梗 概
予知されぬ殺人
梗概
未来予知ができる人類『予見者』と出来ない人類『非見者』がいる国。未来予知とは『無意識下で次に起こることを予測し映像として認知する能力』とされていた。予知は一般的に数分間で、自分自身に起きることに限定されている。予知の有無や長さは新生児の内に測られ、能力差で身分階級が形成されていた。仁藤礼は、最長記録である十分間の予知記録を保持していた。同一記録保持者は国内であと2人おり、皆エリート街道を歩む親友たちだ。礼は首相の仁藤信忠を父に持ち、首都治安維持局『無能狩り』隊の隊長である。無能狩りは非見者の犯罪を取り締まる部隊だ。
ある時、礼は謎の襲撃を受け、予知能力を失う。能力喪失はキャリアの崩壊につながるため、礼は数か月間、事実を隠し、勤務を続けていた。その頃、最長記録予見者の一人が殺され、非見者による犯行と目された。謎の襲撃と能力復活の手がかりを追うため、礼は捜査に加わることを願い出て承諾される。
礼は非見者の組織ルトガルドへの潜入を命じられた。ルトガルドは表向き非見者限定の交流コミュニティだが黒い噂が絶えず、事件の関与を疑われていた。礼はルトガルドで盲目の少女ニケと出会う。礼は非見者たちを見下し、馴れ馴れしいニケには特に苦い思いを抱く。父の信忠に能力喪失がばれて激怒される。礼は家を出て、ルトガルドのたまり場で泊まるようになる。礼は能力喪失を隠さず居られる『ルトガルド』に心地よさを感じ、組織も彼を受け入れ始める。最長記録保持者がまた一人殺される。
礼は襲撃犯がニケだという手がかりを掴む。だが、ニケを捕まえる前に、礼の正体が露見する。ニケは礼を逃がし、自身は礼を襲撃したが連続殺害事件とは無関係だと語る。礼はニケに怒り、殺人犯だと決めつけるが、ニケは殺人犯が治安維持局内部にいると指摘。協力が必要ならば、と礼に連絡先を託す。
礼は襲撃事件と殺害事件の差異を感じ、ニケの言葉を思い返し局内を洗い始める。礼が予知能力を喪失している情報が広まり、礼は捜査から外される。局内では非見者組織の掃討作戦が計画され、礼はニケに連絡する。礼は殺害事件の首謀者が父、信忠である証拠をつかむ。
礼は信忠を問い詰め、信忠は真実の隠蔽のために殺人を犯したと語る。その真実とは、生まれ持った予知能力は存在しない、というものだった。新生児時の検査で埋め込まれた機械が、周囲の状況から確からしい予測を弾き出し、脳に情報として流し込む。映像に反応する結果表れる行動は限られるため、予見者は統制され秩序が保たれやすくなる、というのだ。信忠は礼に統制の大事さを説き、礼の将来の栄光を語るが、礼はニケたちに会話の様子を横流ししていた。各地で非見者たちの暴動が起き、政府を転覆させる革命となる。
革命ののち、予見者と非見者は共に新政府を樹立する。礼は新政府参画を求められるが、自らの過去を振り返り、再び権威を持つことを嫌い辞退する。
(1195文字)
文字数:1205
内容に関するアピール
アピール文
旬の題材ということで、足立区議会議員の差別発言問題を念頭に置き、LGBTQ問題やBLM運動などにも繋がる差別についての話を書きたいと考えました。そこに、自身の未来が予言できる人達が殺されたらどうなるだろう、という発想から特殊設定ミステリ的な状況を加えた結果、予知能力の強さで身分階級が決まる社会を、主人公が打破するという話になりました。
実作では、予見者同士の対決や、非見者が予見者にどう立ち向かうか、などの能力対決的なワクワク感もちりばめつつ、特殊設定ミステリとしてどう詰めていくかをより追求したいと思っています。また梗概ではさらっと触れただけですが、視覚情報が予知のせいで現実よりも重視されがちなこの世界において、ニケは盲目という設定なので、彼女と他キャラクターの感じる世界の差異のようなものをしっかり表現していきたいです。
(375文字)
文字数:375