ドンドコ村のドン

印刷

梗 概

ドンドコ村のドン

ドンドコ村には掟があった。成年した者は外の世界へ旅立ち、あまたの試練を乗り越え、立派な大人になって帰って来なくてはならない。

しかし、村一番の大男・ドンは、それを拒否した。ドンの両親は困惑した。

俺はこの村を愛している。ここで一生を終えるつもりだ。どうせ戻って来るならわざわざ出て行く必要はない。それがドンの言い分だった。

ドンの両親は、その気持ちは嬉しいが、これは村の掟だから、とりあえず一回は出て行ってほしい、と言った。話し合いは平行線を辿り、結局、同世代の者たちが旅立つ日になっても、ドンは動かなかった。

その日以降、ドンの家は村のものたちから白い目で見られるようになった。

あまたの試練、といってもその内情は、ジャングルを抜けて都市へ行き、そこで職を得て、できれば配偶者を見つけ、適当に金を貯めたら戻って来る、というものだ。実際は都市に定住して戻って来ないものがほとんどで、村の大人たちはいつもそれを嘆いている。なのに、こんな辺鄙な村で一生を終えてやってもいいと言っている奇特な若者にケチをつけてくるとは、理解不能だとドンは思った。

困ったのはドンの両親だった。ドンには歳の離れた弟がいるが、それと比べてもドンは働き者ではなかった。というか穀潰しだった。正直なところ、今回の旅立ちで厄介払いができると内心喜んでいた両親は、今後の家計の収支計画に狂いが生じて頭を抱えていた。

考えあぐねた両親が村の長老に相談すると、長老の方でも、村の掟を破ることは絶対に許されない、といった風で、お歴々を従えてドンの元へ説得に赴くことになった。長老たちは、外の世界に行って見聞を広げることが如何に重要かを説いた。しかし、ドンの心には全く響かなかった。

説得を続けていた長老たちは痺れを切らし、村中から腕っぷしの強い者たちを搔き集め、力ずくで村の外へ放り出そうとしたが、ドンは遥かに上回るパワーでそれを蹴散らした。

ドンは態度を硬化させ、部屋に閉じこもるようになった。また、そのドンの様子に感化されたのか、村の若者たちには同じように旅立ちを拒否するものが増えていった。

面子を潰され怒り心頭の長老は、村の秩序を保つために、と、ドンの両親の目の前にナイフを置く。若者の旅立ちの前にはきっかけがあるものだ。大体、そういう時には、近しいものが落命すると相場が決まっておるのだよ。

追い詰められたドンの両親は、部屋の扉越しに息子に問うた。ドンよ、なぜ旅立たないのだ、それでは始まらないではないか、お前の物語が。息子が答える。お父さん、お母さん、今は逃げたいものからは逃げるのがトレンドですよ。

長老から追放を宣言されるのは時間の問題だった。ならばいっそ、と、ドンを除くドンの家族は、自ら村を去ることを決意した。これは決して逃走ではない、と、両親は思った。そして自分たちがいなくなることにより、ドンもこの村を出て行かざるをえなくなることを祈った。

文字数:1200

内容に関するアピール

 カラオケで「カントリー・ロード」(「耳すま」のやつ)を歌うと、いつもラストの歌詞で泣いてしまいます。
 
 帰りたい 帰れない さよなら カントリーロード
 
 別に帰ればいいじゃん、とも思うのですが、そうだよな、帰れないんだよなあ、わかるよ……と、ひとり嗚咽します。なので、この曲は人前では歌えません。もっぱらヒトカラです(あと原曲キーが高くてまともに歌えないという理由もあります)。
 
 人が故郷を離れる(そうせざるをえない)時には、プラスとマイナスの誘因があるように思います。もっと遠くにはいいものがありそうだ! というプラス、もうこんなとこにはいられないよ! というマイナス。

タイトルは勢いでつけたのですが、でもどっかで聞いたことあるな~、と思い検索したら、あ、あ、あれか~、となりました。何も関係ないのですが、SFと関係があると強弁するならタイトルしか掠ってないのでそのままにしておこうと思います。

文字数:400

課題提出者一覧