鏡の裏

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梗 概

鏡の裏

僕が学校のトイレで手を洗っていたら、目の前の鏡がいきなり割れ、かけらのひとつが僕の目に入った。ついでに、その鏡から少年が飛び出してきた。
いつのまにか直っていた目の前の鏡に映してみると、僕の左の眼球は鏡になっていた。
少年は僕を引っ張り学校を飛び出る。少年はその辺りで手頃な鏡を見つけるとハンマーを出して割った。鏡は液体みたいに波打ち、少年と僕はその中に飛び込んだ。

鏡の向こうは、僕の知ってる日本とは全く違う世界だった。道路は舗装されておらず、乾いていて暑い。
アーロンと名乗った少年の家で、僕は彼の話を聞く。
アーロンの持っていたハンマーは亡き父からもらったものだ。これで鏡を割ると違う世界につながる。神様がくれたもので、秘密にしろと教えられている。
しかし、この町を牛耳る巨大な「会社」がそれを狙っている。鏡の裏と表の国をつなげ、ビジネスしようとしているのだ。「会社」はすでにハンマーをどこかから一つ手に入れている。
アーロンと打ち解けたところで僕たちは町の食堂に行くが、そこで追手に見つかり、鏡を割って世界を行き来しながら逃げる。
その途中で僕は、目を閉じると裏の国にいる時は表の国の、表の国にいる時は裏の国の様子が見えるようになったことに気づく。目の中の鏡のおかげだろう。
僕とアーロンはついに、鏡がない路地に追い詰められる。アーロンは僕に「最後の手段だ」と言い、僕の目にハンマーを入れる。僕の目の中の鏡は液体になり、アーロンはその道を使って逃げ、僕の目はもとに戻る。
僕はハンマーを持っていないとわかると追手はアーロンを探して去ってゆく。

僕はひとりぼっちでアーロンの家に戻る。僕は友達になれた気がしていたのに、アーロンは僕の目の中の鏡だけが目的だったのだ。
間もなく家に戻ってきたアーロンに僕は殴り掛かり、ハンマーを奪い取ろうとする。
しかし、アーロンは僕を助けるために目の中の鏡を割ったのだと説明してくれる。「会社」のやつらは目の中に鏡がある人間を絶対に研究材料にするだろう。
かたい友情で結ばれた僕とアーロンは「会社」に忍び込み、相手のハンマーを奪おうと決める。

アーロンが会社に捕まる。しかしアーロンはハンマーを持っていない。ハンマーをどこに隠したのか問い詰められてもアーロンは答えない。そこに僕が、アーロンが隠し持った手鏡から現れる。僕の目の中には再び鏡が戻っている。
僕たちは「会社」のビルの中を走り、トイレの鏡を割って「表の国」へ逃げる。追手は追跡しようと、鏡を割るためハンマーを振り上げる。僕はその瞬間を目の中の鏡で見て、相手より早く鏡を割る。追手は空振りし、僕たちは隙をついてハンマーを奪う。
僕たちは二つのハンマーを持ったまま、「会社」の高層ビルの窓から飛び出し、次は僕の持っていた手鏡を割り「表の国」へ戻る。
僕たちは学校の屋上に転がって、勝利を祝う。

文字数:1175

内容に関するアピール

ダイアナ・ウィン・ジョーンズが大好きです。彼女の作品に「クレストマンシー」というシリーズがあります。その設定では、歴史上の重大事件があると「あったかもしれない」平行世界ができる。クレストマンシーという大魔法使いはその平行世界を魔法で行き来できます。「魔法使いハウルと火の悪魔」では、動く家のドアノブをまわすと魔法の国にある動く家から現代につながります。
鏡の裏と表の国はそんなイメージです。

文字数:194

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