生贄に立候補したら自分が見つかった

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梗 概

生贄に立候補したら自分が見つかった

三木原と浅野は幼なじみの女子大生。三木原は好奇心旺盛で未知を求めてずんずん進んでいき、浅野はその姿に内心憧れつつやれやれとため息をつきながら着いていくような関係。
 二人が夏休みに冒険気分でツーリングをしていると大雨で山奥の村に迷い込む。そこで村の旅館の娘であるハルに拾われ二人は旅人として歓待される。ハルの優しい手助けもあり都会育ちの二人は田舎生活を楽しむ。
 ある日神社に村民たちが集められ、大雨で土砂が崩れたから解決のため神に生贄を出すと言われる。やっぱやべー村だと二人がビビっていると、立候補者が出る。仲良くなったハルだった。彼女は祭壇に登り箱に閉じこめられ剣でグサグサにされる。
 ショックを受けていると、髪を金髪に染めたギャルが現れる。よく見るとハルだったが無視される。名前も髪型も服装も性格も異なった姿に困惑していると、この村に潜入調査に来ている大学院生が現れ小声で説明する。
 生贄は実は死んでいない。この村は問題があるとすぐ神様に生贄を出すが、出しまくってると人が足りなくなるので死んだと見せかけて別人になり戻ってくる。それは閉鎖的な村で血が濃くならないよう外部から種を欲しがるというマレビト信仰の上で、田舎すぎて外部から来ないから自分達で別人になって外部から来てるということにするという思惑もある。生贄もマレビトも根本的な解決になってないが、浮いた人間の追放と足りないキャラの補充は集団維持として機能している。ハルは旅人を歓待する旅館の娘役として優しく振る舞っていたが、いい子キャラに飽きて不良キャラに自分を変えたのだ。この村は本気で神様を騙し互いに演じ合って生きている。別人になることができるのだ。
 浅野はキモいと思い帰ろうとするが、再びの大雨で帰宅不能になり生贄会議が始まる。するとキャラ変を楽しそうと思った三木原が好奇心立候補する。翌日現れた三木原は体に包帯を巻いて虚ろな目をしていた。浅野は憧れが失われたのかとゾクっとし、本当に変わってしまったのかと尋ね、三木原は答える。「……いや全然。メンヘラキャラの演技してるだけ」浅野は安堵と同時に残念な気持ちがあった。虚ろな三木原に興奮したのだ。そして浅野は村を破壊することを決意する。すると再び生贄会議が起き、キャラ変したい三木原が立候補する。しかしまたしっくりこない。ならさらに浅野が村を壊す。これを繰り返す。お前のファッションショーじゃないんだぞと村民に嫌われるが、追放しても別人になって帰ってきてしまう。だが三木原は本気で別人になることができない。
 ある日浅野が村破壊の犯人だとバレる。村民はキレて生贄じゃなくて警察に突き出そうとするが生贄にしてもらう。初めてのキャラ変を迎える浅野。自分の欲望はわかっていた。憧れの三木原が壊れる姿を見たい。彼女はこの村で本当の自分に気づき、今までの自分を捨て、別人になることを選ぶのだった。

文字数:1198

内容に関するアピール

因習のある村というホラーと見せかけてギャグと見せかけてホラーと見せかけてギャグと……みたいな往復を目指しました。ギャグがやりたくて小説書いてるので、ホラーと対置するのは振れ幅が大きくて楽しかったです。
離れるという課題に応えられてるか正直怪しいのですが、生まれた街とか具体的な場所をテーマにすると全然思いつかないと先月痛感したので、一応移動してるし別人になってるからセーフということにしました。
SFなのかも正直怪しいのですが、村の設定が理論に基づいてるっぽいからセーフということにしました。本作だと登場人物の百合っぽい話になったのですが、村の設定から具体的に突き詰められたらよりSFっぽかったのかもしれません。

文字数:304

課題提出者一覧