梗 概
第ゼロ遺失物センター
西暦2076年。日本では全ての持ち物に識別タグが埋め込まれている。紛失すると遺失物AIが即座に探し出してくれる。最近になって奇妙な都市伝説が広まっていた。
『死んだ人間や行方不明者を「第ゼロ遺失物センター」に遺失物として申請するとみつけてくれる。そのかわり他の一人が紛失する』
第ゼロ遺失物センターは存在しない。
会社員の真壁セイジは三十歳。十五年前に十歳の妹の綾乃を交通事故で亡くしている。あの日、自分が迎えに行っていれば妹は死ななかったと彼は悔やみ続けている。
セイジはネットで第ゼロ遺失物センターの都市伝説を知る。そして、そのサイトを見つけてしまう。遺失物申請画面には、遺失物の氏名、死亡日または行方不明日、申請者との関係を入力する欄がある。セイジは綾乃の情報を入力して申請してしまう。
三日後、セイジの端末に第ゼロ遺失物センターから通知が届く。「品名:真壁綾乃。状態:発見済。受取場所:中央遺失物管理センター」と書かれている。悪質な冗談だと思いながらも、受取場所が実在する公的施設だったため、セイジは通知を持ってセンターへ向かう。窓口で対応した職員・神崎ユナはセイジが持ってきた通知を見て表情を変える。同じ形式の通知を持ち込んだ人が何人かいたのだ。
ユナは実在しない第ゼロ遺失物センターのことが気になっていた。セイジに協力を求めて調査することにする。すると、
・死んだ夫を申請した女性は夫を取り戻したが、息子が行方不明になっていた。
・事故死した娘を申請した母親は娘を返却されたが、今度は自分の戸籍が消えていた。
という事例を発見する。セイジとユナは、都市伝説が現実に起こっていたことを知る。
やがてセイジとユナは遺失物AIの深層ログから、第ゼロの正体を突き止める。
第ゼロ遺失物センターは建物ではなく、遺失物AIが偶然接続してしまった宇宙の外側の人間台帳だった。それには、この地球上に存在したすべての人間の所在情報が記されている。
生きている人間は「所在確認済」、死者や行方不明者は「所在不明」、返された者は「返却済」と分類される。人間台帳にとって、人間の死や失踪は悲劇ではない。ただ、現実世界の中で所在が分からなくなった人間という個体の記録にすぎない。人間台帳の奥には保管領域があり、死者や行方不明者は人間ではなく返却待ちの記録としてそこに並べられている。
セイジのもとに最後の通知が届く。
「真壁綾乃の返却準備が完了しました。代替者を登録してください」
セイジは、妹を戻すために見知らぬ誰かを犠牲にすることはできない。ユナの制止を振り切ってセイジは自分を代替者して登録する。
翌朝、綾乃は十五年前の事故当日の姿で中央遺失物センターに現れる。代わりにセイジの存在が消える。
ユナの端末には新たな通知がくる。
「品名:真壁セイジ。状態:保管中。受け取りを希望しますか?」
彼女は震える指で画面を閉じる。
文字数:1200
内容に関するアピール
都市伝説から始まるコズミックホラーです。
近未来の遺失物管理社会に『死者や行方不明者も遺失物として“見つけてしまう”』という都市伝説を組み合わせて、人間の愛情や喪失感が、宇宙的な仕組みの中ではただの所在情報として処理されてしまう、という不気味さを描きたいと思います。
この梗概だけでは意味不明な箇所がいくつもあると思いますが、しっかりと40,000字を書いて、身近な都市伝説から始まった物語が、調査を通じて少しずつ人間の価値観を超えたコズミックホラーへ変貌していく過程を、楽しく読んでもらえるような作品にしたいと思います。タイトルは考え直します。
文字数:271


