梗 概
コロボックル帝国、その隆盛と滅亡
私が撮影クルーと一緒に「龍の巣」と呼ばれる鍾乳洞から出た時、何人かの村人が私だけを取り囲んで跪きながら叫び出した。私は意味が分からない彼らを避けるようにして歩くと、目が痛み、目の奥では虫が飛ぶような影が見えた。医者からは飛蚊症は大した病では無いと言われる。目の奥で影が光るのが気になった。
鍾乳洞で小さなコロボックルに出会い「昔は栄えていたコロボックル帝国だが、今は滅び住む土地も無くなった」という話を聞かされる夢を見た。
撮影クルーは帰国するが、私は酷い頭痛に苦しみ、恋人と暫く留まることにした。
突然脈略も無く、昔の忘れていた記憶が蘇る。子供時代の辛いことなど完全に忘れていたことを思い出す。関連した余りにも多くの辛い記憶が蘇る。彼に私の記憶が増えていることを相談する。
子供の時、私は光る虫を食べた。そして鍾乳洞でも同じ光る虫を食べた。
世界の動物保護団体から一部の動物が軌道を大きく外れて動いているという報告がある。恋人が各データを結合してみると、それは「龍の巣」を指していた。
私は生涯の全ての出来事を日付と一緒に次から次へと思い出した。逆に何も忘れられないことで苦しむ。恋人は私が子供の頃から私の観察者だったことを思い出し彼を怪しむ。
恋人は鍾乳洞で原始微生物を含んだ光り虫を見つけた。彼らが守っている光り石を発見した。その夜、私は彼にキスをされる。彼から「君と一緒に、ぼくも始まりが見たい」と言われる。口の中に石を入れられたが、私はそのまま飲み込んだ。
コロボックルに夢で再会する。自分たちは動物の夢の中に移り住んでいると言われる。私は彼らに協力する。前世の記憶を持っている動物や人の夢の中に入り「始まりを見たければ、私のところへ来い」と囁く。
世界中から、始まりを見学したい動物と人が「龍の巣」へ集まってくる。村人から極彩色の服を着させられる。私も村人が作った服を着て、動物達に囲まれて一緒に鍾乳洞に入っていく。老婆から、私は妊娠していると教えられる。
光り石を体内に抱えた私に気づき、光り虫たちが私の体を覆う。
私は産まれる前のこと、父、祖父、祖祖父、先祖の見た風景、古代の風景を見る。私が知っている情報は目から光りとなって外へ出る。原始生物の情報を私は見る。私の目が光る。私の記憶がどんどん増えている。私は闇の中で輝く星の中にいた。光り出す私を見つめる洞窟内の生物たちも光りを放ち、鍾乳洞全体が光に覆われる。鍾乳洞の中は次第に外まで光が溢れてくる。周りにいる動物たちも鍾乳洞を抱える山の森も光りを放ち、光りの柱は天まで昇っていった。昼の天空が眩しい光りで覆われた。
棚田が広がる山奥の農家。太陽が棚田を眩しく照らした時、私の子供は光る石を口に入れて産まれた。隣で彼が子供の顔をのぞき込んでいた。
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内容に関するアピール
クロボックル、イメージ図
記憶が増えていく、忘れられないリアルな苦しみ。そのリアルな日常と地続きで、コロボックルを触媒にした夢世界から、人が産まれる以前の記憶/情報が増えていくと、全ての情報の先には全ての始まりがあるかもしれない。ただ全ての始まりとは。。。という物語です。
文字数:135