梗 概
機械仕掛けのバベル
宇宙への人や物の運搬手段として、軌道エレベーターが活用されている近未来。
世界で7つある軌道エレベーターの1つである「アトラス」の基部は、横浜港にある。
高塚洋介の妹・亜須香は、アトラスの静止軌道ステーションの技術者として働いていたが、半年前に職場で事故死をしていた。
洋介は、亜須香の遺品の日記から、亜須香が仕事で何か大きな悩みを抱えていたことを知る。
そんな時、週刊誌の記者・三橋浩平が洋介にコンタクトしてきた。
三橋はアトラスの安全性に欠陥があるという噂を追っていて、事情を知るアトラスの関係者の情報を集めているという。
洋介は亜須香の死が事故死ではないと考え、真相を調べる決意をする。
洋介は、三橋の協力を得ながら亜須香の遺品を調べると、アトラスの「クライマー」と呼ばれる、人間や貨物を運搬するための昇降装置の制御プログラムに欠陥があり、その隠蔽に亜須香の上司・赤坂基行が関与していることを知る。
欠陥を世間に公表するべきだと主張する亜須香と反対する赤坂は、トラブルになっていたようだった。
亜須香が事故死した日は、赤坂との面談が予定されていた。
赤坂が、亜須香の死に関わっている可能性が高いと考えた洋介と三橋は、赤坂に会うためにアトラスのクライマーを訪れる。
宇宙空間へ向けて上昇するクライマーの中で、洋介が赤坂を問い詰めようとすると、クライマーが突如猛スピードで地上へ向けて降下を始めた。
クライマー内のコントロールルームで緊急停止を行えるはずであったが、クライマーは停止操作を受け付けない。
このまま時速200kmの速度で降下を続ければ、横浜港の基部に激突し、乗り込んでいる人間の命はない。
狼狽した赤坂は「クライマーの暴走は、欠陥を隠蔽したい上層部が自分を殺すためだ」と口走る。
洋介が赤坂を詰問すると、クライマーがテロリストに占拠された非常時のために、クライマーのコントロールを静止軌道ステーションから遠隔操作できる仕組みがあるという。
遠隔操作を解除するには、クライマーの外壁に備え付けられている、電波の受信装置を直接操作する必要がある。
洋介と三橋は防護服を着用し、メンテナンスハッチからクライマーの外壁へ出て、受信装置を目指す。
あと少しで受信装置に到達しそうになった時、三橋が洋介の命綱を切断し、空中へ放り出そうとする。
実は三橋は週刊誌の記者ではなく、アトラスの欠陥を闇に葬りたい、アトラスの運営会社の上層部に雇われた人物だった。
亜須香を事故に見せかけて殺したのも、三橋だった。
クライマーの外壁に取り付きながらの格闘戦の末、三橋は外壁から虚空へ落下していく。
洋介はクライマーの暴走を止めることに成功し、地上に生還する。
そして、アトラスの欠陥を世間に告発して、亜須香の無念を晴らしたのだった。
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内容に関するアピール
猛スピードで降下する軌道エレベーターで展開するアクションがクライマックスになる話です。
軌道エレベーターが存在する近未来をリアルに感じられるよう、世界観のディテールを丁寧に書いていきます。
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