The glory of wolves

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梗 概

The glory of wolves

 ≪刀召し≫によって世のすべての刀はお上に奉納された。戦乱の世を経て太平が訪れた日出ひいずでは、もはや刀は必要ない。血を求めて荒ぶる多くの刀は神祇院にて丁重に祀られていた。
異人の血を引く鬼子、忍のヤタが仕える姫はそれらの刀を鎮める巫女であった。
 しかしある時、その中のもっとも血に餓えた一振り、妖刀の磨きの途中で事故が起こる。職人が誤って指先を斬り、その血を受けて妖刀が覚醒してしまったのだ。
 呪いを受けて妖刀に身体を乗っ取られた職人は周囲の者を手当たり次第に惨殺する。姫もまたその被害者であった。ヤタは何とか男を殺すが姫の傷は深く、彼女は帰らぬ人となる。ヤタ自身も重症を負い、気づいたときには妖刀は忽然と姿を消していた。

 妖刀探しが急務となる中、既にその所在はこの国にはなく海外にあることをヤタは知る。ヤタは犯人を殺した時に片目に入った血によって、その所在を知れるようになっていた。
 ヤタは自責と復讐のため単身飛行船に密航し、発展著しい龍動へ。しかし到着早々ヤタは都市を渦巻く毒霧にまかれ気絶してしまう。正規の入港者にはその解毒剤が頒布されていたのを、ヤタは知らなかった。
 倒れたヤタを捕らえたのはヤードの閑職にいる混血の男だった。龍動の貧民街出身のバリーという男は貧民街で頻発し、現在は貴族にまで被害を広げる殺人事件の犯人を捜しており、犯行現場付近にいた異人であるヤタに目を付けたのだ。その犯人が妖刀を使っていることをヤタは察する。
 犯人探しに協力することで自身の疑いを晴らすことにしたヤタ。男は日出から持ち出された刀が人を操り殺していることには懐疑的だったが、協力は受け入れる。

 妖刀の足取りを追い、捜査をする二人。異人を蔑む住人たちの目にヤタは怯えるが、同じ視線に晒されているバリーは堂々としている。それは彼の片方の血が持つ、失われた故郷の風習に由来した。彼らは生まれた頃に守護精霊を選び、もたらされる予言を生涯の指針とするのだ。彼の精霊は狼で『狼のように誇り高く生きること』が彼の指針。だから彼は決して自分を卑下しない。ヤタは自分の指針は何かを問われ、考える。

 主であった姫に恥じない生き方を、とバリーのようにと勇気を奮いながら調査を進めていくヤタ。そしてバリーと二人、犯人に辿り着く。妖刀の力で人外の身体能力を見せる犯人。犯人を制圧しようとヤタは忍の業で、バリーは拳銃で対抗するが犯人の力の方が上回っている。バリーは刀で斬りつけられ、意識を乗っ取られてしまう。
 鍛えたバリーの肉体を手に入れた妖刀の猛攻に、ヤタはなすすべなく防戦一方になる。唯一の望みは彼が妖刀の支配から逃れること。切り結びながら、必死にヤタは彼に声をかけ続ける。

「狼の誇りを忘れたか!」

 その一言で彼はようやく覚醒する。拳銃で自らの腕を撃ち抜き妖刀から手離す。ヤタはその妖刀を封印し、一連の騒動は終わりを告げた。

文字数:1199

内容に関するアピール

少年バトル漫画を意識しています。
スチームパンク調の似非ロンドンが舞台です。
ロンドン×忍×刀×バトル×スチームパンク、好きなものをてんこ盛りしました。
あとバディアクション。

忍のヤタが技名を唱えながら戦うようなバトルアクションのイメージを与えられるような作品にしたいと思います。
大きなバトルシーンは後半に集中しますが、途中途中でもヤタが身軽に屋根を走って犯人を追いかけたり軽業染みた空中アクションをしたり、ビリーがバイクを操りながら二丁拳銃ぶっぱなすような……そんな追跡シーンが入ります。
犯人は人外染みた身体能力を手に入れているのでビルの五階から落ちても大丈夫ですし、銃弾は避けます。

言葉が通じるのはヤタが翻訳機にぶち込まれ、気絶しているあいだに強制的に言語を獲得させられたからです。

文字数:340

課題提出者一覧