梗 概
鉄闘士
ネットの発達・普及により、多くの興行が主戦場を現実からネットに移した。
変化に遅れた格闘技業界は、衰退していた。
そこで新たに採用されたのが、人以上のパワーを持ち壊れても良いロボットを戦わせるものだった。
しかし、機械が格闘家みたく動けるのか?
ソフトウェアは問題無い。格闘家が遠隔で操作すれば良い。
問題はハードウェアだ。機械は硬いが故に脆く遅い。従来型では格闘家の動きについていけない。
それを解決したのが、流体義肢だ。
それは関節の伝達にMR流体─磁力を掛けると硬化する液体─を用いた次世代型義肢で、強度と動作性に優れる。
これを流用したロボットは、格闘家のパフォーマンスを十全に受け止められた。
更に派手さの為に、ロボットは意図的に脆くされた。
関節は躊躇なくへし折られ、引き千切られる。部品は弾け飛び、這いずる敗者は粉々に処刑される。
人型が壊れる興行は人気だ。歴史が証明している。ロボット格闘技は瞬く間に一世を風靡した。
主人公は元格闘家のギブソン。別名、不死身のギブソン。
実力も人気もあったが、交通事故により引退。今は痩せ衰え、無気力な日々を送っている。
ある日、ギブソンの元に一人のプロモーターがやってくる。
ナッシュと名乗ったその男は、ギブソンをロボット格闘技の操縦者として雇いに来たのだ。ギブソンが怪我で動けないのは承知済みで、ルール改定により許可された筋電義手の仕組みを用いれば問題ないと言う。
初めは乗り気でなかったギブソンも、ナッシュに見せられたロボット格闘技の映像に見入ってしまう。ギブソンは戦いの興奮を思い出し、ナッシュの誘いに乗った。
慣れない操縦に苦戦するも、訓練し勝利を重ねるギブソン。
だが、それを快く思わない者がいた。ギブソンのかつてのライバル。現ロボット格闘技の覇者、フェンダー。
ギブソン引退の原因となった事故は、嫉妬したフェンダーの仕業だった。
タレコミによってそれを知ったギブソンは打倒フェンダーを求める。だがフェンダーは有名過ぎて、ロボット格闘技ルーキーのギブソンではマッチングが難しい。
そこでナッシュがある提案をする。フェンダーの試合に乱入するのだ。
やたら手際よく乱入の手筈を整えるナッシュ。
実はナッシュの目的は、憧れのヒーロー不死身のギブソンの復活であった。
フェンダーとの対決は、最後の儀式としてナッシュが予定したもの。ルール改定とタレコミもナッシュの仕業だった。
対決はギブソンの劣勢だ。
両腕は千切れ、片脚も膝から先は無い。もう倒れることしかできない。ギブソンは起死回生の一手に賭ける。
後ろに倒れロープの反動を使い、体当たりを食らわせる。更に足を絡めフェンダーと共に倒れた。両者が地面に落ちるる瞬間、ギブソンは破損で尖ったフレームをフェンダーにめり込ませる。それによりフェンダーは背部バッテリーを貫かれ停止。ギブソンが勝利した。
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内容に関するアピール
派手に物がぶっ壊れると気分が良い。
次世代型破壊スポーツ、ロボット格闘技。浅草にある、物を壊せる店で遊んでいる最中に思いつきました。
今年、完全自立型二足ロボットの格闘大会「ROBO-ONE」がリモート開催されます。それを見て考えました。
「格闘家が動かすイカサマをしたら最強ではないか」
先日発表された、流体を使った義手関節が実用化されれば可能でしょう。
それだけでは地味なので、もう一つ要素を入れました。
それが「派手に物がぶっ壊れると気分が良い!!!」です。
昨今、イベント在り方がリアルからインターネット越しのオンラインイベントに変化しつつあります。場の盛り上げに欠けますが、良い点もあります。それは観客への危険性がないこと。
引き千切れる手足。弾け飛ぶ頭。人体を超えた破壊の緊張感とカタルシス。
これが次世代のエンターテイメントです。見てみたくないですか。
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