光円錐の子供たち

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梗 概

光円錐の子供たち

地球で子を失った音楽家ノイと栄養士ミラは火星へ移住する。 未知の病原体に備え、医療による治療以上に心身の恒常性維持や変化察知が重要視されている。 そのため脳活動、腸内細菌、遺伝、記憶、食事、人間関係から現在の状態の因果を計測する〈来歴計〉が整備される。

〈関係栄養〉の専門家ミラは、測定をもとに住民ごとの食・共生菌・環境を設計する。閉鎖環境で音楽は精神安定の要で、ノイは星の象徴たる星歌を依頼される。

スランプに陥っていたノイは曲はなかなか完成しない。ノイの音楽はかつて「宇宙から降ってきた」と評された。それに興味を持った〈来歴計〉開発者ジラールは元は宇宙起源に迫る研究者。来歴計の技術を応用すると「最も創造的な自分」を探れると語り、ノイはそれに縋る。

栄養管理の中でミラは、創造性が戻るほどノイの来歴から子の来歴が減っていることに気づく。才能の回復は、子の喪失の痕跡を消すことと連動していた。告げてもノイは葛藤しつつ止めない。今までに無いほどの感覚が漲る。星歌は完成し、歌い継がれ、彼は神のように慕われる。

だが栄光の中でノイは後悔する。喪失の痕跡とはいえ子との〈来歴〉。最高傑作と引き換えに、自分から子を葬ったのだ。

ある日の星歌合唱終わりに、見知らぬ少女が彼を「お父さん」と呼ぶ。

明らかにおかしい。ミラが告白する。体内に残る胎児由来細胞と生活記録から合成共生菌〈星胞〉を設計し、住民に提供する栄養食に混ぜていた。子の来歴がノイから減っていくことに耐えられず、ならば世に溢れさせようと。〈星胞〉は星歌に反応し、住民は過剰にノイを崇めた。

だが星歌は子の来歴を除いて生まれたはず。なぜ子由来の〈星胞〉が反応するのか。

精度を増した〈来歴計〉が解明する。来歴を遡りきると、記憶や関係という個人の部分は消え、誰もが分かち持つ宇宙の最初の状態へ行き着く。ノイは生まれながらにしてこの最深部に触れる力を持ち、子の喪失の来歴はそこへ至る道を塞ぐものだった。〈星胞〉は人生に上書きされぬ胎児細胞ゆえ、その源を最も純粋に宿し、星歌に強く反応する。

ジラールは星歌が「続く」ことの意味を告げる。歌い継がれるたび、住民は少しずつその原初の一点へ寄っていく。いつか未来に植民地は一つの模様へ溶け合う。個々の自己は消え、代わりに子が全員の共有自己として帰る。一度溶け合えば、人々を別々に分けていたものは戻らない。

政府に告げれば何らかの対策手段が取られる。そうなれば再び住民の中で生まれた子の来歴も消える。

歌わせ続ければ、いつか全員が子もろとも一つになる。広場で口ずさまれる星歌。

ノイは管理局を一瞥し、踵を返す。

歌は今日も明日も歌われ、わずかずつその一点へ近づいていく。

文字数:1114

内容に関するアピール

音楽と栄養食の仕掛けがほぼ全住民に電波する環境、を考え閉鎖空間として火星を舞台にしました。

40,000字はこれまでの2倍以上ということで、膨らませられる要素を多めにしたつもりです。

特に後半の展開がこういう方向性にしたいという気持ちが先行し論理として飛躍してしっくりきてないのと、光円錐をタイトルは響きで最後につけたので、もっと展開と絡めたいので要検討。実作の過程で詰めていきたいです。

文字数:192

課題提出者一覧