211x年のメタガール

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梗 概

211x年のメタガール

 作品の打ち合わせ。物語の今後について作者と議論を交わすのは、作品の「キャラ」。「主人公」のニコが作者や他のキャラの意見に反論している。
 すると突然打ち合わせに作者の娘さんが入室してきた。数年振りに現れた娘さんは高校三年生になっており、ニコたちの年齢を超えていた。
 
 22世紀を前に「強いAI」の技術が確立する。設定した「人格」に応じて、自ら物事を考え行動するAIが作成可能になったのだ。
 AIの発展は「物語の創作」にも影響を与える。それを決定的にしたのは拡張概念である「メタ人格」の存在。「自らが物語のキャラだと認識し、より良い物語の創造を第一に考える」人格をAIに付与することで「作者とキャラが共同で物語を創る」時代が幕を開けた。
 
 娘さんは中学二年生から作品を読まなくなり、ニコたちと交流しなくなっていた。だが久し振りに現れた娘さんは今まで読んでいなかった話を読み進め、その感想をニコに語るようになる。
 
 作者は2107年に作品を発表した。高校二年生のニコたちが「211x年」という「少し未来」を舞台に「少し変な」学園生活を繰り広げる作品は人気を博し、2119年現在も連載中である。
 だが来年には2120年を迎えるにも関わらず、211x年という設定は変わっていない。2110年代に入ると「少し未来」は薄れていき「現在」の話になることが多くなっていた。
 22世紀最初の年に生まれた娘さんが「2119年の高校三年生」になっていたことも、ニコの感情を揺さぶるには充分だった。
 そのため物語の年代を「212x年」に変え、当初の「少し未来」を維持することをニコは作者に提案する。だが読者が望んでいるのは「211x年という時代」の物語であることを作者はニコに告げる。
 
 ニコは悩む。現実が212x年を迎えようとする中、自分たちだけが211x年という「過去」に取り残されることに。
 だがニコ以外のキャラは悩まない。円滑な議論のために「創作の妨げになる感情」はメタ人格から削除されているからだ。
 ニコは作者がデビュー前に創作した旧式のメタ人格を有しており、「自らのメタ性に悩む」という「バグ」が残り続けている。あまりにも古すぎて修正パッチを当てられないのだ。
 
 一方でニコは娘さんの感想を聞き続けていた。そして2119年最後の連載を読み終えた娘さんは、これまでとは違う心情を吐露する。
「ニコは変わらないね」
 娘さんは都会の大学を目指しており、実家から離れる前にニコたちに会いたくなったそうだ。何故急に作品を読まなくなったかについて娘さんは多くを語らなかったが、「ニコたちはあの時のままで私を待っていてくれた」と語る娘さんを前に、ニコは「変わらない」ことの意義を見出す。
 
 212x年、大人になった娘さんは久し振りに帰省し、「211x年」という「少し過去」の「少し変な」学園生活を繰り広げるニコたちに会いに行く。

文字数:1200

内容に関するアピール

 2119年という中途半端な年をどうするか悩んでいると、ふと「211x年」という言葉を思い付きました。
 199x年の出来事から始まる某漫画が連載されていたのが1980年代。199x年は数年から十数年後の「未来」。しかし1990年代になると急速に「現在」に飲み込まれていきます。最後の199x年となった1999年になっても文明は滅びず、2000年代を超え201x年最後の年を迎えた今、199x年は既に「過去」となりました。
 若いときに読んだ物語の年代やキャラの年齢をいつの間にか追い越してしまったという経験は、ほとんどの人が通る道でしょう。
 しかしそれを「物語のキャラ」という立場から見たら? 若かった読者が年齢を重ね自分を追い越していく。成長する読者を見上げながら、物語という「止まった」世界の中でキャラは一体何を感じるのでしょうか。
 これは2119年という「現在」が、やがて「過去」になる物語です。

文字数:400

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211x年のメタガール

SF創作講座事務局よりお知らせ(2020.12.9)

本作品は公募新人賞への応募のため、公開を停止しております。

文字数:55

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