梗 概
地図のない都市
位相差ワープゲートにより人類は宇宙へ進出した。いくつもの惑星で大規模なテラフォーミングが計画され、それを進めるために世界政府を樹立した。地球上と変わらない都市が作られ、人種も民族も混ざり合いながら普通の生活が営まれていた。それは国家をなし崩し的に崩壊させ、世界政府と対抗する様々な勢力を生み出していた。
ある勢力が位相差ワープゲートに攻撃を行い、破壊した。それをきっかけに地球全土で二百年に以上に及ぶ内戦状態が続いたが、最後は世界政府の勝利で幕を閉じた。
ワープゲートを失ったことで惑星間の行き来ができなくなり、最新の地図は二百年以上前のものになってしまった。そこで脳神経冬眠技術を使って移動し、調査官のフィルが三つの惑星を回ることになった。上級調査官とアンドロイドに見送られながら、船に乗り込み、政府専用の空港から離陸した。すぐに大気圏を抜けすぐに、意識がぼんやりとしはじめ船内の寒さを感じると冬眠状態がはじまる。
鮮やかな緑色で覆われた惑星に着地するため大きな葉むらを通過し、幹の下に町が広がっていた。広場に着地すると操縦席にOKの青いランプが点灯し、扉が開いた。地面は緑の光に照らされ、青い香りがする。
まっすぐ伸びた幹は集光装置にツタが巻き付いたものだった。集光装置は雲の上で光を集める集光板と地表で光を拡散させる柱で構成され、集光板は葉で覆われていた。
船から車を出し、調査箇所に向かって走り出した。土のサンプル採取や惑星全体の3Dスキャンなどを一通り終えると別の惑星へ出発する。
別の小さな惑星はグレー一色だった。すべての建物は、窓がなくなり、内外ともにコンクリートがむき出しになった構造体だけの姿になっていた。街を探しながら船で飛行していると、どこまでも同じ風景が続いている。
長く続いた内戦の最後に、星じゅうに点在するエネルギー施設に攻撃を行い、その爆風が重なって窓や仕上材が吹き飛んでしまった。
微かに人の気配を感じる場所があらわれた。寂れた物販店や喫茶店などが一階にあり、上を見上げると建物の中にバラックをつくり生活しているようだ。
最後の星はターコイズグリーンの海面で覆われた惑星だった。海面から出ているビルの隙間に着陸した。船から下をのぞき込むと三階分くらいの街が海中にひろがっていた。建物、道路、植栽、車などあらゆるものに泥や砂が堆積し、輪郭がぼやけながら存在している。
海岸線に近づくと住宅よりも少し大きな建物があり、山の斜面に張り付くように小さな住居が点在している。
三つの惑星のマッピングを終え、地球に戻る。
専用の空港に着陸すると、自動運転に切り替わりマップデータが転送されている。長期にわたった仕事も完了し、自宅に帰る前に食事をしようと都市に出かけた。スーパーマーケットや飲食店はもう無く、エネルギーステーションやリペアショップなどの看板だけが光り輝いていた。
文字数:1199
内容に関するアピール
都市のいろいろな未来を見てみたいと思った。僕らの生きている目の前の風景がどう変わるか考えてみたいと思った。
その風景に合わせて、産業、食事、建築などの可能性を探ってみたい。
その舞台には遠い宇宙の別の星、コールドスリープした遠い未来として、設定した。
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