梗 概
SUGOROKU
西暦21××年、人類は時間を自由に操ることに成功した。そして、その技術を利用してゲームを考案して実行した。被害を被ったのは21世紀の人間だった。
21世紀に生きる間垣純平は三十五歳の平凡なサラリーマン。出勤前のある朝、純平はテレビのニュースを見ているとき奇妙な違和感に襲われる。「これ、昨日と同じニュースだ」
その日から純平を取り巻く時間が狂い始める。まだ午前中だと思っていたら午後だったり。夕方になり今日も定時で帰るぞ、と思っていたらまだ午前中だったり。朝起きて今週もやっと金曜日までこぎつけたと思って職場に行くと、その週の始まりの月曜日だったりする。友人に話しても誰も信じてくれない。誰もが「おまえは働きすぎだ。疲れて時間感覚がおかしくなっているんだよ」と言う。どうやらこの現象は自分だけらしい、と純平は確信する。でもどうして?みんなが言うように疲れているのか? いや、それなないだろう。毎日ほぼ定時で帰っているし休みの日はほぼ家てゲームをしている。俺は全然疲れていない。その日二度目の帰り道(一度帰宅したけれど、家の玄関を開けた瞬間朝の時間に戻っていて純平は今日という日を二回繰り返していた)を歩きながら純平は考えていると、突然目の前に見知らぬ男が現れ「あなた、何かを拾いませんでしたか?」と唐突に質問される。怪しい男だ、と警戒しながらも純平はここ数日間の記憶をたどる。そして、変な腕時計のような物を拾ったことを思い出す。交番に届けようと思っていたのに時間感覚のトラブルですっかり忘れていた。まだカバンの中にある。
その男は「自分は未来からきた」と言う。ふざけたことを言う奴だ、と思いながら純平は話を聞く。
その未来人が言うには、純平は未来人が遊ぶ双六のようなゲームの駒にされているらしい。未来でプレイヤーがサイコロをふると、この腕時計のようなものに連動して、サイコロの出た目だけ時間が進んだり戻ったりするらしい。朝起きるまで昨日から何日進んでいるのか、あるいは戻っているのか分からない。純平は双六シートを渡される。それには三十日分のマス目がカレンダーのように記されている。その中には『交通事故で死亡する』という日がある。交通事故よりも怖いマス目がある。ゴール前日には『殺人鬼に襲われて殺される!』と書いてある。「この双六から解放されるには、交通事故を避けて殺人鬼に襲われることもなくゴールに辿り着くしかありません」と未来人は言う。駒は純平一人ではなかった。競争相手は同じ会社の社員、赤石恭子だと知らされる。この未来人はゲームの審判員らしい。
恭子が殺人鬼の日にとまる。純平もとまる。明日になってサイコロが振られるまで殺人鬼から逃げ続けることができれば二人ともゴールできる。未来人が殺人鬼に変貌して襲い掛かってくる。
二人は何とか逃げ延びて翌日になる。サイコロがふられて二人は振り出しに戻される。
文字数:1200
内容に関するアピール
勝手に自分の時間を操作される人間がどんな顛末を迎えるかを物語として描きたいと思います。始まりはバカSFのようにコミカルに、次第にサスペンス感を増して最終的には時間とはいったい何物なのかを突き詰めるまでいけたら、と思っています。1年間よろしくお願い致します。
文字数:128