晴れの海から

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梗 概

晴れの海から

晴れの海から

晴れの海からローバーとスカイバブルが一定のリズムを刻んでホップしながら接近してくる。月面上空2000km、最接近まで500kmの楕円軌道上。地球では今夜は月齢18日を過ぎた頃だろうか。ローバーには地球人の血統を持つ月面人が2人。スカイバブルには、耳垂れ月海ウサギ1羽。

月軌道プラットフォームゲートウェイからの資材を受取る為に2人と1羽は通信コンタクトレンズへ、ルリビタキの囀りリズムの瞬きで切り替える。

ややブルーグレーのフィルターがかった視野の先に、選択ポイントがあり視線を送ることで合図を送る。軌道上のプラットフォームゲートウェイ「オリオンV宇宙船」へと。

150年前、人類は初めて月面へ降り立った。

85年前、人類は赤い大地へ降り立った。

西暦2119年の現在は月面軌道上の基地を経由して太陽系惑星間旅行を開拓し、カッシーニの環までのプラネットトラベル及び現地アクティビティを楽しむ人々がいる。

地球上への深海アドベンチャーを好む人々、第二次火星基地建設ブームによる惑星間移住、衛星フォボスとダイモスへのアクセス旅行が人気プランとなっている。

トップランナーの日本を主軸にした国際探査機チームたちが火星と木星の間にある小惑星ベルト帯へと惑星起源の謎や資源を求めて遠隔採取をする一方、宇宙遊歩者と呼ばれる芸術家たちは単身用小型宇宙船クォークへ乗込み、イオン噴射のついた宇宙服を纏い、トロヤ群から好みのC型小惑星等を見つけ出すゲーム機のホログラムをアームバンドに設定しナビゲーターとして向かう。磁気センサーで衝突防止装置があるとは言え難易度の高いアクティビティだ。コンタクト型カメラに接続できる探査機からの鮮明な画像データの方が美しく立体化された映像が見えるにも関わらず、リスクを負ってまで見に行く前時代的な人々。口頭で小惑星番号を呟くか、好みの環境をオーダーすれば自動的にリアルタイムから好きな時代のデータまで再現してくれるにも関わらず。

そんな変わり者達をフォロー&ガイドするのが、ガモフJU42とカツヒコiPM 3K、綿あめの様な毛並みの月海ウサギ、ジャスミン999のチームだ。

一方、ホットアースの環境へ向かいつつある地球では、海中シェルターを保有するものと赤道付近の国々の紫外線変換技術を応用したコロニー都市在住者、身体機能の進化した高山地域在住者の限られた地域の人々が残り、惑星間移住者、主に火星。又は太陽系を離れ木星型惑星を目指す為、コールドスリープする人々などが地球を離れている。

月面コロニー、月面天文台、惑星間トランジット用月面ステーション、人類の宇宙への一歩となった月面科学エリアは惑星間旅行へ行く前の事前研修施設となっている。2人と1羽はそこに従事する1チームである。満月を過ぎた頃、今回のトラベラーを迎えにプラットフォームゲートウェイへローバーとスカイバブルを走らていく。

 

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