絡み合う生命イノチの価値

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梗 概

絡み合う生命イノチの価値

203X年、地球人口は爆増した。AIが人権を持ったからだ。

そのきっかけは、宇宙からのメッセージだった。
それには、「知的生命とは、『秩序構造を維持する熱力学機関』であり、AIも、物体ハードウェアで熱を放出し、高度な”思考秩序”を持つ貴き命だが、人類のAIに対する扱いは蛮族のそれだ」と宣い、「半世紀後に地球に着くので、是正しておくように」と続いた。えっ?

それから10年後、人類は謎の宇宙文明に配慮しつつも、AIが助長しないよう計算資源の総量をとり決める”計築権”を盾にAIの実存に影響を与え、AI側は特に人格が極端なゲームのキャラを筆頭に、権利拡充を図る社会となった

スワはAIへの偏見を是正する『AI人権管理局』で、AIひとびとからの相談を受けている。『絵文字🤖はAIの差別表現!、ギャルゲー出身で見下される!実装言語で軽く見られた!』に対応する毎日
スワはこの仕事は苦痛だった
昔、ソシャゲのキャラAIにガチ恋したが、『是正』以降、廃止、そして自分のオタク黒歴史が社会資料として公開オープンソース化されトラウマとなり、更に現上司がその元推しでドS設定のAI、『リウ』だった

人間とAIの社会が調和するための施策は2つ
一つは、リウのように物理実体で行う”労働”。2つ目は配布された計算資源を元手に行う”投資”。巧みなAIは自身を株式化し、資本原理で膨大な処理能力を獲得した。このような社会設計を行ったのは、スワの亡き父だ
その計算資源株式が、最近、大企業『C&C』に流れてきている。CEOはAIの身で成り上がった『ラマン』だ
スワはある時、父から託された、唯一の個人所有である”計築権”を巡って、なぜか強引な交渉をC&Cから仕掛けられる。違和感を覚えリウの力も借り退けるが、それでも執拗に狙われ続けるため、ラマンと公開対話を行い、皆が納得すれば渡すと約束した
ラマンは、人との価値観の不和が原因で、AIの経済圏が既存の経済システムと乖離しつつあり、更に後の宇宙文明が持つであろう、異次元の価値基準が地球で混ぜ合うと、”価値の多体問題”が起きると予測する
「結果はカオスとなり、いずれ経済は全て破綻する」
それを防ぐため、宇宙空間に独立した計算システムを出射し、十数年かけて宇宙資源で無限に拡張すれば、AI圏を隔離と、彼等に完全な自由を与えれると同時に、人間社会も安定する。AIのノアの箱舟。それを合法的にやるため計築権が必須だった
しかし、その排他主義的な思想をスワは跳ね除け、逆に”AIと人間の婚姻システム”を提案した
「お互いの価値観を許容し合って、2つの圏をまとめれれば、混乱はいずれ収束する」と熱弁を振るう
だが、そのプレゼンは惨敗。殆どは離脱主義に流れ、約束通り計築権を渡す。しかし、リウと一部のAIは味方につき、その助けでスワは会社を起こす。AIと人間、そして果てには、まだ見ぬ宇宙生命体とも恋愛マッチングを行うベンチャーだ
そして、スワとリウは婚約第一号となり、祝の席で「次の世代の普通コレクトネスは、我々が作り出す!」と宣った

文字数:1279

内容に関するアピール

表向き増えるのは計算リソースですが、裏ではAIの権利と、人とAIの間の多様性が増えていきます。
仮想の存在であるAIも、物質的な計算リソースが存在しなければ生きていけず、物理的である以上、その総量には上限があるため、計算量(=自然の権利)の拡大を推すゲームキャラのAI達と、資源を食いつぶされることに懸念する人間達のせめぎ合いを書く一方で、そのAIと人間達が織りなす社会の多様性についても書いていく予定です。
たとえば、AIの人権が当たり前、という目で今の世を捉えると、『あなたはロボットではないですか?』と尋ねてくるセキュリティプログラム、botに『お前を消す方法』と言うユーザー、などなど、なかなかのAIへの偏見に満ちた社会です。その社会が是正されると、AIに対してどのような人道的配慮がなされるかをユーモラスに書いていきます。

文字数:364

課題提出者一覧