梗 概
異形の業
未来。人間は異星人の家畜となっていた。様々な品種改良を施され、肉体は変わってしまった。
その中の一つに、ブラッドスポーツ用があった。
全身が脂肪で膨れ上がり、首は消え、目や耳といった急所は埋もれている。そしてドーパミンとアドレナリンの分泌量増加。前頭葉の意図的な退化。この二つにより、高い攻撃性を持つ。
ここから更に主人好みに改造される。いくつか例を挙げよう。
全身の体毛が鋭く硬い針鼠人間。
体を二つに分け同時攻撃してくる一人二役人間。
昆虫みたく骨格構造が皮膚骨格となっている骸骨人間。
植物の蔓の様な鞭が沢山生えている紐人間。
頭部も胴体も手足も細長く太い蛇人間。
四本腕四本足で縦横無尽に動く蜘蛛人間。
巨大な丸い胴体から無数の手足が生えている肉団子人間。
三人の上半身を合体させて死角を無くし手数を増やした阿修羅人間。
これらが檻に押し込められ争う。異形戦士の闘技会は、凄まじい人気を誇った。
そんな戦士達の中で、一際活躍している男がいた。彼の名前は小天狗。
彼の外見に大きな改造はない。細長い尾に似たものが一つ付いているだけだ。だが、関節や神経系といった中の改造は凄まじい。その改造は流行りとは異なり、人体の運動効率強化を目的とした。
小天狗の戦い方は、旧人類の格闘技と武術を下地に、地味で堅実なものだ。
彼の主人は見栄えより勝ちを求め、実験として旧人類の白兵技術を小天狗で試した。
小天狗が結果を出すと主人は喜び、更に学ばせた。小天狗も学び技を使うことを楽しんだ。名前も旧人類の達人からとった。
尾も技術の付属品として有用だ。
旧人類の白兵技術が重要したのは前進、落下、回転の三つ。即ち尾が自然と振られる機会が多く、余計な動きを覚えなくていい。股間と背中の防御にも便利だ。複数の関節を同時に極めることや、フットワークの補助にもなる。何より元の人体バランスを崩さない。
派手さを重視する戦士に対し、地味ながらも合理性を持った小天狗が勝つのは当然であった。
勝ち続けるにつれ、小天狗は不満を持ち始めた。新しい試みは必要無くなり、無感動で作業的な戦いばかりになったからだ。
そんな時、異星騎士と異形戦士が戦う演目が行われることになった。
異星人側は1人だが、異形戦士側は複数人で一定時間生き残ればいい。しかし、これに送り込まれる事は実質的な死刑だ。この条件でも、異星人側の一方的な虐殺になる。
小天狗は志願した。死んでも構わなかった。強い相手がいるのだ。戦う理由はそれだけでいい。
主人も賛成した。最早客は小天狗の地味な勝利に喜ばない。儲けの為に勝ってほしかったが、勝ち過ぎた。実験も十分だ。最後に使い潰す先としては悪くない。
初めて技術を使う相手に苦戦し、小天狗は異星人の剣に倒れた。異星人が小天狗の死を確かめようとしたその時、今まで使うことのなかった技、騙し打ちで相討ちに持ち込んだ。
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内容に関するアピール
SFである意味を持ったアクションということで、ゲラゲラワッハッハなどっきりびっくり人間ショーにしました。
ただそれだけだと、全員一発ネタかまして終わりなので、色々できそうなな奴(モデルは武田惣角)を主人公に据えました。
格闘技目的で人体に何か一つ付け足すのであれば、尾が最適だと考えています。
多分寝技組技は完全に無効化できますし、打撃にも使い道が沢山あります。
大晦日に尻尾生やした人間出て来ないかなぁ。
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