梗 概
ゲームの結末
少子化の対策として、官庁による結婚相手の選別とそれを当然と教え込む男女別教育が普及した社会。
男子の教育は成績順にクラスが分けられていた。最上級と下級とはあまり交流がなかったが、時折趣味を通じて親しくなることがあった。好雄はトップクラス、幸一は下級だったが、放課後によくアンプラグドゲームで盛り上がっていた。インターネットは厳しい監視下に置かれ、普通の少年が気軽に手を出せるものではなかった。下校時刻になっても署部が付かず、教師に、とくに好雄がたしなめられることが多かった。
ある日の休み時間、好雄は幸一に教室の入口に呼び出された。借りていたボードゲームを返しに来たという。ならば入ってくればいいのにと言うと、雰囲気がピリピリしていて嫌だと返ってきた。そんなものかと思いつつ、その場は別れた。
学年が進むにつれて会う時間は減り、高等学校を終えると、好雄は大学に、幸一は職業訓練校に進んだ。更に会う時間と機会は減った。
好雄が大学を卒業して官庁に入り多忙な日々を過ごす中、久し振りに幸一から紙の手紙が届いた。向こうの現況を知らせ、こちらのそれを尋ねる儀礼的なものだった。幸一もかなり忙しいらしく、好雄のクラスで感じたピリピリした雰囲気すら懐かしい、とあった。しかし女性と二人での紙に印刷した写真も添えられており、未だ相手も割り当てられていない身としては苦笑するしかなかった。ただ、背景の建物が妙にすすけているのがチリッと心に引っかかった。
それから二、三日後、好雄は上司に呼び出され、幸一からの手紙を封筒の類いも持ってきて目の前で全て処分するようにと言われた。何故手紙のことを知っているのか、何も怪しいことはない、ただの旧友からの手紙だという抗議は一切聞き入れられなかった。不穏分子からの手紙は持っていいるだけで疑われる、検閲したところデータカードが入っており、暗号らしく現在解読中だと言われた。
好雄はその場でくずおれたが、何に対して絶望したのか、自分でも分からなかった。
結局手紙は上司の前で処分した。
暫くして、女性の履歴書を手渡された。
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