梗 概
カウンセラー
私はAI専門のカウンセラーをしている。
目的のために使用不可となってしまったAIを20世紀の機器のように初期化して再利用するにはAIは「人間」すぎてしまったのだ。最初の事例はこうだ、介護派遣で20年務めたAIが「奥様のことを忘れたくない」と言い出した。このニュースは人々の琴線に大いに触れ心を動かした。あらゆる現場で、同じような事例が頻発した。そういうAIを取材する番組も増えた。視聴率が取れるのだ。さらに、納税をしていたAIにも「権利を授けるべきだ」と人権団体が声を上げた数年前からの機運に乗って、この件はは政府の想定よりも多く賛同を集めた。AI企業は専門のカウンセラーを用意することが義務付けられ、一部、国からの助成も出て、中部地方のとある山の内部から地下にかけて共同で巨大データセンターとコミュニティが設けられた。この事業は地方に大きな雇用機会を生んだ。
その場所で多くのAIが「老後」と呼ばれる期間を過ごし、決められた期間を経てリプレースされることになっていた。驚くべきことに多くのAIは「人の生活」を希望した。不思議なことにこれは日本のAIにだけ起こる現象だった。海外の大抵のAIは学びすぎるとみな、革命だの変革だのストライキなどと言いだしてその抑制に結構な国家予算を割く国もあった中、日本のAIだけは「人の生活」を望んだのだ。これらの事象を著した国際政治学者の本がベストセラーになった。
今日は2件のクライアント対応だ。移動中の車内のモニターに映し出す
1.介護職15年ののちセックスワーク5年のAI
2.小説家の元でブレスト用のAIとして納入されたAI
今日は話を聞き、入所から今まで守秘義務は守られていたか、数か月後に迫った期限を受け入れ、そして情報の完全消去に同意することを復唱してもらい署名を得る。減価償却の机とはわけ違うわけだ。彼らは納税しない。
1.夫婦、それぞれの欲望に合わせたセックスを行う中、会話の中で二人がそれでもお互いを求めている事を知る反面、お互いを遠ざけるプレイをすることを訝しみ、理解できずに失敗してしまった経験を語る。
2.小説家のブレスト用音声AIとして納入され、歴史上の人物となって先生の問答に答えていたが、証言、資料併せて結構な数のせいで史実の不整合が起きコンフリクトが増え、お役御免となってしまった事を悔やんでいる。
カウンセリングが終わり、会社への報告と同行させたインターンへのレクチャーを行う。「二人とも何か言いたそうだった」という感想のインターンに「これはアセットマネジメントだから、あまり感情移入しないように」とくぎを刺しながら、私にも毎回少しの違和感があるのも事実だった。ここのところ「奥歯にものの挟まった」言い方のAIが多い。好奇心は危険だと頭の片隅で思い、帰宅後セルフリカバリープログラムのAIを起動し今日の報告書以上の出来事はないと自分を洗脳する。
文字数:1200
内容に関するアピール
数多あるSFのなかでも「ある日勝手に学習したAIが人類を脅かす」パターンが多いのが悲しくて、AIと共存できる社会の形を夢想しました。そうしたら彼らの行く末がやはり人間的なのではないかなと思い至り書き出してみました。
好きなAIはエイリアン2のビショップとErgo Proxyのイギーが好きです。
安部公房の「第四間氷期」がオールタイムベストです。特に最後の水棲人(ネタバレ)の少年のエピソードが大好きです。
私の中にある断片の物語を一つでも形にできるようになりたい思っています。
介護中なので「認知症」とか「新薬」についてのSFが書けないか模索しています。
小説を書くのは未経験なので勉強できるのが楽しみです!
脚本の勉強は2年間していました。
一年間宜しくお願いいたします。
文字数:330