羽根がなくても少女は飛べる

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梗 概

羽根がなくても少女は飛べる

 地方都市に暮らす真智夏は由緒ある家の娘だが、家に頼ること、曲がったことが嫌いである。独善的な教師・雨海に反抗した真智夏は、あれよあれよという間に学校内で孤立し退学を迫られる。ネット上では真智夏がパパ活をしているかのごとき書き込みが多発していた。雨海の仕業だと確信した真智夏は、休学しているクラスメイトの三実の力を借りられないかと彼女の家を訪れる。天才的な頭脳を持つはずの三実は、自宅のガレージで自分を天使にしようとしていた。
 体が弱く友人もいない三実は、天使に会うのが夢だった。コンピュータの扱いは天才的な三実だが、鳥の羽で作った天使もどきについてはお粗末な有様だった。真智夏が自分の家にある古い天使伝来のものを渡すことを条件に、三実は真智夏を手伝うことを承諾する。もともとこの町には「鎌倉時代後期に天使が舞い降りた」という明らかに眉唾な言い伝えがあり、真智夏の家にその天使が残したという箱がある。当然真智夏は本気にしてはいなかった。
 雨海は生徒達のSNSを把握し、架空の生徒のアカウントを大量に持ち、ハッキングも駆使して生徒たちの意見を操っていると三実は探り当てる。雨海は学校を足がかりに、政治家をもコントロールしこの国自体を乗っ取るつもりだと二人は知る。事実を広く訴えるべきだと真智夏は言うが、三実は自分たちには関係ないと相手にしない。
 真智夏は報酬の箱を三実に押しつけ、三実と喧嘩別れする。真智夏は証拠を手に入れるために雨海の家に忍び込むが、見つかり拘束されてしまう。雨海は真智夏のパパ活の噂を事実にすればいいと、真智夏のSNSアカウントで実際にパパ活の交渉をし、真智夏を拘束しホテルに連れて行く。
 残された三実が箱を開けると、中には古い一枚の羽根が入っていた。どう見ても古いただの鳥の羽根だったが、真智夏がいつもつけている髪飾りにも似ていた。三実は真智夏のアカウントを見て、彼女が雨海の手中にあることを悟る。
 雨海が呼んだ客と半裸のまま部屋に置き去りにされた真智夏は、何とか逃げ出す方法を探る。そのとき客の携帯が着信し、鳴り止まなくなる。同じ現象は町のあらゆる端末で起きており、三実の仕業だった。客の隙をついてシーツをかぶって逃げ出した真智夏は、ホテルの外階段に追い詰められる。階段の下には三実がいて「飛び降りて」と叫ぶ。四階の高さから飛び降りて無事とは思えなかったが、「私を信じろ」という三実の言うままに真智夏は飛ぶ。シーツがパラシュート代わりになったのか、地上の三実のもとに真智夏はふわりと着地する。
 真智夏は天使の子孫なのだ、と興奮した様子で三実は話す。彼女の手配で、雨海のしていたことはネット上ですべて明らかにされていた。伝承と想像だけを根拠に飛び降りろと言ったらしい三実を真智夏は信じられない思いで見つめるが、思わず笑い出してしまう。

文字数:1177

内容に関するアピール

二人の少女が主人公のジュブナイルです。

文字数:19

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