青猫奇譚

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梗 概

青猫奇譚

 ある日のこと、ドラえもんが四次元ポケットの中を整理していると、自分の道具の数が2000を上回っていることに気づく。ほとんどの場合、1日にひとつしかのび太のために道具を使っていないはず。365日、毎日使っていたと計算しても5年以上、すでにのび太と暮らしていることになる。そう考えるとのび太は中学生になっていてもおかしくない。いったいこれはどういうことなのか。四次元ポケットの中の道具を使ったそれぞれの日々にタイムマシーンで戻るドラえもん。なんと、そこにはいくつもの異なる同じ日が存在していた。いくつも並行的に存在する過去。

 ドラえもんがタイムトラベルから戻ると、街には誰もいなくなっている。ただ、人の気配だけがする。なにが起きたのか訊ねたくても手がかりがない。植物を擬人化できる「植物自動化液」を持っていることに気づき、この道具を使い裏山の大木に話を聞く。

 大木が語るには、道具の数と過去の日々の日数の矛盾に気づいたのは、ドラえもんが機能停止するときが迫っているからだという。

 大木が語り始めたこと。それは、すでに人類は滅びていて、いま、ドラえもんがいる世界は、「新しい人類」が過去の人類の世界をシミュレーションした再現世界であるという。そして、人間の性質を把握するために、意図的な「特異点」としてドラえもんを再現世界に送り込み、人間が未知の力に対してどのような反応を示し、どのような対応をするのかを実験してきたという。

 そして、さらに大木が語るには「空間を移動できるが、過去、今、未来という概念に拘束されている人間」と「空間を移動できないが、過去、今、未来という概念に拘束されない樹木の世界」でかつての人類の世界は構成されていたということを知る。

 大木がいうには「過去とは記憶であり、今は存在せず、未来は予想にすぎない」と言う。のび太もジャイアンもスネ夫もしずかちゃんも、再現世界が生み出した仮想人間であり、過去の人類の歴史上にも実際には存在していなかったという。「生殖機能」を持つ前の子どもたちと「特異点」を接触させる実験がドラえもんだった。他のシミュレーションで「生殖機能」を持った後の大人とドラえもんを接触させたが散々な結果になった。

 のび太たちに対するドラえもんが持った感情、ある種の「情」「懐かしさ」という「粒子の揺れ」こそが人類そのものであると大木は語り、ドラえもんはそれを聞いた直後に機能停止し、再現世界も同時に停止する。

文字数:1019

内容に関するアピール

「ドラえもん」という日本の誰もが知るSF漫画の構造を使い、

カルロ・ロヴェッリ著「時間は存在しない」「すごい物理学講義」、

岡潔著「数学する人生」をやろうと思います。

うまくいくかは甚だ疑問ですが。

文字数:96

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