スペース☆指相撲

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梗 概

スペース☆指相撲

木星前方トロヤ群、第624番小惑星、アキレス。羊農家の娘として産まれた志津枝は、親の願いとは裏腹に、いつしか機械技師を目指すようになっていた。隣町のズンやミシュワーグとは幼馴染でギーク仲間でもある。
小惑星帯は、その統治の難しさから昔ながらのシング(民会)を星ごとに持ち、村々の代表が集まって統治の方針を決める。とはいえ平和な小惑星、言ってみれば議会にかこつけた大人の宴会である。志津枝のいる腱之村の代表は、彼女の父親だった。

ある日、志津枝はズン、ミシュワーグと喧嘩をする。どの村の宇宙羊が美味いかという子供じみた口論だったが、その内容は大人たちのプライドをくすぐるのに十分だった。大人げない年嵩連中が参戦したことで、羊の味、引いてはそのために必要な水や有機資源を巡ってまるで祭りのような状態になってしまう。
シングの定めるところ、身体的な喧嘩は禁止されている。小惑星では些細なきっかけで大事故を招くため当然のルールである。そこで仲裁のため代理戦争が行われることになった。ランダム関数による神託の結果、競技はロボット指相撲。そして参加者は、発端となった三つの村の代表…すなわち、志津枝、ズン、ミシュワーグだった。

ルールは五つ。
・ロボットで手と親指を作ること。
・手同士をジョイントで連結し戦うこと。
・格納状態で1メートル四方、制作総額300ソル以下であること。
・争いは小惑星の外、つまり宇宙空間で行うこと。
・親指とジョイント部分への攻撃は禁止だが、それ以外は自由であること。
あまりの展開と重大さに志津枝は抗議するが、勝っても負けても、それは親たちの責任だから気にするなと言われてしまう。

戦いの日。お披露目会が行われる。志津枝が作ったのは5本の指。姿勢制御用にたっぷりと燃料を積みセンサーもたくさん備え準備万端のつもりだったが、対するズンはすべての関節と指が無限回転する上、指自体が20本もある有様。ミシュワーグにいたっては金属素材ですらなく、ムチ状のしなる粘着質の素材である。あまりの卑怯さに呆然とするなか、盛り上がる大人たち。やがてエアロックから宇宙空間に放り出され勝負が開始される。その様子は周辺にも同時中継されている。
がっぷりと組み合い、戦い出す三体のロボット。関節の回転に伴う反作用や、互いのスラスターの影響でうまく操作すらできないひどい戦いのなかで、三人は互いに悪口を言いながら戦う。志津枝は敵の親指以外を指パッチンで破壊したり、指の粘性をスラスターで固化したりすることでなんとか勝利する。

宴会は最高潮となった。大人たちは、これこそが目的であり、皆が仲良くこの星で暮らせれば良いのだ、と言った。真っ赤に怒る三人だったが、この戦いで機械に対する知識が深まり、そして費用を村々が出し応援してくれたことを理解し仲直りをする。
やがて羊料理が運ばれてくる。どの村の料理も美味い、と皆で褒め称え合うのだった。

文字数:1200

内容に関するアピール

「アクションとスピード感」に応えるため、色々な案だしをしました。王道モノも色々考えたのですが、スケールを大きくしたり小さくしたりするなかで、ふと「宇宙空間で指相撲をしたら、どのような動きになるだろう?」というアイデアが浮かびました。
互いの行動による反作用でとんでもないことになると思っていて、それをうまく物語に落とし込めないか考えたのが今回の作品です。

よろしくお願いします。

文字数:187

課題提出者一覧