2020年ほど日々、数字の増減に一喜一憂し、「指数関数的増加」という言葉を生々しく受け止めた年はないでしょう。パンデミックに限らず、「右肩上がり」とか「ピークアウト」といった表現は、具体的なストーリー感を伴って私たちの思考や印象を左右します。統計的な数値や量的な増減のイメージが物語にフィードバックするのは、SFの醍醐味ではないでしょうか?
主語である「何か」は、実在・非実在を問わず、具体物でも抽象物でもかまいません。知能指数や人格、牡蠣やお祖母さん、文字や宇宙の階層、小説の視点そのもの、数値化できないウンタラカンタラ……何でもござれです。実作は短篇の分量ですから、物語の主筋は増えるか減るかの一方向に絞ってください。ただし、増加(減少)率が上下するのはかまいません。淡々と一定のペースを保つ作品、逆に「オーバーシュート」や「底打ち」等を導入してストーリーに緩急をつける作品、いずれも歓迎します。
(法月綸太郎)