梗 概
要石
ゲームプレイヤーであるビーバーはプレイしていたゲームをきっかけに、生成AIがコントロールしているすべてのゲームのある共通点に気づく。それらのゲームでは死亡するとゲーム内世界が崩壊するNPC「ウーフニック」が必ず生成されていたのだ。それをフォーラムで話そうとした時点で、謎の機関につかまり、「ウーフニック」の話題に触れないようにと釘をさされ、解放される。その後、地下鉄のホームで「ウーフニック」に似た人物を見かけ、追いかけようとしたが見失ってしまう。生成AIが現実の学習データをもとにモデルが作製されていることから、現実に「ウーフニック」がいる可能性に考えつつもビーバーは自分の日常に戻っていく。
ビーバーは「The Fall of Arc」と呼ばれるゲームのアーリーアクセス版をプレイする。これはアークという街が崩壊した状況から推理していき、少しずつ時間を巻き戻し、アークがなぜ崩壊したのかを解き明かすゲームで、生成AIが組み込まれたゲームシステム側が同じ街、同じNPCに対して毎回多種多様な崩壊の要因と過程を作り上げるようになっている。ビーバーは何度かゲームをプレイしたのち、毎回必ず最初に「ウーフニック」と呼ばれるキャラクターが死亡した瞬間からアークが崩壊することに気づく。これが仕様なのかバグなのかを問い合わせたところ、仕様ではなく、生成AI側のバグだという返事が返ってきた。
その話をビーバーは別のゲーム仲間に話す。すると、そのゲーム仲間は、同様にAIが生成するキャラクターが登場する別のオープンワールドゲームで、ある特定NPCが死んでしまうと、ゲーム内モンスターがあらゆるNPCを殺してしまい、ゲームが進行不可能になるという話をする。ビーバーがその特定のNPCのグラフィックを見せてもらうと「ウーフニック」にどことなく似ていた。SNSを検索したところ、似たような現象は生成AIが組み込まれたいくつかのゲームで起こっており、それらは必ずある特定のNPCのゲーム内での死亡によって起こっていて、そのNPCのグラフィックにはどことなく共通性があった。
似た事例の情報をより広く集めるためにフォーラムでスレッドを立ててすぐにビーバーは詐欺容疑で逮捕される。ビーバーを連行したのは公的機関の職員だと名乗る二人組だった。ビーバーは警察署とも思えないような場所で二度と「ウーフニック」の話題に触れないように念を押され、何日間かの取り調べの後で解放される。出所後、職場復帰したビーバーは地下鉄のホームで「ウーフニック」に似た女性を見かけ、追いかけようとしたが、見失ってしまう。ビーバーは生成AIが現実の学習データをもとにモデルが作製されていることから、現実に「ウーフニック」と同じ存在がいることに思い当たるが、ビーバー自身にはもう確かめようがない。なので、ビーバーは仕方なく、普段の日常に帰っていく。この世界が終わらないことを信じながら。
文字数:1214
内容に関するアピール
ボルヘスの『幻獣辞典』に「足萎えのウーフニック」という「神の前にこの世を正当化する使命を帯びた正しき人間」に関する項目があります。それが実際にこの世界にあり、学習モデルが彼らも含めて学習し、最終的な出力結果としてのゲーム世界で彼らが実際にその世界を成り立たせる柱になっていたら面白いのではないか、と思いこの梗概を作成しました。
宇宙または時間を扱うSFかというと少し疑問点は残りますが、この宇宙や世界を成り立たせている何かというのを中心に据えているので、宇宙SFという扱いでお願いします。
文字数:243