トリック・オア・バイオメトリックス

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梗 概

トリック・オア・バイオメトリックス

ハロウィン近づくカナダ東部の田舎町に、移動式サーカスのテントと遊園地が設置された。感染症対策の顔認証用カメラ(映る側は自分の姿を目視不可)を入場口に置くと、外見は普通の人間の子達の中に、エイリアンのような異形の姿でカメラに映る者が現れる。現場担当のカナダ人男性Aはシステムの誤作動を疑い、製造元の日本企業に問い合わせ、SE担当の日本人男性Bが調査に来訪。顔認証に必要な生体認証技術(=バイオメトリックス)のシステムを調べたが異常はなかった。「画像認識はAIの深層学習により培われたもの。蓄積してきた膨大な数の画像の中に、エイリアンとみなすための特徴量(=顔バランスや表情を含む個人情報)があるはず」とBは言い、過去の分から該当データを抽出。異形に映った子らとの共通事項を探る。

異形に映る子は数を増し、彼らが腕を振り回すと見えない力で物が吹き飛ぶ等、超人的能力を見せ始める。実体はエイリアンではと、AとBは警察に相談するが相手にされない。事態解明のため、二人は独自で新データの収集に努める。屋外のドローン撮影で、子らが町外れの森で楓から樹液を飲む映像を捉えた。樹液は秋には出ないはずと不審に思うA。飲んで異形の度合いを増す彼らの中にはAの幼い娘の姿もあった。

B曰く、「新種の楓の樹液摂取による遺伝子の突然変異では?」抽出した過去データと子らとの共通事項の一つに、楓の生息地と各々の撮影場所が近いという事実も発覚。製薬企業勤務のAの妻が薬剤治療を提案する。

AとAの妻、Bの3人で製薬企業の重役(自分の子の異変に気づいた)に掛け合い、新薬を急ピッチで開発。娘に投与すると、カメラでの姿も能力も元に戻る。しかし、正常なマウスの臨床試験では副作用が強く出て無差別には使えず、子らはバレないよう悪戯するので親の協力も仰げない。企業は新種の楓の毒性を指摘し森は封鎖される。

Aの妻が、ガンの病変を顔認証技術で見分ける内視鏡検査の話をする。「ガンにも顔つきがあり、ガン化する前のポリープを高精度のアルゴリズムで解析できる」その技術を活用すれば、異変の進行度に関係なく遺伝子変異の有無が判別可能とBが思いつく。Aが奔走して築いたデータベースに、さらなる最新技術※も搭載されて「エイリアン」認証率99.9%のバイオメトリックス・カメラが完成する。

ハロウィン当日、子ども達は顔の一部が隠れた仮装で来場するが、新カメラで遺伝子変異の有無が瞬時に正確に判別され、異形の姿で映った子らには新薬成分入りの飴が配られる。食べて元の姿に戻ったと園内の特殊モニターで確認し、安堵するA達。だが、一人だけ樹液の過剰摂取により耐性の強い子がおり、映像に異形の姿を残して逃走し行方をくらます。

Aは科学専門外の自分も最新技術の向上に貢献できたと実感。「救われなかった子をいつか救うためにも、協力し続けたい」AはBにそう言って研究意欲をかき立てる。

文字数:1200

内容に関するアピール

・実作では各キャラの個性を深め、顔認証のAIも台詞付きで親しみやすさを意識して書く。

・異形の子らは瞳の虹彩の収縮速度が通常の倍以上速い、指の静脈血流の速さが異常等、微細な違いが特徴。技術の進化と平行して、データ収集に駆け回る人の苦労・人種を超えての協力等、精神面の成長も描きたい。

※さらなる最新技術の例:顔認証に指紋・行動認証等を追加した「複数認証」/処理スピードの最大20倍高速化が期待されるアルゴリズム「SPRT-based algorithm that Treat As Nth-Order Markov Series:SPRT-TANDEM」(開発者:バイオメトリクス研究所主任 海老原章記様ご了承済)

顔認証技術の第一人者の今岡仁様(NECフェロー・令和5年春「紫綬褒章」受章)、取材協力及び梗概への沢山のご助言に深く感謝申し上げます。 
参考ご著書「顔認証の教科書」

叔父竹中裕二氏の親身な協力にも厚く感謝。

文字数:400

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「トリック・オア・バイオメトリックス」

※入院治療のために執筆できなかったので、梗概修正分の実作を次回のお題にて提出予定です。
※前回の梗概にて、「新種の楓の樹液摂取による遺伝子の突然変異」とありましたが、「町の湖に隕石が落ち、謎の成分が湖に浸透してしまう。そこで子ども達が泳いだことで体内に影響を与える」という内容に変更します。アイディアをご提案くださった受講生の藤 琉様、誠にありがとうございます。
※受講生の渡邉清文様、結末に余韻を持たせた方が良いとのご助言に深く感謝申し上げます。
一人だけ逃げた子どもを追うと、その先には湖があり、水面がうっすらと光っていたという描写を追加しました。

「トリック・オア・バイオメトリックス」梗概修正分

ハロウィン近づくカナダ東部の田舎町に、移動式サーカスのテントと遊園地が設置された。感染症対策の顔認証用カメラ(映る側は自分の姿を目視不可)を入場口に置くと、外見は普通の人間の子達の中に、エイリアンのような異形の姿でカメラに映る者が現れる。現場担当のカナダ人男性Aはシステムの誤作動を疑い、製造元の日本企業に問い合わせ、SE担当の日本人男性Bが調査に来訪。顔認証に必要な生体認証技術(=バイオメトリックス)のシステムを調べたが異常はなかった。「画像認識はAIの深層学習により培われたもの。蓄積してきた膨大な数の画像の中に、エイリアンとみなすための特徴量(=顔バランスや表情を含む個人情報)があるはず」とBは言い、過去の分から該当データを抽出。異形に映った子らとの共通事項を探る。実は奇怪な現象の起こる少し前に、町の小さな湖に隕石が落下していたが、それと今回の件に何か関係があるとは二人とも思い至らなかった。

異形に映る子たちは、腕を振り回すと見えない力で物が吹き飛ぶ等、超人的能力を見せ始める。実体はエイリアンではと、AとBは警察に相談するが相手にされない。事態解明のため、二人は独自で新データの収集に努める。屋外のドローン撮影で、子らが隕石の落ちた湖で遊ぶ映像を捉えた。カナダの秋は寒いはずなのに、楽しげに笑う姿に不信感を覚える二人。顔認証用カメラが彼らの姿を映すと、湖で水に触れるうちに、異形の度合いが増していく。そんな子らの中にはAの幼い娘の姿もあった。

B曰く、「隕石の成分摂取による遺伝子の突然変異では?」抽出した過去データと子らとの共通事項の一つに、過去に隕石が落ちた地と異形に映った人物の撮影場所が近いという事実も発覚。湖を独自に調査した結果、隕石の欠片を発見。製薬企業勤務のAの妻が、隕石を分析すれば元に戻せる薬を開発できるのではと提案する。

AとAの妻、Bの3人で製薬企業の重役(自分の子の異変に気づいた)に掛け合い、新薬を急ピッチで開発。娘に投与すると、カメラでの姿も能力も元に戻る。しかし、正常なマウスの臨床試験では副作用が強く出て無差別には使えず、子らはバレないよう悪戯するので親の協力も仰げない。企業は隕石の毒性を指摘し、湖は封鎖される。また、新薬とすると国の審査で年月を要するため、健康補助のサプリとして合法的な策をとる。

Aの妻が、ガンの病変を顔認証技術で見分ける内視鏡検査の話をする。「ガンにも顔つきがあり、ガン化する前のポリープを高精度のアルゴリズムで解析できる」その技術を活用すれば、異変の進行度に関係なく遺伝子変異の有無が判別可能とBが思いつく。Aが奔走して築いたデータベースに、さらなる最新技術※も搭載されて「エイリアン」認証率99.9%のバイオメトリックス・カメラが完成する。

ハロウィン当日、子ども達は顔の一部が隠れた仮装で来場するが、新カメラで遺伝子変異の有無が瞬時に正確に判別され、異形の姿で映った子らには新薬成分入りの飴が配られる。食べて元の姿に戻ったと園内の特殊モニターで確認し、安堵するA達。だが、一人だけ耐性の強くなった子がおり、映像に異形の姿を残して逃走する。A達が追いかけた先には件の湖が広がっており、隕石が落ちたときと同様の光がうっすらと水面に瞬いた。
気落ちするBに対し、Aは科学専門外の自分も最新技術の向上に貢献できたと実感。「救われなかった子をいつか救うためにも、協力し続けたい」AはBにそう言って研究意欲をかき立てる。

文字数:1733

課題提出者一覧