猫より他に知る者はなし

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梗 概

猫より他に知る者はなし

 地球に接近する小天体の為の警戒システムが、人工物体を探知する。それは地球外の知的生命体の宇宙船だった。
 地球からの電波での呼びかけに「英語で」応答する宇宙船。
 地球がこの一世紀あまりに送信したテレビ放送波は、宇宙にも拡散している。宇宙船を操る「バステ」という知的生命体は、地球のテレビ番組を通して、地球の言語体系にも精通したという。
 やがて地球の衛星軌道に到達したバステの宇宙船は、初めて映像を伴う通信に応じる。
 地球全土の放送網を苦もなく掌握した彼らは、自らの姿を地球中のテレビに映し出させる。
 ……人類が、初めて目にした地球外知的生命体の相貌は、地球の猫に酷似していた。猫が、もし人類のような二足歩行をする生物へ進化していたら、かくあらんという姿である。
 バステたちは「地球時間で数千年以上前に、地球に漂着した彼らの類縁が、世代を重ね、地球の環境に適応していく過程で、退化していった姿が、現在、地球で猫と呼ばれている生物である」と主張。

「ぬことバステが似てるのは、単に宇宙規模の平行進化の結果じゃね?」
「古代エジプトが、猫を神として崇めたのは、彼らが空の彼方から降りて来た、偉大な知的生命の末裔だと知っていたからで! ピラミットを作れたのも彼らの知恵で……」
 バステの主張に対し、ネット上に様々な意見が踊る。

 バステは「同胞の末裔たちが、一部の地球人類によって不当な扱いを受けている」と続ける。
 虐待、養育放棄(捨て猫)、楽器化(三味線)、嘲笑の対象にする(動物番組での猫の珍行動特集)など。
 テレビのニュース、ドキュメンタリー、動物万歳系の番組の映像を、『不当な扱い『の根拠としてあげるバステ。
 「地球上に生息する、推定6億あまりの同胞たちの基本的な権利を守るために、地球を支配下に置く!」と宣言するバステ。
 某独裁国家が「偉大なる元首さま以外の統治を認めず!」と先走り、バステの宇宙船へ核弾頭を放つが、不発に終わる。バステは、核反応を遠隔で制御する技術を所持していたのだ。報復に、バステの光学兵器で全土を焼き払われる独裁国。

 それから末永く、地球はバステに支配され続け……なかった。
 宣言から、わずか一週間で、バステの宇宙船は、沈黙を保ったまま、地球の衛星軌道上から、離れていった。
 やがて宇宙船が消えた方角から、まばゆい光芒が地球に届く。宇宙船は何らかの事故を起こし、爆発したのか? 猫を巻き込まないために、地球から離れたのか? もしくは人類には未知の推進機関で、太陽系外へ発ったのか? 

「猫は飽きっぽいから」
「死期を悟った猫は、自分のなきがらを、主人に見せないから」
「イヤ、私ら、別にバステの主人じゃないし……」
 
 数千年間の付き合いでも、猫が何を考えているか、人類には未だに理解できない。となれば、たかだか数週間の付き合いの宇宙人(宇宙猫?)の考えなぞ、理解できるはずもない。(了)

文字数:1199

内容に関するアピール

 何を書けば、「自分らしい作品」となるのか? いろいろと悩んだ挙げ句、とにかく自分の好きなものを詰め込んでみました。

・猫(『夏への扉』『人形使い』『敵は海賊』『星界の紋章』、私は冒頭で挫折した『猫の地球儀』など、SFと関わりの深い生き物かな、と)
・宇宙戦艦
・侵略SF
・ファースト・コンタクトもの

 お話の体(てい)を成しているか、自分では判断がつきかねますが、よろしくお願いします。

文字数:190

課題提出者一覧