グリッチ・ド・キョート=ラン・ド・エスケーパー

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梗 概

グリッチ・ド・キョート=ラン・ド・エスケーパー

亰の町。神社仏閣の連なり、高層建築の合間をルイは仲間と突っ走る。祗圓の屋根をストライドし、ステップを踏み”乱数調整”した勢いで、㓓座を”壁抜け”。そして鴨河に大きく飛ぶ。空中で”無”を取得しグリッチバグ技で、一閃、一気に河を飛び越える

この亰都は、打ち捨てられた仮想空間、虚都ことである。現実の京を模して作られた。が、サポートは遥かの昔に停止。しかし演算実行は何故かそのままに、幾万のNPCのAI達が一般生活を続けていた

この町にはある逸話があった。元旦、仕様にない麒麟の如き幻獣が、町を恐ろしい速度で疾走するというものだ
氏族の大人AIはそれに手を出すなと謂う。が、繰り返す日常の打破を信じた若者AIは、外部からパッチが当てられず、野ざらしになった亰都の”バグ”を利用し、麒麟を捕縛すべく団結した。彼等はバグ技の移動テクを”グリッチ”と名付け、”攻略図チャート”を作り、次の1/1に備え、獣に追いつくため、亰の空間に独自の地図コンテクストを構築し、走り続ける
このチームを作ったのはレナ。しかし、彼女は”昨年”、足に怪我を負った。新リーダーはルイがなり、彼女の怪我に負い目に感じ、今年こそ麒麟を捕まえると決心する

ある日、ルイは知らないはずのグリッチを自然に使っていることに気づく。まるで身体だけ記憶してるような。レナに相談すると、実はこの亰の生活が、外の世界で娯楽となっており、そして、自分はそのための管理AIゲームマスターであると言う
なぜ?外はパンデミックの影響で、人々は他者との接触恐怖症タクトフォビアに陥っていた。故に、この亰都の日常景色が、かつての現実、現在の虚構なのだ
さらにレナは、麒麟は電子の世界を揺蕩う不可解な存在だと説明し、この亰を瓦解させる因子と成りえるため、絶対に捕まえるなと忠告する
納得しないルイにレナは、グリッチによる拿捕の対策として、ずっと前から、この亰は永遠の2019年を繰り返し、一年経つと記憶も含め、”正常状態デフォルト”に戻ると伝える
つまり、去年以前の思い出は、全て設定。そして、捕まえようにも、貯めたノウハウは本来、次年に持ち越し得ない。だが、バグにより、昔のデータが今のルイの躰に漏れ出てリークいる。故に、ルイに全てを伝えた上で、それでも捕まえるなら、管理者権限で阻止すると脅す。しかし、ルイは何かを為せば、NPCでも、人の心を変えると信じ、水面下で準備を進める

そして、来たりし12/31。この亰全体の記憶保持には、システムに無理な負荷をかければ良いと気づいたルイは、大人たちを説得し、祗圓、時台、蒼、他、諸々の”全ての祭り”を同時に作用させる。すると日付は”2019/12/32″を刻み、皆が獣を捕まえるため協力し合う
バグにより崩れていく世界、祭りの熱気、汗に滾る人々。その町を正常化させようと、レナがsudo権限で行く手を阻むが、グリッチを駆使して、ルイはレナを巧みに躱して限界を超えて走り続ける
そして、獣の尾を掴み、その背に乗る。暖かみが躰を包み、ルイはそのまま、別次元の世界に飛び出していった

文字数:1290

内容に関するアピール

ゲームの(バグあり)リアルタイムアタック×パルクールがテーマです。また、ポストコロナSF要素もあります。
パルクールというのは、都市の中で、元来、想定してない道を独自解釈し疾走する競技ですが、それがゲームのバグ技(=仕様に存在しないテクニック)でクリア時間を競うRTAと相同だなと思い、バグ技を利用してAI達が京都の街を疾走する物語にしました。タイトルの後ろ半分はLandscapeと掛けています。
またバグ技は、実際の有名なバグ技のオマージュにするつもりです。(例えば無の取得は、ドンキーコング。12/32は、ぼくのなつやすみ)
そして、虚構のNPCであるAIが、パンデミックの恐怖に囚われた、現実の人々の行動を変えることを表すため、(作品中では明言はしませんが)語り手は第三者視点であり、それが亰の町を見ているユーザーである、とします。

文字数:367

課題提出者一覧