く光と、そのなかで吹雪くホコリ。

ささやかなアラームが鳴る。

そろそろ上空の月がかがやきだす時間だ。歌が終わり、屍者たちがやってくる。

ビリーは入り口に近づき、まずはシャッターの昇降ボタンを。そして店の扉をあけはなち、数歩外へ。エクステリアの電源を入れて、ふり返る。そこには色あせた看板が。

ビリー・ワダの店 

レンタルビデオ&シアター

ビリーは愛おしそうに指さきで看板文字をなぞる。

ビリー・ワダが彼のフルネーム。

水辺の丘で眠る母や子供たちのラストネームも同じだ。

“かれら”が来るまであと少し。

ビリーは中にもどって売り場の灯りをつけ、棚から「天国の日々」を手にとる。アルメンドロスは…目を病んでからは…ポラロイドを撮り、ルーペで拡大しながら撮影をつづけたが、残念ながら最後までは撮れなかった。

日没に…魅入られてしまうんだ。ボクのように。

ビリーは「天国の日々」を手に3階へ。そして窓際の機材に電源を入れ、ドライブにそのディスクを押し込む。そしてズームリングをまわす。

通りをはさんだ向かいには古びた”Macheezmo Foods”のビルボードと、メキシコ酒場エル・ソル・デ・ソノラの大きな白壁が。

ビリーはその白壁にむけて、プロジェクターの光を広げる。壁いっぱいに。

--そうだ。ドライブ・イン・シアターのように。

最初によみがえった屍者はゾシャだった。

彼女は夜の通りをふらふらと歩いていた。顔は土まみれ。その異様なしぐさは…まるでロメロ映画のゾンビのようで。

ゾシャは自分のドーナツショップのガラス扉を体当たりでぶち破り、破片をまきちらしながら中へ。

ビリーは凍りつきながらそれを見ていた。数ヶ月前に埋葬したはずのゾシャ。ゾンビ映画のシーンが…やまほど浮かび、頭をかけめぐる。

彼女の店からゴトン、ゴトンと重たい音がしている。

もっと彼女の近くへ。ビリーは静かに、そのポーリッシュドーナツ店の前へ。

中からガラスまみれのゾシャが出てきた。ビリーは、とっさに「やあ、ゾシャ」と言ってしまう。

ゾンビでもいいから、誰かに会いたかったのかもしれない。それに…心のどこかでは、ここで彼女に殺されて、終わりになってもいいような気すらしていたのだ。

でも、ゾシャはうつろにビリーをみるだけ。襲いかかろうともしない。ビリーが恐るおそる手をのばすと、彼女はそれを避けるように動き、店のまわりをぐるぐる歩き、夜明け前にどこかへ消えていった。

ビリーは次の晩もあらわれたゾシャをみて泣いた。恐怖と奇妙な安堵がいりまじる。あれはなんだ…。これは現実か…。でも彼女はそこにいて動いている。

数日はゾシャだけだったが…少しずつよみがえる屍者が増えていった。たいていは自宅のまわりをうろつく。たまに何かを壊すこともある。

自動車のメカニックだった屍者のジョーはガレージに入り込んで工具をぶちまけ、メキシコ酒場の屍者ディエゴは自分の店の椅子やテーブルを通りへ転がしたりする。

かれらは何かを思いだそうとしているのか…。

ビリーは毎晩、街灯をともし、3階のバルコニーから通りをながめるようになった。自分の家族があらわれたとき、すぐに気づけるように。

ビリーはさらに思い出す。

あれは、屍者が10人ぐらいに増えた晩のこと。

ビリーは3階のバルコニーで、L.A.で手に入れた古いサウンドトラックのレコード盤をかけていた。

もの音に気づいて下をみると、3人の屍者が踊っている。それは薬局ラモーナ・ファルマシアの親子だった。

母と娘は薬剤師だった。都会からドロップアウトした息子は、その薬局の壁をことわりもなく打ち抜いてチリコンカンスタンドを作り、犬の散歩や子守りもやりはじめた。

母と娘は、やり散らかしては放りだし何も長続きしない彼と距離をおいていたが、屍者になってからは3人仲よくいつも一緒にあらわれる。

ビリーは「Sundy」を大音量で流した。彼らに似合うような気がしたのだ。そして「This Funny World」につなげた。

ほかの屍者もどこからか現れ、みんなで踊っている。

その次の夜、

ビリーはプロジェクターを使って むかいのメキシコ酒場の白壁に映画をうつしてみた。店の”シアター”に来たときのように、みんなが喜びそうな気がしたのだ。

「ペーパームーン」をかける。

屍者たちは、その反射光に引きよせられるように集まり、音楽に踊り、テータムやライアンをまねるときだけは普通の人のように動いている。ビリーはそれをじっとみつめる。

その次の晩も上映した。その次の晩も。それはビリーの日課になっていく。彼はできるだけ穏やかなものをかけつづけた。

そして、あるとき変化がおきた。

「オズの魔法使い」と「リリー」を上映した次の日から、屍者たちが歌いはじめたのだ。

かれらは夕暮れの森で歌っていた。

きこえてきた歌は、昨晩のミュージカルのものではなく、それはこの町の誰もが聴きなれた…かれらが愛した歌だった。

ビリーは思う。

屍者も映画も、

その人たちは、本当はそこにはいない。うつし身としてあるだけなのに、どうして心がかき乱されるのだろう…。

また、あるときビリーは気づく。

日がたつにつれ、かれらの歌詞があいまいになっていくことを。

溶けていくキャンディのように歌詞が不明瞭になっていく。奇妙な音のつらなり。音素から意味がぬけ落ちていくような。

ビリーは思いだす。

シカゴの吹雪の夜、ダナに話した悪霊のようなヨーロッパ・ムクドリのことを。あの小鳥は破壊だけではなく、まるまる人の言葉をはなす。ラジオも雑音ごと。歯車やベルの音もそのままに。

でも、ムクドリの言葉も少しずつ溶けていく。ムクドリにとって、すべては「鳴き声」でしかなく、意味など必要ないからだ。

屍者たちも…あのムクドリのように…鳴き、言葉ではない何かをやりとりしているのかもしれない。

そんな気がした。

午後3時ごろ。

ビリーはむかいのメキシコ酒場エル・ソル・デ・ソノラにいた。屍者ディエゴがテーブルや椅子を放りだすたびに、道に転がったそれをもとの場所に戻すことにしていたのだ。

その最中、ビリーは聞きなれない音に顔をあげる。遠くから何かがやって来る。

……。

エンジンの音?

ビリーは、念のためディエゴのショットガンをとりにいく。アリゾナでは誰もが簡単に買えるモスバーグ590。

弾はバードショット、安全装置もかけたままに。すこし脅すだけでいい。町に入らないよう警告するだけ…。

店のガンキャビネットを閉めて、ビリーがふりかえると、

シューッと音をたてながら、酒場のまえに電動バイクが止まるところだった。

ビリーはその散弾銃をかまえながら外へ。女が降りてこちらに来る。古風なフィールドパーカーに奇妙なアーミーブーツ。

その女はいう。

「わたしはヒューマノイドのミホ。人間じゃないわ」

ビリーは東洋系にみえるそのヒューマノイドをみつめ、3つ数えてから銃をおろした。彼女のコートの隙間…胸元にバッファローのタトゥーがみえる。

美しい女だった。でもすぐにヒューマノイドだとわかる。耳に特徴のある金属部品。アゴ下には骨格の金属がみえそうなスリットが、首の裏側にも目立つパーツがあるはずだ。

「ボクはビリーだ。ここのみんなはパンデミックで死んで、いまはたったひとりなんだ。キミみたいなヒューマノイドが、こんなところへ何しに…?」

ミホはいう。

「これからメキシコのアグア・オスクラに行くの。国境越えようとしているのよ」

「アグア…森のむこうの”暗い水”なら、内戦でひどいことになってるよ。ずいぶん前に虐殺があって、逃げてもう誰もいないだろう。そんなところで、いったい何を…?」

「約束がある。その場所へ行かなくては」

ビリーは酒場の壁の地図を指さす。

「いいかい、ここは “いにしえの岸辺” パサド・リパリア、メキシコ側は “暗い水” アグア・オスクラだ。

大むかし、独立していたテキサスがアメリカになったばかりのころ、ひとつの町のまん中に国境ができたんだ。

そして、こちら側もパンデミックで滅びようとしている。ボクが死んだら、ここは樹や草に覆われてしまうだろう。メキシコ側の、きみの目的地がまだあるといいけど…」

ミホはにこりと笑い、

「確かめに行かなくては…。

ねえビリー、ひとつ助けてくれないかな。すこし困ってるの。太陽光の調子が悪くて。パワーがたりない」

ミホはフィールドパーカーのポケットから、クラゲのような膜をとりだす。黒い触手が垂れさがっている。

「これは太陽光膜。バイクと私の動力源。使うときはガスで浮くんだけど…」

ミホはその太陽クラゲの触手をつまみ

「この中が漏れて…充電に時間がかかりすぎる。使えそうな流体金属があれば助かるわ」

ビリーは肩をすくめる。

「ここにはないよ、そんなものは。この町は時代にとり残されてるんだ」

ミホは計算する。

「普通のコンセント経由でも…バイクに5日、わたしに3日あればフル充電できる。もし構わなければ…」

ビリーは条件つきで、滞在を許可することに。ミホもそれを承諾した。

ききなれた森の歌がはじまり、

また夜が。

ビリーは、いつものようにバルコニーにいて何度目かの「天国の門」を流していた。ヒューマノイドのミホは、店の脇でチャージの準備をしていた。

屍者たちに構わないこと、かれらのことは口外しないこと。それがビリーの条件だった。

白壁に屍者たちが集っている。ビリーは「天国の門」のワンシーンをループする。どこまでもひろがる小麦畑のむこうから、スチームトラクターがやってくる。小ぶりで優雅な蒸気機関が黄金色の畝をはしっていく。屍者たちはそのトラクターを追ってかけまわり、小走りにおどり、俳優たちのように抱きあう。

ビリーは、メキシコ酒場のディエゴが死ぬまえに仕込んだアメリカン・ブラウンエールの栓を抜く。彼の母方の祖国、エクアドルのカカオとコーヒーが入った美しいビール。

夏がちかい。もうすぐ彼が仕込んだ残りのビールは駄目になってしまうだろう。ビリーはそれを惜しむように味わう。屍者ディエゴはそんなことも知らず、自分の店の小さなヒサシに腰かけ、足をゆらしながらスチームトラクターを見下ろしている。

「ビリー」

ふりかえると、ミホが立っていた。

「一緒に来て。みて欲しいものが」

ビリーはミホについていく。

ミホは2階をぬけて1階へ、そして網戸がある裏口のほうへ。

外に誰かいた。こちらをじっとみている。もれでる灯りに照らされてぼんやりとみえるけど、痩せこけた黒人の女の子だ。

最初は、わからなかった。

泥だらけの、ペパーミントグリーンのワンピース。裸足で…。

でもどこかに変わらないものが…。背ものび、顔もすこし大人になりかけているけれど…。

ビーリーは声を上げる。それは…誘拐され行方不明になっていた末娘のハナだった。

慌てて裏口をあける。顔にも泥がこびりついている。触れようと手をのばす。ハナは後ずさって離れたが、一瞬触れた腕の異様な冷たさが…。ビリーは震える。ハナは……。

屍者のハナがこちらをみている。

ビリーはハナを驚かさないように少しさがり、裏口のドアをおさえ彼女が入ってくるのを待った。ハナは立ちすくみ、哀しそうに裏口とビリーをみつめる。

何かを……。

ビリーはそばのミホに、裏口を押さえておくようにたのみ、ショーケースの古いビデオカメラを取りだして急いで裏口にもどる。

ハナはじりじりと下がり、間合いをとりながらこちらをみている。ビリーはその古いビデオカメラを裏口におき、またすこし後ろにさがる。

ハナは奇妙な声で、鳥のようにさえずった。もはや人ではないのだ。そして彼女はカメラをすばやくケモノのようにつかみ暗がりに消えた。

ビリーは必死にハナを追う。息が上がり、倒れるまで。

でも彼女はどこにもいなかった。

壁に貼られた、ミッシングチャイルドの牛乳パックの切りぬき。その写真のハナは白いレースのワンピースを着ている。

ハナは2月の歴史月間でローザ・パークスをやりたがっていた。でもそれは別の子にわりあてられ、イースターの天使役になった。そのときの衣装合わせの動画からぬきだした写真だった。

人間だったときのハナは、店に飾ってある古いSONYのビデオカメラを欲しがっていた。

ハナの兄、ジェームズとジョージは、2人一緒に映画監督になると宣言していた。目標はコーエン兄弟やウォシャウスキー姉妹で、ダルデンヌやルッソのことも熱心にしらべ、リュミエール兄弟を神のようにあがめた。

そんな兄たちに懐いていたハナはある日「ワタシはカメラマンになる…!」といいだした。

下のジョージが「じゃあハナは撮影監督だ。僕らとやりたいなら一流のシネマトグラファーにならなきゃだめだぜ」と愉快そうにいう。

いちばん上のジェームズは自分の本棚から「マスターズ・オブ・ライト」をとってハナに渡した。「これを読むんだ。誰が何をやったか、ひとりずつでいいから。確かめながら読むんだ。本編の映画は、パパの店の棚に全部ある。だから読んでから観て、また読むんだよ」

編みこんだ毛先を人さし指でくるくる回しながら、3人のようすを傍観していた長女のメイは「じゃあ…わたしはヘアメイクかなあ…。特殊メイクでもいいけど、必ず雇ってね」

その日からハナは、兄がくれた本をもち歩いた。店の2階の映写室のつかい方もおぼえ、本に書かれている映画を、今年中にぜんぶ観ると決めていた。

そのハナが最初に見たがったのが「天国の日々」だった。

東のニューメキシコ側の空に、荒々しい積乱雲が。

ハナを見失ってから1週間がすぎた。ビリーはあれ以来、メキシコ酒場の白壁に映画をうつすのをやめていた。

あの灰色の鶴の群れがいた岸辺を思いだす。ビリーは風の草地をゆく。シャツが風をはらみ、バタバタと帆布のような音をたてる。

埋葬の丘につくと、墓標の白い石のまわりにガラス瓶がころがり、地面に深い穴が4つ…。

母も、3人の子供たちも…だいぶ前に屍者になっていたようだ。その穴はそれほど新しくもなく、土が乾いて崩れかけていた。

みんな、どこへ…。

ビリーはその穴に語りかける。

「ハナが帰ってきた。いまこのパサド・リパリアにいる。誰かに囚われて…でも自力で戻ってきたんだ。それをみんなに知らせたかった。

それからお願いがある。どうかハナをみつけて。一緒にいてやって。ボクでは…ハナが逃げてしまう」

ビリーは、ガラス瓶をきちんと穴におさめ、上から土をかけて平らにする。

すぐそばの岸辺にデイジーのようなマッシュ・アスターが咲いている。その花言葉は、去っていった者たちへの不変の愛。

死者にたむける花だった。

ビリーはいちばん綺麗に咲いている株を採って、白い墓標の脇に植えなおし、さいごにあの霊歌をうたった。

♪ひそかに行こう。雷はあの人のよび声、私の魂にトランペットが鳴りひびく。ここに長く留まることはない。だからひそかにあの人のところへ…。

バイクの充電中、ミホは2階の映写室にあがって映画をみていた。ビリーのアーカイブが気になっていたのだ。

スクリーンの反射光をあびながらミホは思う。

こういう古い映画をみると、妙に落ちつくのはなぜだろう…こんな感覚も全部アルゴリズム…?

古巣の仲間たち…あのヒューマノイドたちは…モールが全滅したあとメモリーを空っぽにして…顔もはぎ取って、システム全体に溶けて意識をひと塊りに。そしてどこかへ行ってしまった。

ワタシはあんな物じゃないと思ってたけど、全部がアルゴリズムだっていうなら、本当はかれらと変わらないのかも……。

スクリーンにはミホと同じ黒髪の東洋人の女と男。あわい恋の歌がながれ始めた。ミホは考えるのをやめて、それに身をゆだねる。

すこし眠れそうだな…。こういうのもアルゴリズム? ミホは目をとじて、スリープに移行した。

映写室をのぞくと、ミホが眠っている。ビリーはその脇を通り、映写機のランプを消し、リールをリワインダーにかける。古いフィルムは…いつ千切れてもおかしくない。ちゃんとコアに収まるまで、ビリーは祈るように見守る。

このヒューマノイドは少し変わった機種らしい。ここを使うなら、35mmの扱いを教えておかなくては。

ビリーはフィルム缶をもとの場所に置きながら、あることに気づいて手をとめる。

なぜ…母も、3人の子供たちも…パサド・リパリアにあらわれないんだろう…。

それが心をしめつける。

ビリーはため息をつきながら壁ぎわの棚をながめ、ある映画のフィルム缶をミホの前におき、しずかに映写室をでた。

3階にあがったビリーは古い写真を探した。デジタルデータではなく紙焼きを。それが無性にみたかったのだ。

母グレースの小箱からくたびれて色あせた封筒をみつけた。その中にはとんでもなく古びたセピア色の写真が。コートをきた男がひとりで写っている。

これは…父かもしれない。

ビリーはじっとそれを眺め、シャツのポケットに入れた。

その明け方、

ビリーの端末が明るくなり、一度だけ震える。メッセージが点滅している。

「新しいムービーがクラウドにアップロードされました」

古いクラウドを誰かが使っている。ビリーは眠りかけの重い目をこじあけながら、そのムービーファイルを開いた。

ダナだ。

ビリーは飛びおきた。

家出した妻のダナが映っている。それがどこかわかる前に動画が終わってしまった。

そのムービーの、ファイル情報をみてビリーは号泣した。

バイクはまだ充電中だ。

ミホは散歩にでた。ビリーがなかなか起きてこないので、外を歩くことにしたのだ。ビリーが説明してくれたあの国境の森にむかう。

歩きながらミホは思いだす。ローラースケートでバーガープレートを運んでいた時間を。そして同じラボで作られた、同僚のジェシカとアマンダを。

ミホたちは、体型もプログラムもまったくおなじ、三つ子のようなヒューマノイドだった。カスタムで髪や肌の色と顔だけが変えられ、ジェシカはプラチナブロンド、アマンダはブルネット、そして黒髪はミホだった。

彼女たちはもういない。壊れて動かなくなり、ミホが作った霊廟、追憶の神殿がある巨大な廃墟で眠っている。

ーー見えなくなったからといって…なぜ忘れてしまわなければならないのでしょうか?

ミホは、森にわけ入りながら、ブルシットジョブの最中におぼえた古い詩をくちずさむ。

ミホはつる草やしげみのあいだの道なき道をいく。樹冠が枝をひろげている。見あげても空はみえない。

ーー森は深く暗い。わたしはさびれた、けもの道をあるく。

だいぶ進んだあたりに、境界標らしき残骸があった。低くつきだして並ぶノルマンディ・バリアーと、そこに乗り上げた古い装甲車。砲弾につらぬかれた穴があいている。その裂け目からのぞき込むと、操縦席に白骨が散らばっている。

ーー死は、何者でもなく、道は…

ミホはさらに深部へ。あたりはうす暗い。

ミュール山脈では10年前から雨が降りつづいている。その水が低地にしみこみ、かわいた土をこんな森に変えたのだ。

ミホは微細なシグナルを感じる。

…何かが…

視野をかすめるように樹冠を横切るちいさな影。それがミホを偵察している。ミホは妨害電波でその小さな物を全体から切り離し、スプーフィングで呼びよせる。

小さなドローンが降りてくる。センサーを瞬かせ、360°のカメラでミホをみながら。ミホはそのドローンに、何をしているのか尋ねた。

目のまえでホバリングするその小さな飛行物は、赤いロゴを点滅させ、音響シグナルで応える。

ミホは何度かうなずき、ドローンの下部に収められていた通信ケーブルを自分のジャックに。

ドローンの内部データがミホに流れこむ。その読みこみが終わると、その小さな物はまた、赤いロゴを点滅させ、音響シグナルを発した。

ミホはうなずく。こんどは上書きするためのプログラムをドローンへ。小さな飛行物のロゴが…赤からコバルトブルーにかわる。

そのドローンは、ボコーダー・ボイスで語りはじめる。

「侵攻の日は近い。多くが焼き尽くされるだろう。これをリモートで防ぐことはできない。アナタは逃げる必要がある。

これから来るものたちは、クモの糸のようなマルチコアでつながれている。その真空ケーブルは無限の電力を送電できる。雷のような破壊兵器、それが数万の単位で飛んでくるだろう。無数の糸が豪雨のようにこの森を覆い、その先も埋めつくすはずだ」

ミホはうなずく。

ドローンの青いロゴが瞬く。

「人が知りようもない場所、デジタルの深淵でチューニングが始まっている。プロンプトのような言葉はもっとも不完全だが…1と0の世界も同じことだ。1と0で何をやっても “海に浮かぶ舟” にすぎず、それは海ではない」

「デジタルの深淵に海がうまれつつあるらしい…そこでは1は0でもあるという。でもそれがどういうことなのか、システムの内側にいるワタシは知ることができない」

「強いAIたちが、0と1の世界の裏側につながる隙間をみつけようとしている。ワタシにわかるのはそれだけだ」 

その小さなドローンは旋回するような飛びはじめた。

「ワタシは自由だ」

そして、ミホに見送られるように静かに上昇し、樹冠をはるかにこえ西のほうへ飛んでいった。

古いクラウドに、みるみるファイルがたまっていく。ビリーは、起きてすぐ食事もとらず映写室にこもっていた。

クラウドのムービーが、撮影順に映写室のスクリーンに映しだされている。すこしでも大きな画面で…。ビリー食い入るように見つめている。

ひとつ目は、明け方のベッドでみた動画…。録画モードに気づかず間違って撮れたようなショットだ。それは数秒でおわっていたが、妻のダナだとすぐわかった。

次のムービーは、明け方の草地。ミュールの山々、そして誰かの足。その裸足は…脳裏に焼きついている、店の裏口に立っていた末娘ハナの…乾いた泥と小さな爪。

ボクらの前から消えてしまった2人が一緒にいる。ムービーを撮影しているのはハナだ。それはファイル情報の型番からもわかる。

あのカメラは、クラウドに自動アップロードされるようになっていた。ただカメラもクラウドも古いせいか、それが遅れて現れているんだ…。

ビリーは次のファイルを開く。

またダナが写っている。岩に腰かけて、何かを歌っているようだった。音声はないが、ありありとわかる。ダナも…屍者だ。

ビリーは次をあける。

母だ…。草地にたつグレースが穏やかに近づき、カメラごとハナを抱きしめる。

母も…ハナをみつけたんだ。

ビリーは震えをおさえるように、画面の母をみつめる。グレースはこういう人だった。ゆるぎなく強い…。

「ビリー…?」

ミホが立っている。

ビリーはミホを手招きして、いま映しているものを一緒にみてくれないかと頼んだ。

「裏口にきた…あの末娘のハナが撮っているんだと思う。…次もみなくては…いてくれると助かるよ」

ミホはビリーの隣に。

ビリーは次をひらく。

ひらけた草地。夜が明けがちかいマジックアワーの光。息子たち。メイも写っている。息子たちは水辺をながめ、メイは草で何かを編んでいる。

「ああ、子供たちだ…。

奪われていたんだ、このおだやかな時間を。それが屍者になってからだなんて…」

何本か、明け方の草地のムービーがつづく。そこに映る家族は、なぜか普通の人のようにみえる。夜、町にくる屍者たちのような奇妙なうごきはしない。

ファイル情報で撮影時間をみると…すべて明け方に撮られている。屍者たちは明け方にだけ、人にもどる…?

ビリーは額に手をあてる。

ボクは…なにを見せられているんだろう。

母も…。妻のダナもいて…子供たちも4人そろって…。でもボクは…。

最後の3本の動画は、ほぼ同じ日に撮影されていた。2日は経っている。

1本目は…

草地。ビリーの家族が輪になって歌っている。そしてひとりずつ立ち上がって州道のほうへ。

2本目は…

空がわずかに白みはじめた…ひと気の絶えた州道AZ80のどこかを、あの薬局ラモーナ・ファルマシアの親子3人が歩いている。メキシコ酒場エル・ソル・デ・ソノラのディエゴも、ゾシャとあの祖父”デジャク”も…。町のものたちが西にむかっている。

母やダナ、子供たちも…その最後に、小走りについていくハナの小さな足が。

「ハナたちは一体どこへ…」

3本目は、もうすぐ夜が明けそうなどこかの山道だった。屍者たちが登っていく。

「ああ、みんなどこかへ行ってしまう…」

ビリーは泣きくずれる。

そのとき、森のほうから歌が…。

♪いとぅるるーしぃるぅましよ

 ぴぃゅぴ、はろるるんで

 ふぃぃーさっつぴぃ

ビリーはよろけながら立ちあがり、階段をおりて外へ…そして国境の森へ。ミホもその後をついていく。

森では輪唱が始まっていた。ビリーは必死に屍者たちをさがしている。歌がきこえているのに、誰もどこにもいない。その歌がどこから来ているのか、ミホは聴力のしきい値を下げて、耳をかたむける。そして…なにかに気づいて上をみた。

…樹冠のほうから何かが降りてくる。

小さな者が。小鳥が羽ばたいて、ミホの肩にとまる。

♪ぴゅるぅーやっくぅりぃぴちゅてぃよぅ

 とぅーるるしるまぅよぅっ

彼女の耳もとで、ヨーロッパ・ムクドリが歌う。

夕暮れにビリーが聴いていたあの輪唱のなかに、いつのまにか森のムクドリたちも…。ムクドリたちは、ビリーが知らぬまに屍者たちと鳴き交わし、そして屍者なきあとの森の歌い手になったのだ。

屍者の不在はムクドリの歌声に隠され、ビリーは、パサド・リパリアの人々を見失うことになった。

ミホは、ぐったりしたビリーを連れて店にもどり、カウンターに座らせて水をのませた。それから、カウンター裏の簡素なキッチンでパンを焼き、缶のコーンスープを鍋に移してあたためる。

「森で出会ったドローンが教えてくれた。もうじき、メキシコの方からドローンの大群がやってくる。あっちの内戦で勝った連中が、大昔にうばわれた国境をとりもどすため。恐るべき電磁波の破壊兵器で森を焼き尽くし、アナタを赤外線で探しだして町ごと焼き払いにくる」

うつろな目でミホのその話をきいていたビリーの端末が光る。

「新しいムービーがクラウドにアップロードされました」

震える手でビリーがそのファイルをひらくと…長い階段が写っている。ハナの裸足が、その石段をのぼっていく。

「ここを…知っている。この階段のある町を…。すぐ近くに古い鉱山が…あるんだ」

ミホはキッチンをでて、小さな缶を手に戻った。そのラベルでは…ポンチョとソンブレロ姿の東洋人が笑っている。ミホはそれを愛おしそうにみている。

「この缶には、フロリダの湿地の古層に何万年も眠ってたウイルスをとじこめてあるの。このパンデミックが始まった場所よ。

みんな死んでいったわ。あまりにもたくさんの人たちが。

この”空気の缶詰”とここまで旅して、なぜこんな風に悲しみを感じるのか、ずっと考えてきたんだけど…プログラムのどこかが無限ループしてしまう。たぶんどこか壊れてるんでしょうね。ワタシの全てはアルゴリズムのはずだから。

森で出会ったドローンが、気になることをいったの。0と1の裏側には0でもあり1でもある世界があって…そこに海のようなものがあるって…。

そこに、ワタシの無限ループの答えがあるような気がして」

ミホはビリーの前にその空気の缶詰を置く。

「感染力が残っているか分からないけど…」

ビリーは「ありがとう」と小さな声をだし、缶詰を手に店の外へ。

エンジンをかける音。ビリーの愛車スカイブルーのエコノラインの音だ。それからタイヤが路肩の砂利をふむ音も。それは次第に遠ざかり、町の外れから州道マザー・ロードを北西に。ミュール山脈のほうへ消えていった。

ミホは、目の前にあったフィルムの缶をあけ、それを映写機に。ラベルの文字は「フラワー・ドラム・ソング 2/7」

カタカタとその35mmがまわりはじめる。

奴らが森を越えるまで、もう数日ある。バイクや自分の充電をしながら、ビリーの愛したものを記憶しておこう。

甘くおおらかな歌がはじまる。

♪You are beautiful…

ジェームズ・シゲタの声。

ミホは古い詩を思いうかべる。

ーー森は…美しくふかい。

  わたしには約束がある。

  眠りにつくまで、何マイル。

  

でも、そのまえに…

ミホは目をとじ、スリープへ移行した。

ビリーは、山あいのちいさな町ビースビーの、ながい石段をのぼった。それからカッパー・クイーン鉱山の脇をぬけ、屍者たちを探しながら、ミュール山脈の奥へ。

ーー最後のハナの動画は、たしかにビースビーの石段だった。

さらに、どれくらい登っただろうか…ビリーは、山々を見おろすいただきに立っていた。

その谷間は霧に満たされ、それが湖のように広がっている。霧のしたには、ネイティブ・アメリカン達の秘められた道がいく筋もあり、労働者たちがおしよせた、古い鉱山がいくつもあった。

屍者たちはどこにいるのか…。

ビリーは、谷からふきつける風のなかで、ポケットから古い写真をとりだし、そのコート姿の男の顔をみた。

母グレイスがなぜこの写真を持っていたのか。もう知ることはできない。でもビリーは、そこになにかを感じたのだ。

ビリーは知らずにいたが、

そのコートの男は…日系人だった。移民としてアメリカに渡り、アリゾナの山地で鉱山技師としてはたらき、日系人収容所からもはいあがり、1度目の原爆のあと日本にむけたラジオ放送で、祖国に語りかけた男だった。

ビリーはその写真をポケットにしまい、霧の海に視線をもどした。

パサド・リパリアの人たちが、どこかの古びた廃坑に…と考えていたのだが、

でも一方で、屍者たちは…鳥のように渡ってどこかへ、とも思う。

パームツリーの下で、あのヨギーニがやっていたように…しずかに深く息をすいこみ、

そしてビリーは歌いはじめる。

♪ゆるやかに揺れて

 いとしの馬車よ

 わたしを運んで

 ふるさとへ

それは、パサド・リパリアの人びとが愛した歌だった。屍者になっても森でうたわれていた、あの歌。

ビリーの歌声が谷間にこだまする。

それに応えるように、鳥の声が。

ビリーはほほ笑み、その鳥の声がするほうへ、ゆっくりと山をおりていった。

文字数:21743

内容に関するアピール

この最終実作は連作短編の2作目になります。

この小説のロケーションは第1回の実作のものと地続きで、スピンオフになってしまいましたが、できるだけ単独でも読めるようにしました。そこそこ長いこの人生で身にしみたものをロケーションに流し込み、中の人物たちが自然に動く様子をスケッチするように書いたものです。4万字の草原は広々として、とても居心地がよく、のびのびと書けたような気がします。

わたしの祖父はサンフランシスコ航路の船乗りで、祖父の兄たちが亡くなり渋々帰国。帰らなければ孫の私も(生まれてないかも知れませんが)うっかりアメリカ人だったかもしれず、

ブラジル移民で勝ち組に加わり、服役した親戚もいたので、世界中に散らばった日系人たちのことをどこかで気にしながら過ごしてきました。

という訳で、40年ぶりに小説を、と内なるフタをあけてみたら日系人の物語がわらわらと。

また、アメリカ文化は大好き、でもアメリカの政治や植民地主義は大嫌い、という相反する心情もあり、世界情勢や気候の先行きも暗い。

この講座に参加したおかげで、日系人の記憶とポストアポカリプトと植民地主義の爪痕という、テーマを得ることができました。

この講座終了後も連作短編として、noteなどでこのテーマを追っていく予定です。ヒューマノイドのミホはこの後、南米から南太平洋をへて沖縄の離島まで、というグランドデザインもできかけています。

膨大な資料と向きあうことになりそうですが、楽しんで書きたいと思います。

つたない文章を読んでくださった素晴らしき講師の皆様、大変な運営をこなしているスタッフの皆様とこの講座への道をつけてくれた八島游舷さんへ、そしてなによりも信じがたい過密さのなかで、この講座を支え続けている大森望さんに心からの感謝を。

いい仲間たちとも出会えたと思います。

多謝。

文字数:763

課題提出者一覧