SFは「未来の文学」と言われてきました。来るべき未来を小説のかたちで予測することがSFの重要な機能のひとつだった時代もあります。
いまや、ストレートな未来予測の物語は、ジャンルSFの中では少数派。また、10年先、20年先ならともかく、今世紀後半以降の未来をリアルに空想することはたいへん困難でしょう。
しかし第1回は、あえて、この困難でベタなテーマに挑戦していただきたいと思います。すなわち、
「100年後の未来」の物語を書いてください。
西暦がまだ続いていれば、2119年。人類文明は滅亡しているかもしれないし、意外にいまとそんなに変わらないかもしれません。時代設定がざっくり100年後でさえあれば、「100年後の未来」をこと細かに描写する必要はありません。人類100年間の歩みや、「100年後の世界はこうなっている」という説明を作中で披露することは、物語にとってはむしろマイナスになります。説明ではなくストーリーから「100年後」感を出せればそれがベストですが、「100年後はこんな感じかもなあ」と読者を納得させることさえできれば、やりかたは問いません。
短編SFの時代設定に「100年後」が選ばれることはめったにありませんが(そのぐらいハードルが高い)、日経「星新一賞」のジュニア部門(中学生以下のみ対象)は、毎回「100年後の未来を想像して物語を書いてください」という課題が与えられています。同じテーマに大人が本気で挑んだらどうなるのか。第4期SF講座、最初の腕試しとして、正面から(あるいは搦め手から)トライしてみてください。健闘を祈ります。
(大森望)