穢土ワット・魂の座

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梗 概

穢土ワット・魂の座

その戦いで、各景の仏性率は三十二穣に達し、菩薩五十二段階の第四十六位、不退心に到達した。

僧兵として生を受けた各景は、仏敵を滅することで仏性率を高め、悟りを開き仏となるべく戦う。幼馴染の戦友には、仏性率が百劫に達する生真面目な道順、たった三十二億しかない怠け者の連来がいる。彼らは、都合一千万に達する戦死と輪廻を繰り返し、僧兵としていつ果てるとも知れない戦いを続けている。

開祖・星慶上人の発願以来、鎮護宇宙の中心たる穢土ワットは、星々を仏国土とみなし仏の教えを広めるべく活動を続けてきた。周囲に資源ある限り恒河沙に達する僧兵を生産し続け、いまはとある星の衛星軌道に位置し、周囲の小惑星帯を取り込みながら惑星上の仏敵を滅ぼさんとしていた。
菩薩五十二段回の最高位、すなわち仏になると、僧兵は二つの選択肢を与えられる。一つは、菩薩となり衆生を救うこと。もう一つは、輪廻から離れ真なる死=涅槃を得ることである。友人の道順は、久方ぶりの仏候補者として穢土ワット中の期待を一身に集めている。

三人は、不退心の祝いも兼ねて久しぶりに食事する。祝いの席で、彼らは穢土ワットについて話をする。永劫ともいえる月日、穢土ワットは常に戦い続けてきた。彼らは穢土ワットがなぜ戦うのかを知らない。生真面目な道順は、それが降魔をなし成道に至る修行であると言う。一方で怠け者の連来は、戦いとは逃れられない業であり、浄土は現世に求めるべきではないと言う。品質の悪い般若湯にひどく悪酔いした連来は、次第に輪廻を拒否する過激な主張をするようになり、やがて大喧嘩をして別れてしまう。

明くる日の戦闘。惑星に降下した僧兵たちは原生生物との戦闘を行う。各景らは金剛杵烈斬や梵鐘爆撃、説破慈光砲といった武装を駆使して仏性率を稼いでいく。だが、今回の敵は数が多く、次第に追い詰められる。ワットから発せられる再集結指令に従おうとするが、連来だけが遅れてしまい、袈裟装甲を貫通され撃破されてしまう。むき出しになる連来のコアパーツ。コアは記憶モジュールであり、必ず回収して帰らなければならないと教え込まれているが、各景は先日の喧嘩を思い出し、悩んだ末にコアパーツを持ち帰らずに帰還する。

各景は、連来のコアパーツのことを誰にも報告しなかった。奇しくもその戦闘で道順が悟りを開き、菩薩となることを表明したため、気にする者などいなかった。

数日して、各景は再生産された連来の姿を見かける。会話のなかで連来のバックアップが口論の前日のものであることを確認し、各景は心の底から安堵した。
バックアップされなかった連来の差分は、彼の僅かな一部とはいえ、身体から離れて輪廻の業から離れることができたのではないかと考える。彼の一部は浄土へと行けたのだろうか。道順の菩薩としての門出を祝いながら、自らの仏性率を長め、いつか仏になったその日には、自分は涅槃を選ぼうと考えるのだった。

文字数:1199

内容に関するアピール

「何か」が増えていく物語の案出しのなか、私は定性的なデータを強引に定量的データに変換してしまおうという着想をしました。

素材にしたのは「悟りと修行」です。修行は定性的なデータで、第三者からは検証不可能です。それを定量データ化し増やしていったらどうなるか、という練り物が今回の梗概です。

漢字の多さや仏教思想をどの程度盛り込むか、リアリティをどのレベルに設定するかはうまく落とし所を見つけていきたいと考えています。

 

それでは、よろしくお願いいたします!

文字数:222

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