大江戸二進法

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梗 概

大江戸二進法

舞台は、陰陽道が発達した架空の近世日本。
徳川幕府の治世は、陰(0)と陽(1)の順列組み合わせで万象を予測する大機巧おおからくり六壬りくじん”(=スパコン)に支えられていたが、あるとき謎の事故で”六壬”が暴走。それまで受けていた陰陽術の恩恵が逆流し、江戸はいまや最悪の厄災都市だ。あらゆる方角が凶であり、毎日が忌日。即死レベルの不運が間断なく襲い生活など不可能。さらに、京へ避難した陰陽師たちの式神が、主を失い野生化している危険地帯である。
無人の江戸へ足を踏み入れるのは、京の陰陽寮から派遣された二人の陰陽師。
ひとりは、初めての江戸入りでやる気満々の新人、中原 維盛これもり。孤児だったのを陰陽道の才覚で拾われた秀才だ。
もうひとりは、ベテランの安倍 義周よしちか。”六壬”事故の生存者であり、救出されたときは陰陽道の知識以外記憶喪失の状態だった。失われた記憶を求め、何度も江戸入りしているが手掛かりは得られていない。
京は第二の”六壬”建造のため、江戸に残る遺物を回収しようと、陰陽師を何度も派遣していた。陰陽の術があれば厄災都市でも行動できる。
探索を開始した二人に、野生化した式神が襲いかかる。といっても物理的な攻撃ではない。人間は日(陽)を吐き、月(陰)を吸うと言われる通り、天地陰陽のネットワークにつながっている。それを通して送り込まれる呪は、いわば人間という運命主体へのクラッキングである。対する陰陽師は、”火除(ひよけ)”と呼ばれる防壁で相手の侵入を防ぎつつ、式神側のパスコードを専用の式(プログラム)で突き止め制圧する。実力者の二人は敵を退け、探索を続ける。
そんな中、再度襲ってきた式神を新人の維盛が深追いし、二人は禁忌である”六壬”事故跡地へ。そこで強大な式神に出くわすが、相手は義周に従う意志を示す。義周が江戸にいたとき、使役していた式神だった。
式神は、義周から預かっていた記憶を本人に返す。”六壬”を破壊したのは義周だった。”六壬”の予測に基づき、徳川幕府の政策は「生かさず殺さず」を徹底。人々は苦しんでいた。それを救いたかった。
さらに維盛が息子だと気付く。当時赤子だった維盛は事故の際行方不明となったが、首筋の痣は見間違えようがなない。
そして思い出す。自分はここで息子に殺される。そう”六壬”最後の卦に出ていたことを。運命を変えようと記憶を失いまでしたのに、運命は変わらなかった。
探索を切り上げようとする義周を、維盛は陰陽寮の命に背くと殺しにかかる。仕方なく対抗する義周だが、息子相手に本気になれず、維盛の呪を受け絶命。死の間際、義周は式神を維盛に譲る。式神は”六壬”再建の鍵になるが、再建した”六壬”は、人間側から天地陰陽の理へのアクセスを徐々に遮断し、やがては陰陽術自体意味を為さなくなるだろう。誰かの苦しみのうえに成り立つ世界を、息子に渡すまい。そう願う義周の意識はだんだんと薄れていった。

文字数:1213

内容に関するアピール

現代の情報技術を過去の時代で再現する発想は、張冉「晋陽の雪」や劉慈欣「円」などが浮かびます。かのライプニッツが太極図を知っていたのは有名な話で、陰陽と二進法のアナロジーを使った先行作も間違いなくあると思うのですが、「陰陽道 SF」で検索してもヒットしなかったのでこの内容に決めました。課題は「アクション」のほうを採り、式神との戦闘、義周と維盛の闘いでクリアします。バトルシーンは「呪詛玉」や「散供さんぐ」などわくわくする用語をバンバン使って盛り上げたいと思います。

文字数:234

課題提出者一覧