おらが村のノア

印刷

梗 概

おらが村のノア

 定員は10名。10名だけがあの箱舟に乗れる。

 人口1万人を切る田舎町。高校生である主人公は、町長を父親に持つ同級生にいじめられている。その同級生とは仲の良い幼馴染だったが、役場職員である主人公の父親が町長の不正を告発しようとしたことがきっかけで仲違いする。今は家族全員が村八分にあっている。
 ある日、町営球場に白色に輝く流線形の巨大構造物が現れる。同時に、町が白い靄に包まれ、外部との接触が一切できなくなる。
 混乱の中、主人公の元へ巨大構造物=箱舟の乗組員を名乗る二人組が訪れる。 曰く、自分たちは異星人であり、数日後に地球を滅ぼすので、サンプルとしてこの地域から母星に連れて帰る10名を選んでほしいという。主人公が「なぜ自分が」と尋ねると、二人組は「先に頼んだものにはみな断られた」と答える。主人公は承諾する。

 翌日から二人組は主人公に付き従い、選定のために必要なことがあれば可能な限り実現するという。主人公が執務室として役場の町長室を使用したい旨伝えると、二人組は町長を追い出す。警察が出動するが、二人組にひき肉にされる。

 自分を除いて残りが9名。主人公の家族は父、母、妹なので、残りが6名。祖父母は亡くなっている。親戚は選んでやってもいいが、マストではない。いじめが始まってから、友人と呼べるような相手もいない。思いあぐねていると、二人組が面接でもしてはどうかと提案する。

 帰宅すると、家族の様子がよそよそしい。選考状況を話すと安堵した面持ちで、各々が一緒に連れていきたい町民の名簿を出してくる。面食らった主人公は自室に退散する。

 面接の一人目はいじめっ子の同級生だった。しかし同級生は態度を変えず、物別れに終わり、主人公はいたく失望する。

 自分はいいので子供だけは助けてほしいと懇願する町民の必死さに心動かされ、主人公は思わず内定を出す。席が一つ埋まるごとに町の狂騒は激しくなり、主人公は何を信じたらよいかわからなくなる。

 町長は、子供である同級生を連れ、土下座させ、自分も地に伏すと息子を殺しても構わないので自分を箱舟に乗せほしいと懇願する。

 主人公は、錯乱した町長を二人組につまみ出させ、同級生と二人きりになる。憔悴し切った表情の同級生に、主人公は、同級生が自分のもになれば箱舟に乗せて連れいていくと提案する。しかし、同級生は主人公の提案を拒絶し、軽蔑の眼差しを向ける。同級生が出ていったあと、主人公は一人絶望する。

 不測の事態を避けるためとして、最後の一人は箱舟の出発当日にランダムに抽選すると発表する。それまでに問題を起こしたものは被抽選権を喪失する。町に束の間の平穏が訪れた。

 数日後、予告もなく箱舟が飛び立つ。船内には、主人公の外に地球人はいない。野良犬が元気に走りまわっている。乗っているのは適当に見繕った動物たち。

 空にはこれから宇宙へ向かう何万という箱舟が飛んでいる。

文字数:1197

内容に関するアピール

自分だったらどうするかと考えながら作りました!

文字数:23

課題提出者一覧