人類が宇宙世界に生息圏を拡大した時代。人類は、ワープ技術を発達させ、様々な星系で開発を行なってきた。宇宙医学が解明できない病に、時間障害があった。共通の時間軸で成長することができなくなる障害で、その障害の症状は人によって異なっていた。前時代的な宗教が時間障害の救済にあたっていた。地球と同じ周期で太陽系を周期することで、時間感覚を取り戻せたという噂が流れていた。すでに地球は存在しなかったため、【故地球】と呼ばれていた。遺跡収集者や地球巡礼者で時間障害のあるものが、もとの時間感覚を取り戻したことが、その噂を広めた。宇宙政府は、時間障害治癒目的の地球巡礼に対して禁止令を発表していたが、藁にもすがりたい時間障害者たちは、故地球へと向かった。空賊や素人艦艇による違法巡礼や巡礼者を狙った犯罪が蔓延っていた。
　職業的巡礼者のソラは、故地球への巡礼を臨む人々のガイドを担っていた。公的な職業的巡礼者は、巡礼のための宇宙通路を熟知し、安全な巡礼をサポートしていた。年季を迎えたソラは、最後の客として巡礼者ララを案内することとなる。予備情報と異なり、重度の時間障害による逆言語を抱えていたララ。逆言語とは、発話の順番とは異なって言葉が発せられる障害の一つで、ララは逆言語を調整するための特別な装置を持っていた。その必死の懇願によってソラは折れ、多くの免罪符故地球の遺物を集めることに協力することを条件に巡礼へと出発した。職業的巡礼者は、その犯した罪のかわりに、円環的な故地球の軌道を周期し続ける決まりとなっていた。散らばる故地球の遺物を手に入れることで、罪を償うことができたのだった。
　ソラの犯した罪は、故地球の殉教者への冒とくであった。幼少期にワープ技術のミスで重篤な時間障害を受けたソラは、両親に捨てられ故地球で素人空賊のグループに拾われ、命をつないでいた。巡礼地に祀られている数々の殉教者たちの遺物を争いのもと強奪したのだ。実はソラ自身も、円環周期を続けることで、時間障害を克服したのであった。
　ソラと接待人の場所を訪ね行きながら、新たな故地球の遺物を見つけて行くたびに、ララの時間障害は癒されていった。巡礼の道中で装置が壊れ、円滑にコミュニケーションできない中、ララが何かを伝えているのにソラは気づく。ソラの体がしだいに異形のものと変化していることをララは伝えようとしていたが、ソラ自身はそのことに気付けないでいた。巡礼の最後、故地球の遺物を手入れたとき、ララの時間障害は回復したものの、ソラの異形となった体は元に戻ることはなかった。違法な手口で遺物を強奪したソラの所業により、天罰を受けたのであった。
　腰はひしゃげ、歩行もままならなくなったソラは、それでも罪を免れようと再び巡礼へと旅った。