JKと点P

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梗 概

JKと点P

 高槻雛乃たかつきひなのは名沢市立技中わざなか高校に通う2年生。学年の王子様、早乙女君に恋をする、純情アオハルまっしぐらな一般的JKである。そんな彼女の際立った特徴を挙げるとすれば、天才変人JK発明家、五六七五三田柚爾ふのぼりしめたゆにと、 JK擬態宇宙人、ホーガン・イーガン・レム(偽名)という二人のクラスメイトの唯一の親友である、ということだろう。

 ある日、ユニが2-A教室で点Pを飼い始めた。ベクトル場を使ってケースの中に閉じ込めているとのことだったが、0次元である点はもちろん雛乃には見ることができない。レムはどこにいるか解っているらしいので、まあそういうものなんだろう、と雛乃は納得した。

 しかし数ヶ月後、事件は起こる。点Pが逃げ出したというのだ。正直そんなことよりも、早乙女君の隠し撮り写真がたっぷり入ったスマホデータがなぜか全て破損してしまったことの方が100億倍ショックな雛乃だが、レムに振り回されるように点P探しに付き合うことに。
 レムはユニの指示の下、学校中の生徒を暗示にかけて、授業中の秘密の手紙のやりとりをネットワークとした高度な計算システムを作ったり、量子化したクラスメイトたちで量子コンピュータを作ったりして点Pの行方を計算しようとしたが、そう簡単には見つからなかった。

 そんな中、雛乃は次第に世界から生彩がなくなっていくのを感じていた。世界から戦争や殺人がなくなるのはいいものの、好きだったバラエティ番組もなくなるのはちょっと悲しい。最終的には、感情が、ありとあらゆるものがなくなった。

 世界から具象がなくなって、およそ概念に包まれた頃、雛乃ははっと目を覚ます。目の前にはユニとレム。2人は点Pがどうなったのか、やっと理解できたという。ユニは、点Pを育てるためのエネルギーを、パケット化した情報の形で与えていたらしい。結果、情報が無限小の一点に圧縮され、情報ブラックホールが誕生してしまった。情報ブラックホールとなった点Pは、ケースの近くで情報密度の高い場所=雛乃のスマホに移動し、中身を食い荒らして成長したのちに、さらに情報密度の高い世界へと逃げ出したらしい。いまのこの現状は、情報ブラックホールが地球中の情報を吸い込んでしまったせいなのだ、と。

 雛乃にはさっぱり意味が解らないが、もう一度早乙女君に会いたい、という理由で雛乃は二人と一緒に世界を元に戻すことに。自分たちが失敗したらもう後がないから、とユニとレムに危険な役割を押しつけられた雛乃だが、なんとか情報ブラックホールを剥がして、無事に世界を元に戻すことに成功した!

 技中高校2-A教室ではユニとレムが、今度は情報ブラックホールにならないよう気をつけながら、点Qを飼い始めた。情報ブラックホールの蒸発のせいで早乙女君の顔は一部Nullになってしまったけれど、今日も雛乃は早乙女君に夢中である。

文字数:1199

内容に関するアピール

目指したのは、キュートでポップなマジックリアリズムワイドスクリーンバロック日常モノです。

ペットを「知的生命体が愛玩し、かつ、その知的生命体が推測できない行動をしうるもの」と定義し、その上で概念をペットにしたい、と思い点Pをペットとしました。中学、高校の頃の数学の課題で、座標平面上の図形上を憎たらしく動いていたことが印象に残っていたので……。

実作では、テンションの高い雛乃の一人称視点で物語を進めていくことを考えています。

文字数:211

課題提出者一覧