アンプラグド

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梗 概

アンプラグド

美人局でヘタを打ったアニキが殺され、その死体を始末するため特殊清掃業者(裏)がやってくる。弟分は隙を見て、アニキの「首」を盗み出す。冒頭、その首と「会話する」奇妙なシーンから。
 弟分がガキ大将だったアニキに出会ったのは小学校時代。再会したのは大学のコンパで酔いつぶれた夜、街角で吐いていたときだった。何人かの女子大生をかついで去っていく、アニキの一味。イベサーと組んで、ヤバいゴトを回していたらしい。
 腐れ縁が復活し、そのまま大学を中退してヤクザの道へ落ちる。ヤクザといっても中途半端な企業舎弟で、一種のブラック企業に近い。
 そういや昔、いっしょに墓参り行ったよな。アニキの言葉に、弟分は思い出す。墓参りというより社会科見学で、見たのはたくさんの「しゃれこうべ」が埋められていたらしい「古墳」だ。なんでそんな話を、と問い返す弟分に向けて、アニキは「死後の世界」について語りだす。
 俺は前世、こんな人間だった。飯場に送ったホームレスは貴族だったし、ソープに沈めた女は漁師だったよ。墓場でしゃれこうべを混ぜるのは合理的だ。魂はみんな、つながっているからな。記憶はあの世で、どんどん混ざっていくんだぜ。
 マジすかアニキ、霊とかなると、そんないろいろ見れるんすか、隣の女の着替えとか!
 てめえはバカか、そんなもん見ても犯るカラダがねえんだぞ。
 真夜中の雑居ビル、バカ話を交わすヤクザたち。
 弟分の視点に、アニキが重なっていく。おめえ、こんなクズ野郎だったのかよ。やめてくださいよアニキ、なに見てんスか! 霊体になると、主格が重複して共有される──要するに、「見透かされる」。
 霊体のイメージの自由さを楽しむ展開が、緊迫感を増す。件の清掃業者が、弟分の始末もつけようと戻ってくる。アニキはそれを救おうと、ネット上に残した仮想の人格を駆使して大活躍。
 ──死体の山。見下ろす視点は輻輳している。一人称、三人称、神の視点。
 もちろん「首」がしゃべるわけはない、と
 しかし、そういう「物語」はいくらでもある。19世紀なら夢オチあたりが一般的だった。20世紀になると、罪悪感にさいなまれた弟分による妄想、精神病理などで説明されるようになっていく。21世紀はネットワークの時代。脳という情報網は、世界中の拡張現実と直結し、アニキの肉体に埋め込まれていたインプラントまでがしゃべりだすのもいいだろう。さて、22世紀のエンディングが、そんな陳腐でいいと思うかね?
 生徒は「文学」という伝統芸能に向き合い、日常あまり使わない「文字列」を書き連ねている。言語に変換せず、イメージを直接伝えたほうが、いろいろと手っ取り早くなってきたのは、ここ数十年の話だ。
 次々に転がる視点が、未来を目指す。誕生、思考、破滅、また誕生。
 そう、ここ100億年やそこらは、だいたいそんな感じなのだ……。

文字数:1188

内容に関するアピール

群馬にある「簗瀬八幡平の首塚」という史跡は、昭和6年、墓参りの小学生に発見されました。6世紀ごろの円墳で、幅1m長さ2mの穴に、約150人分の頭骨が埋められていたそうです。
 調査の結果、埋められたのは室町時代、付近の合戦で死んだ者を集めたもののようですが、下顎骨さえなく頭頂骨周辺のをまとめて埋める、という発想にインスピレーションを受けました。
 人間の人間らしい部分は、たしかに「頭蓋骨に包まれた部分だけ」という考え方もできます。そのエッセンスのみを集めて築かれるハイブマインド文明があったら、と考えを進めました。

「何かが増えていく」ということで、転がる石のようにいきます。一種の群像劇です。
 最終的には、個性も自由も全体に溶け込んでいくことが、より大きな幸せにつながる可能性に帰着します。
 それ自体が、何億回目かのエンディングになります。

文字数:390

課題提出者一覧