梗 概
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2021年夏の東京オリンピックは中止になり、2032年に行うことになった。
2032年春
男子水泳自由形日本代表の大橋薫は自分のタイムが最近、落ちていることに悩んでいた。
同期でライバルの出口亮は好記録を出していた。
以前の薫だったら、悔しい気持ちになっていたが、今はそんな男らしい亮の姿にときめいていた。
薫はまさかと思い、精神科医に相談すると
「性別変異ウイルスですね。」
最近、流行している性別が異性に変わるウイルスだ。
精神科医の話によると、選択肢は2つあり
1.タイムは今までと変わらず、女性に変化するのを止める薬を飲みながら男子選手として出場する
2.タイムは落ちるが、完全な女性選手として出場する
その上で心と体の問題も詳しく説明されたが、大橋の頭の中は2つの選択肢で頭の中が一杯だった。
大橋がアスリートで日本代表であることから、コーチや協会の人間と相談して決めた方がいいと先生に説明され、親しいコーチに話をするとすぐにJOCで大橋も含め会議がなされた。
コーチ、精神科医、社会学者、スポーツ学者、色々な面々が議論するも結論は大橋に委ねることに
そんな中、誰がマスコミにリークしたのかわからないが、アスリートの中に性別変異ウイルスにかかった人間がいるという報道が流れる。
JOCの会長がマスコミに尋ねられた。知らないとずっと答えていた会長だったが、マスコミしつこく聞かれて
「最近、女か男だか良くわからない人間が多くて扱いに困るのよ!」
マスコミはその話題をずっと取り上げ、終に会長は辞任することになる。
辞任すると次の会長はだれだと話になり、色々な人間が取り沙汰され
結果、女装家であり、フェンシングで金メダルをとったこともある徳永スーが会長職につく
スーが会長職に付くと、スーの意見に反対する委員のほとんどが解任された
その解任劇をマスコミは「スー劇場」と言った。
スーはまだ完成形とは言えないがという前置きし、女性でもない。男性でもない。中間性の枠を作った
2032年夏
薫はオリンピックに出場することが決まった。
薫はマスコミのターゲットとなった時点で自分がウイルスにかかっていることをカミングアウトするしかなかった。
しかし、完全な女性になるほど亮のことを愛してはいなかったし、男でもいたかった。
スーから中間性の話が出てきた時は複雑な気持ちだった
ただ今は、この会場のスタート台に立てることに嬉しさを感じていた。
亮が観客席で手を振っていた。自分も手を振ると、スタート台に立ち、スタート音と共に水の中に飛び込んだ。
文字数:1042
内容に関するアピール
今、話題になっている女性蔑視発言は「男性中心の組織」が抱えている問題だと言われています。しかし、これはただ単に「男性中心の組織」だから問題なんでしょうか?「異質な人間を排除する」という形でしか話を進めることができない人間の問題だとも言えます。その場合、次に問題になってくるのはLGBTQの問題だと私は考えています。なぜなら現在、男性・女性という枠組みでしか競技が分かれていないオリンピックはまさに「異質な人間を排除している」大会だからです。人間はかつて行き来することが難しかった性を簡単ではありませんが行き来できるようになっています。2032年の世界で異性に変化するウイルスが蔓延した場合、辞職するだけでは終わりません。オリンピックを中止にするのか、別枠を設けるのか、今まで通り大会を行うのか、いずれにしろコロナ以上に人間の有り様が問われるテーマだと感じ梗概を作りました。
文字数:386