清水の舞台から飛び降りた際の生存率は約85%

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梗 概

清水の舞台から飛び降りた際の生存率は約85%

検非違使の忠明は清身不寺キヨミズデラで不良に絡まれ殺されそうになる。逃げる忠明は清身不の舞台で追い詰められてしまう。底の見えない清身不の舞台、誰一人として飛び降りたことのない舞台を背に絶体絶命かと思われたその時、目の眩む光とともに1人の男が突然舞台に現れた。不可思議な出現の仕方とその男の佇まいや目力に不良たちは逃げ帰る。忠明は男に名前を尋ねると彼は三島由紀夫と答えた。

三島は忠明から色々と聞き出す。今が弘仁年間であること、ここが清身不という宙に浮かぶ寺下町であり、遥か眼下にあると聞く京には天皇、清身不には天子がいるということ。三島は自身が知る日本ではない状況に、個人的な希望を見出だす。自身の知る歴史で成し得なかった天皇を据えた政治運動の結実を天子に委ねることができるのでは無いかということ。いずれ来るべき自身の生きた時代で天子が国民を扇動出来る人材となり、町民が政治運動の核となるよう養成する政治運動都市としての清身不の未来像を描いたのだ。

一方の忠明は、三島の立居振る舞いや日本を思う発言に感化される。気弱で何もなし得ることの出来ない自分を変えるために三島について回ることを決める。三島が清身不での生活に慣れるまでの間、彼の言動全てを忠明は追い、それら全てを自身の虎の巻に書き記した。同時に忠明は三島に教わった通りにボディビルを始めた。

数ヶ月後、三島は自身の楽観的展望を叶えるため天子に会いに行く。その頃には忠明は筋骨隆々となり、不良たちを倒すことが出来ていた。天子は突然会いに来た三島に驚くことなく応対し、三島と討論を始める。天皇と天子の関係性、日本と清身不の関係性の確認に始まり、互いの政治思想や国の理想像などと戦わせる。

良好かつ理想的な討論が交わせているという手応えを感じていた三島に対し、天子が何かを囁くと、三島はその場で自身の腹を切った。その衝撃的な光景を前に何も出来なかった忠明に向かい、三島は「君の中にある熱情を信じます。他のものは一切信じないとしても、それだけは信じる」と言って事切れた。忠明は涙ながら三島に何をしたのかと問い詰めるが天子は答えない。何が三島を凶行に走らせたのかは分からない。真意は分からないが、三島が腹を切ったという事実は変わらない。最期の言葉も変わらない。

忠明は、今の自分の熱情は三島の描きたかった日本という国の実現にあることを確認する。そして三島のこれまでの言動を振り返り、忠明は確信に至る。三島は天皇・天子に固執し過ぎて元来の目的を見失いかけていたということ、彼の理想を実現するには日本に直接彼の思想を伝え根づかせることが近道であるということ。それが今出来るは自分だけということ。

忠明は虎の巻を握りしめると清身不の舞台へ駆け出し、そのまま舞台から飛び降りた。

 

後世、「清水の舞台から飛び降りる」という言葉は「思い切って大きな決断をする」という意味になった。

文字数:1203

内容に関するアピール

「清水の舞台から飛び降りる」というのは「思い切って大きな決断をする」という意味ですが、初めて清水の舞台から飛び降りたとされる忠明は不良に追い詰められたのちに観音様に命乞いをしながら飛び降りたというなんとも情けない話でした。起こりと意味がチグハグなのは、おそらく歴史修正がなされた影響なのだと思います。本来はきっとこんな感じだったのだろうなと思いながら書きました。

ちなみにですが、切腹という行為は平安時代中期からということで、平安時代初期である弘仁年間には存在しないものでした。初めて見た人はきっとびっくりしたと思います。

ここまできて私が三島について全然知らないのに書こうとしていることに恐怖を覚えてきました。実作を書くにあたっての勉強はこれから頑張ります。

せめてタイトルになっている豆知識だけでも持ち帰ってください。

 

参考

https://barso.blog.fc2.com/blog-entry-453.html

文字数:406

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