手渡される手紙

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梗 概

手渡される手紙

平日は設定どおりの時間にカーテンが開く。それと同時に今日の星座占いが始まる。玄関先には、自分の体調に合わせた温かい朝食が届いていた。朝食をたべず、パソコンを立ち上げ、またベッドに戻った。
夜は、馴染みのバーで、たわいもない話を楽しむのが日課。
寝る前に商品レコメンドが届いていた。「あなたへの手紙」とだけ書かれた商品だった。商品画像はなく、「定期便のみ、あなたに直接お届けします」「あなたに起こることを少しだけ、お伝えします」の2文のみだった。いやになったらやめればいいと思い、軽い気持ちで決済をした。

金曜日の夜、バーから帰宅すると、ポストに茶色い封筒が入っていた。開封すると、
「週末、いいことがある」
占いは好きだが、ありふれた内容に少しがっかりしながら、ゴミ箱に投げ捨てた。
土曜日は昼過ぎまで寝ている。起きると、馴染みのバーをはしごする。
飲んだ後は、タクシーで家に向かっていた。足元に1000円が落ちていた。料金はちょうど1000円。まさかねと小さくつぶやいた。

朝食を取りにドアを開けると、朝食とともに、以前と同じ封筒がおいてある。
「今日、事故に注意」
事故にあうなんて絶対に嫌だが、今日は打合せで外出する予定だ。熱が出たと嘘を言おうか迷うが、予定よりも1本遅い電車に乗ることにした。ビルの前では車が大破していた。予定通りの電車に乗っていたら、自分が事故に巻き込まれていたかもしれない。

週半ば、終わらぬ仕事に嫌気がさし、パソコンの電源をいれたまま、バーへ向かった。自転車の配達員に封筒を渡された。
「今晩、美しい女性と出会う」
なんと楽しみなことだろう。バーに入ると1人で飲んでいる女性客が数名いた。最初に話した女性客と意気投合し楽しく飲んでいた。

次の日も同じバーで、2人、楽しく飲んでいた。そんな時、配達員が封筒2つを彼女と僕の間においていった。僕と彼女は眼を見開いて、見つめあった。2人とも急いで自分の封筒をあけ、
「1分後、裏口から逃げる」
「1分後、彼氏と喧嘩になる」
彼氏がいたのかと問い詰めようと思うが、1分しか時間はない。自分だけ逃げるなんて最低だと思った瞬間、バーの入り口があき、息の荒い男性が入ってきた。彼女に2人で逃げようと言い、手を取った。厨房を走り抜け、裏口から出ると、封筒を持った配達員が立っていた。

こうなると、逃げながらでも読まないわけにいかない。
「5秒後、車にひかれる」
「5秒後、浮気相手を抱きしめる」
彼女がとっさに自分を掴み、抱き寄せた。その瞬間、2人の目の前を車が通りすぎた。
2人は再び走り出した。4ブロック離れるまで、息を継ぐために立ち止まりもしなかった。

人ごみにまぎれながら路肩に座り込むと、2人は定期便を解約した。封筒を持った配達員が、別の方向に走り出すのが見えた。何が書かれていたのかと思いつつ、強く彼女の手を握り、立ち上がった。

文字数:1179

内容に関するアピール

インターネット経由の小売であるビックテックの1つが、2022年に掃除用ロボットを買収すると発表するともに、オンライン診察事業を立ち上げました。
今まで持っていた個人の購入情報に加え、住む家の間取り、体調などの情報も収集されています。(今すぐそれぞれの情報が共有されるとも思っていないが)
僕自身、ほぼECに頼り、食料品を買いに行くこともやめてしまいました。今までさんざん出てきた未来な話が具体的に目の前にあるのだなと思い、このような話を書きました。

去年、次男が生まれた時、差出人の名前がなく、ギフトカードとメッセージが届きました。そこには、おめでとう!の一言で、そんなことまでバレているのかと冗談ながらに思いました。(実際は友人からのプレゼントで、友人も無記名なことに驚いていた。)

現実からほんのちょっと未来の世界とハイスピードなタイムリミット・サスペンスのぶつかる点を目指しました。

文字数:390

課題提出者一覧