産毛を掻く

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梗 概

産毛を掻く

資源採掘用惑星「ユー」の有害な大気から身を守るため、在住者たちは月に一度「調整休み」を取り「補体クリーム」を全身に塗り、なじませていた。
そんな中、ハルカの通う学校では俄かに「クリーム抜き」が流行りだしていた。
補体クリームを塗る際に、型紙を当てて故意に塗らない箇所を作る。
クリームがない状態で一日も過ごせばその部分は赤く腫れあがりボロボロと崩れていくが、そこにうまい事クリームを塗りこめばクリームによって体が補体される様子が見られるようになる。

ハルカのクラスで最初にクリーム抜きをしたのはカズミだった。
このクラスでは何でも最初はカズミと決まっている。そこから徐々に流行の波が広がっていく。タイミングを読み間違えればそれは「ダサいやつ」でしかなかった。
ハルカはカズミの幼馴染だったが中等部にあがったころから徐々に距離ができ、最近ではほとんど会話することもなかった。クリーム抜きをする順番はおそらく下から数えたほうが早いだろう。

カズミがクリーム抜きをしてからしばらくたったある日、カズミの父親が家族を引き連れてハルカの家に遊びに来た。
二人の父親は、同じ資源採掘公社で働く同僚で幼いころは家族ぐるみの付き合いだったが最近は疎遠になっていた。
どうも仕事の関係でまたつるむ機会が増え何かの折にご飯でも、となったようだった。

食後、父親に促されてカズミを部屋にあげるハルカだったが、久々の会話になんとなく気まずさを感じつつ、しかしそれでも徐々に昔の距離感を取り戻していっていた。
話も一段落したころ、カズミからクリーム抜きをしないのかと問われたハルカがあまり気乗りしないと誤魔化した答えを返すと、ビビりと思ったカズミはクリーム抜きをした自分のわき腹をハルカに見せてこんなの大したことないと嘯いてみせた。

カズミのわき腹は丸い桃の意匠になってくっきり肌がえぐれており、そこを補うようにたまった半透明のクリームと赤みを帯びた肉の色が重なってピンクのゼリーのようになっていた。
触ってみろよというカズミに合わせて恐る恐るハルカが触れると、瑞々しい見た目に反してざらついた乾燥した肌のような触感だった。
と、その時ハルカの伸びた爪がひっかかりカズミの補体クリームの表面を傷つけてしまった。
ドロッとあふれだす液体に慌てたハルカはとっさに近くにあった自身の補体クリームを使って穴をふさぐ。
きれいなピンク色だった桃は若干色味の異なるハルカのクリームが混ざったことで腐りかけのような色合いになってしまった。
カズミは露骨に機嫌を損ねたようで、ちょうど父親たちから声をかけられたのもあり、そのままハルカと特に会話を交わすこともなく解散の運びとなった。

その夜ハルカがベッドに横になるとちょうど枕元の部分にカズミの液体がシミになってこびりついていた。
薄いピンク色のシミを見ていると、なぜか満足感が心の中に生まれていた。

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内容に関するアピール

補体クリームは有害な大気から体を守ってくれつつ、損傷した部位を増殖して液体で埋めてくれるなんか便利なやつです。
もし、カズミが補体クリームを塗らなかった場合、多めに液体が漏れてちょっと皺皺の桃になってました。
一応、両人とも男性を想定しています。

文字数:121

課題提出者一覧